NAOYA HIDA & Co. 「Creation 2023-2024」実機レポート、Type4Aの新Dバックルを体験!

 By : CC Fan


いよいよオーダー申し込みが開始されるNH Watchの「Creation 2023-2024」
今回、展示会にて実機を拝見させていただくことが出来ましたのでレポートします。



今回の会場も、去年同様、人形町のNH Watch株式会社のオフィス。
去年は1フロアでしたが、今年は2フロアになり、倉庫と工作機械を入れた製造の一部もこのオフィスに統合されたとのこと。

今回新作である36mmのTYPE4Aと4A‐1の2つの新作と、既存作の改良版5つの新作が発表されました。



まずは既存作の改良板から。
左から、TYPE 1D、TYPE 1D-1、TYPE 2C、TYPE 2C-1 ”Lettercutter"、TYPE 3Bです。

今年の改良点として、3つのポイントが示されました。

まずは風防に施されるAR(反射防止)コートが裏面のみから両面になり、より光の反射を押さえました。
これは日常の使いやすさはもちろん、時計を写真に撮ってSNSで共有するような現代的な使い方において「綺麗に撮れる」という事を重視した飛田さんからのリクエストだそうです。
時計師の藤田さんはコーティング面に傷がつき剥がれる、修理の時に中途半端に剥がれたコーティングを全部除去した、という過去の経験から慎重派だったそうですが、風防のサプライヤーと検討を重ね、最終的にプロトタイプを自分たち(飛田・藤田・加納)が実際に使って問題ないと確認したところから採用を決めたそうです。

次は特徴的な洋銀を彫った文字盤に一種のコーティングを施すことにしたことです。
無垢の洋銀でエージングによって色が変化することを楽しむ狙いがあった文字盤ですが、条件によってスポット的な劣化など「望ましくない」変化が起きてしまうことがあったそうで、それに対する対策だそうです。
文字盤製造の各プロセスでも見直しと改善を繰り返し、「望ましくない」変化は抑えられるようになっているそうですが、より万全を期すために採用されたとのこと。

最後に、初期のころからやりたいとされていた巻き止まりが付いた香箱が採用されたことです。
NH Watchが採用するムーブメントは7750ベースの手巻きムーブメントで、元々7750は自動巻きなので巻き止まりが無く、オーバートルクでスリップするスリップ香箱なので無限に巻けます。
個人的には手巻きでスリップ香箱を採用することはオーバートルクを押さえることが出来たり、巻き過ぎで壊すことがない、と必ずしもデメリットばかりではないとは思いますが、やはり手巻きである以上巻きどまって欲しい、と言う飛田さんの思いがあったようです。
今回、バルジュー自身が製作した7750の手巻きバージョン7760の香箱と主ゼンマイのバーツを入手することが出来、それを同様にプロトタイプに組み込んで評価して問題ない、という事から採用されました。
巻き止まりがある以外はスペックは変わらない、とのことです。

特に最後の巻き止まり香箱は好意的に受け入れられそう、と思いました。



いわゆる完全新作のTYPE 4Aと4A-1の内、DLCコーティング文字盤を備えた4A-1です。
36mm径の新デザインのケースを備え、各部のディティールも36mmに合わせて調整されています。

曰く、このケースは去年のスクリューバック化の時にすでに検討を始めていたもので30mmのムーブメントを「ギリギリ」に納められるケースは?という命題に対する答えとのこと。
裏蓋は37mmケースと共通で、ケース側の構造で1mmの削減を実現しています。

新しいインデックスとセンターセコンドムーブメントで「スポーティ」な見た目を実現しており、ダイヤモンドシェイプと名付けた新しい針のデザインも採用されています。
また、センターセコンドのカウンターウェイトも新しいデザインが採用されており、キャビアに使うキャビアスプーンのように見えることから考案者の名前を取って「藤田さんのキャビアスプーン」と呼ばれた、というエピソードも。

今回初めて無垢ではなくDLCコーティングを施したダークグレーの洋銀文字盤は、機械加工の後DLCコーティングを施した上から手彫りし、インデックスのインクを流し込んで仕上げるそうです。

そして時計本体以上に注目を集めそうなのが…



カスタマイズベルトを備えたDバックル!
これは全部で32サイズ(長短各16種類、それぞれ2mm刻み)のベルトと特製のDバックルを組み合わせることでオーナー専用のフィッティングを実現するもの。
数字上は同じ腕周りでも、長短のバランスの調整によってより完璧なフィッティングが実現できるそうです。
ベルトとバックル自体は他のNH Watchにも使えますが、2023年‐2024年ではTYPE 4A専用のオプションとされています。

カンタロスの受け取りの時に腕周りは190mm、と伝えたことを伝えると…



加納さんが組み立て…



フィッティングが完了。



片開きなのでベルト面から見えるバックルの位置は片方に寄っています。
これは一般的とされる開き方ですが、オーナーの好みによっては逆開きにすることも可能だそうです。
個人的にはこの日も付けていたカンタロス(ギロチンカット方式)で慣れ親しんだ方式ですが、余りのベルトを遊革に納める手間がかからない快適さは一度体験してほしいと感じます。



光の当たり方によってDLCコーティング文字盤とダイヤモンドシェイプ針の表情は変わります。


(いまいち上手くバックル本体の写真が撮れなかったので公式から)

3つ並んでいる方の受け穴は3mm刻みになっており、時計本体と同様のワンタッチバネ棒に寄って噛みあう穴を変えることで最大6mmの延長や、バックルの微妙な収まりの調整に使えるようです。

さて、このバックルについて個人的に気になっていたのは「どうやって作ってるのか」という事。
おそらく切削なのでしょうが、この形状を削るのは削る部分が多いし、固定も大変そう、という事からの興味です。

答えはシンプルで、「まっすぐな状態を切削で作ったのち、藤田さんが手で曲げている」とのこと。
この製法(主に曲げるための靭性?)のためか、バックル部分は904Lではなく、316Lステンレススティールで作られています。
藤田さんは元々ラグビーをやっていて握力が70Kgあった、というエピソードも…



藤田さんの修理・修復の経験が光るのがこの部分。
バックルを閉じる際の「爪」となる部分がネジになっています。
摩耗したら交換できますし、穴側の摩耗にもサイズを変更することで対応することが可能です。

このベルトのバリエーションで調整し、オリジナルのDバックルまで作る、と言う挑戦的なアイディアは飛田さんが発案し、藤田さんの経験からまずは形にしたもの。



ベルトフィッティング専用のトレイは加納さん設計、とのこと。
使いやすさを考えて各部のサイズが決められています。
フィッティングに使用するベルトもゴートで装着感は同じ、サイズを測定後、組み合わせで発注という流れになります。



ベルト用のトレイやプレゼンテーション用トレイのフタにはブランドロゴが記されています。



同じサイズ(190mm)にフィッティングした我がカンタロスとTYPE 4A。
開き方をはじめ、実現のための複雑さ(ギロチンvsサイズを用意して選別)、バックル自体の複雑さ(部品点数が多いvs最小)など好対照だな…と思いました。

数多のブランドが挑戦してきた「ピッタリにフィッティングする」という夢への挑戦、ぜひ多くのユーザーに体験してほしいと思えるものでした。

冒頭にも述べましたが、2023年の新作は5月21日(日)の日本時間23:00 (GMTの場合15:00)から
5月24日(水)の日本時間23:00 (GMTの場合15:00)までオーダーを受付
、ご興味がある方はお急ぎください!

【お問い合わせ】
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