GPHG2018 グルーベル フォルセイ グランド ソヌリがメカニカル エクセプション ウォッチプライズを受賞!

 By : CC Fan

最も信頼度の高い「年間ベスト時計賞」とされるGPHG2018、今年も各賞に素晴らしい時計が選ばれました。
個人的に注目した時計の二つ目はグルーベル フォルセイ(Greubel Forsey)のグランド ソヌリ(Gronde Sonnerie)です。

並外れた複雑性を持つメカニカル エクセプション ウォッチ部門、プリセレクトの時点で、"だだものではない"時計が揃っていることがわかるでしょう。

まずは公式の写真を。



共同創業者のステファン・フォルセイ氏は何度もGPHGの各部門や金の針賞を受賞したいわば"大御所"や"殿堂入り"といった風格、ご自身の性格もあってか、控えめな位置に陣取っています。



対してネクタイはかなり個性的ですな…

腕にはもちろんグランド ソヌリ、今年もSIHHをはじめ何度かお会いしましたが、例外なく身に着けており、発表時に強くアピールしていた"日常使いできるグランド ソヌリ"という点を自ら実践しています。
もちろん、現在進行形の実機評価も兼ねてはいるのでしょうが…



"atomshpere"フォトより、両雄並び立つ!

公式の動画もどうぞ。







氏はイギリス出身で英語が母国語なので、助かります…

扱いが難しく簡単に破損する伝統的なグランド ソヌリに対し、徹底的な安全対策機構を組み込み、原理的に壊れる動作を行えなくし、日常使いに耐えるグランド ソヌリとして設計され発表されたグルーベル フォルセイのグランド ソヌリ。
言外に日常使いするなと言っているような数多の複雑時計、日常的に使えるといいつつ問題が発生する複雑に限らない時計に対し、もしかしたら時計の歴史を見ても初めてかもしれない"日常使いできるグラン ソヌリ"という途方もない目標を達成した時計かもしれません。
もちろん、ある程度の"常識的なマナー"は必要でしょうが…

ステファン氏は普通にグラン ソヌリモードを日常使いしているようです。
そもそもめったにお目にかかる機会もなく、構造としては簡単なミニッツ・リピーターですら見かけたとしても"調子を崩している"のが珍しくない印象でしたが、グルーベル フォルセイのものは毎回、好調です。

もう一点ユニークな点はソヌリ機構のみを手巻きもできる自動巻きとした構成。
これは大食いのグラン ソヌリモードではソヌリ機構のパワーリザーブが20時間しかない点に対する対策と、"身に着ける"時計としての実用性を重視した選択に思えます。
計時輪列は通常通り決まった時間にフルに巻く、ソヌリは身に着けている限り気にしなくてOKという作りであれば、普通の手巻き時計と同じ感覚で使うことができます。

スイス取材紀行でも訪れたグルーベル フォルセイ。
価格は途方もないですが、行っていることを伺い、見学すると"あの値段は妥当なのでは"と思えるほどの手のかかる作り方、もしかしたらよく言われる"伝統的な時計作り"を現在の物価価値で行うとこの値段になるのが本来の姿なのでは…とさえ思えてきます。
言い買えれば、効率化という名のもとに失われてしまうものがあるという考え方でしょうか。



地板を切り出すのは流石にCNC工作機械が行いますが、グルーベル フォルセイが主張する特徴的なこととして、この時点では"面取りっぽい"造形は施されておらず角は90度の角度で切り出されます。
他のブランドではこの時点ですでに面取りを行ったような造形になっており、そこから人が繋ぐように角を丸めて面取りを行いますが、グルーベル フォルセイでは面取りはすべて手作業というポリシーでであり、それによる仕上げの結果も異なるという考えです。



仕上げワークショップの入り口に飾られている仕上げを行った金属部品の例。
もちろん出来栄えは文句のつけようがない出来です。



使われるのはエメリーペーパー(目の細かい紙やすり)と伝統的なジャンシャンの茎とダイヤモンドペースト。



"キャビノチェ"の語源である屋根裏部屋に相当する3階に設けられた組み立てワークショップ。
時計師机もがっちりとした伝統的な木製の高級品を使っています。



組み立てワークショップの隣に設けられた歩度検査ワークショップ。
生産数が少ないため、過度に自動化はされていませんが、6姿勢という逃げ場のない基準で精度を追求します。
これは時計である以上精度は何よりも重要、という姿勢の表れです。



特徴的な工房。





こちらはSIHHで撮影した別カット。
フォトシューティングのタイミングで、"グランド ソヌリも見たいんだけど"と要望を出したら普通に出してもらえ、"お目付け役"は居るものの、自由に触ってOKという破格の条件。
機構に対する自信が伺えます。



新作展示会での一コマ。
ステファン氏のピースを思いっきり触るのはKIHさん。

途方もない価格ながら、時計としての本分である日常的に使えるということは外さないグルーベル フォルセイ。
複雑時計を作ることができる工房の中でも稀有な存在ではないでしょうか。

関連 Web Site

グルーベル フォルセイ
http://www.greubelforsey.com/en/

カミネ旧居留地店
http://kamine.co.jp/shop/maison/