グルーベル フォルセイ 2018新作展示会 東京会場レポート

 By : CC Fan
当サイトでもほぼ全ての新作情報イベントの告知を行ってきたグルーベル フォルセイ(Greubel Forsey)、本日7/14には神戸のカミネ 旧居留地店でもイベントが行われますが、先だって行われた東京会場の様子をレポートします。

会場は虎ノ門ヒルズのアンダーズ東京 51F、都心を一望できる好ロケーションです。
東京会場では、主催のカミネさんのご厚意で、WMO専用席を設けていただき、参加された読者の方とお会いすることができました。
改めてお礼申し上げます。



さて、先ずは世界観を説明するためのプレゼンテーションです。
左はフランス語通訳の方、中央がステファン・フォルセイ氏、右がカミネ代表取締役社長の上根 亨氏。



キービジュアルは2018年に新作ムーブメントと共に発表されたディファレンシャル イクアリティー(DIFFÉRENTIAL D'ÉGALITÉ)です。
個人的には今年の新作で一番好きなピースです。



まずは、上根氏から、昔からのステファン氏・デュフォー氏との付き合いと、なぜカミネで扱うことになったかの経緯が説明されました。
ステファン氏とは長い付き合いで、いつかは扱いたいと思っていたところ、カミネ110周年記念の時にスクールウォッチを販売した縁があり、今回お話が決まったそうです。
グルーベル フォルセイは代理店が何回か変わっており、あまり以前のことは触れたくないのかなと思っていたのですが、上根氏は率直に経緯を説明していました。

グルーベル フォルセイの価格は途方もないですが、飛ぶ鳥を落とす勢いのリシャール・ミルの好調さを例に出し、現在は超高級品ブームであり、時代のベクトルが向いてきているのではないかと分析されていました。
ただ、いきなり売れるものとは思っていないので、伝統的な時計作りが行きついた極致の作品として、芸術作品のようにその凄さを"まずは知っていただきたい"、そしてご縁があれば販売したいとのこと。
そのスタンスには非常に共感しました。



続いて、ステファン氏からブランドの歴史とタイムピースの照会がありました。
"我々はマニュファクチュールでは無くアトリエである"という自負が語られ、芸術の域まで高められた技術を研究し、時計を制作している理解しました。
もう一人の創業者、ロバート・グルーベル氏とは1999年にコンビを結成、2004年にグルーベル フォルセイとしてスタートし、2009年に特徴的な工房を建築、115人の従業員が情熱を共有しながら時計作りを進めていますが、年産はたった100本、仕上げには1本当たり4ヵ月の作業が必要だそうです。

"グルーベル フォルセイとしては挑戦しない作品を世に出すことはない"と述べるステファン氏、何らかの課題を解決するための研究が本分、その結果が7つの発明であり、売るための数が作れるような簡単な作品はこれからも作りたくないそうです。

個別の作品については過去のSIHHやバーゼルレポートと重なる内容が多いため、まずはそちらをご覧ください。
個人的に伺った追加情報だけ後ほど掲載いたします。

このスピーチの最中にもステファン氏の方から澄んだ鐘のような音が聞こえてくるのを聞き逃す我々ではありません…



課題解決の例として、精度を最大化するためのディファレンシャル イクアリティー。
今回の目玉…として紹介したかったのですが、諸事情により東京では見られないことに、神戸会場が羨ましい!



続いてはライターの篠田氏、フォルセイ氏、上根氏によるトークショー。
メディアの仁義的にどこまで載せていいかの判断が微妙ですが、篠田氏のおっしゃっていた"説明が難しく、簡単な記事では伝わらない、伝えようと思ったら大特集が要る"というのは非常に同意というわけで、我々(ほとんど私の趣味)はSIHH・バーゼル共に総力特集です。



プレゼンテーションの後は実機を見る時間です。
これだけの実機を一堂に見られる機会はなかなかなく、熱心に見られていました。

機構をはじめとしたいろいろな話をステファン氏として、あまり実機写真を撮っていなかったので、WMOにもゲストブロガーとして参加してくださっているDOi. WATCH. BLOGさんのTwitterのレポート(更新中)もご覧ください。



さて、プレゼン中に聞こえてきた"澄んだ鐘の音"の正体は…グランドソヌリ
写真を撮っているのはKIHさんです。
これは展示会のための作品としてというより、ステファン氏が腕につけて実機評価を行っているピースで、あまりアピールされていなかったため見逃していた方もいたのではないでしょうか。



心行くまで堪能するKIHさん。
ステファン氏のご厚意でミニッツリピーターは鳴らし放題、時間はセットし放題と大サービスです。
ソヌリの一部はソヌリ(パッシングチャイム)をOFFにしないとミニッツリピーターが起動できないものもありますが、GFのソヌリはそのような問題はありません。
また、多重にセットされたセキュリティシステムにより破損から守られます。

研究開発に11年を費やし、部品数は935個です。
日本円で1億円を超える高額ピースですが、去年は5本売れているとのこと。
一年で最大8本作ることができるとか。

こちらもミニッツリピーターボタンのセキュリティを確認するために二回押してみたり、不埒な行いをしていてあまり写真が取れていないのでSIHHのレポートを合わせてご覧ください。

 

ダブル トゥールビヨン テクニック ブルーダブル テンプ
ダブル トゥールビヨン テクニック ブルーの鮮烈なブルーの地板は多くの方に興味を持たれていました。
このピースが915/1000点で最高点を叩き出した国際クロノメトリーコンテストは、15日×3で様々な環境に時計が置かれて評価され、そもそも普通に最後まで動き続けるのも難しいような過酷な試験が課されるそうです。



シグニチャー1トゥールビヨン24セコンズ ビジョン、GMT。
特にGMTは"グルーベル フォルセイらしい"ピースで人気がありました。



永久カレンダーのQP イクエーションとGMTの5Nムーブメント。

QP イクエーションは今まであまり触る機会がなかったのでもう詳細に見ておくべきだったと後悔。
このピースで解決した課題は"エルゴノミクス"、永久カレンダーの使いにくさを根本的に解決したピースで、第7の発明、メカニカルコンピューターによって制御される永久カレンダー機構は日・曜日・月・年・近時差が連動して動き、リュウズのみで両方向に調整可能です。
メカニカルコンピューターは歯車が重なったような構造で、ビックデイトの永久カレンダーという複雑さにも関わらず、カレンダー表示のダイヤル円状の部分にほぼすべての部品が収まっています。
ただ、その複雑さゆえに開発は大変だったようで、開発年数は8年、2つの特許が取得されたそうです。

GPHG2017のカレンダー部門で優勝しています(プリセレクトにはクレヨンも…)。

GMTの5Nムーブメントは名前の通り、GMTのムーブメントを18K 5Nゴールド(ピンクゴールド)で作ったもの。
プラチナのケースとゴールドのムーブメントの対比が素晴らしいです。



私事ですが、SIHHでいただいて"取材ノート"として活用しているグルーベル フォルセイのノート。
バイブルサイズで非常に取り回しが良いです。

さて、ステファン氏と色々話した内容も。
"発明”についてはすでに第1から第3のトゥールビヨン3部作については記事にしましたが、それ以降も詳細を伺えたので近いうちに書きます。

トゥールビヨンを隠した(文字盤に穴が開いていない)シークレットまたはセクレという作品が好きなんだけど…と伺ったところ、やはりあまり人気がないようです。
もちろんユニークピースの相談はいつでもOK!だそうです。

ビジョンのエナメルについて。
エナメルのベースは銅板または金を使うものが一般的ですが、今回、ムーブメントの洋銀と色がつながるように"新開発の合金"を使ったとのこと。
穴あけ・エナメルの面取りも含めかなり難しい工程を行っているようです。
"日本のコレクターはエナメル好きが多い"という情報を伝えたので、何かの機会で見られるかもしれません。

そして、アポなしで実現しなかった工房訪問ですが、今回アポを取り10月に伺えることになりました!
10月に関口氏の時計カンタロスの引き取りレミ・マイヨ氏との再会…などの強行軍ツアーを検討しており、そのタイミングで訪問する予定です。

ありがとうございました!

関連 Web Site

グルーベル フォルセイ
http://www.greubelforsey.com/en/

カミネ旧居留地店
http://kamine.co.jp/shop/maison/