オーデマ ピゲ、東京ミッドタウンでのエキシビション『時計以上の何か』レポート(パートⅡ)by L’Hiro

 By : Guest Blog

ゲストブロガーの L’Hiroさんから、以前にご投稿いただいた
オーデマ ピゲ 東京ミッドタウンでのエキシビション『時計以上の何か』レポート 

に続く、レポート第二弾をいただきました。

オーデマ ピゲのスタッフから受けた説明をもとに、20世紀以降の展示作品を宗教や美術史・デザイン史という文化的な視点からフォーカスした面白い切り口です。

また同時に、ゲストブロガーのharuさんからは、19世紀に作られた懐中時計を含む、12の部屋ごとに展示されている時計にフォーカスした投稿をいただきました。( https://watch-media-online.com/blogs/2722/ )
対比してもとても興味深いので、2つの記事を同時にUPしましたので、どうか合わせてごらんください。



ジュネーブ生まれのオーデマ ピゲの社員の方から宗教や文化、流行がオーデマピゲの時計に与えた影響を個別に説明していただきました。今回のイベントのテーマである『時計以上の何か』をフランス語で余すことなく語っていただいたレポートです。

写真家であるダン・ホールズワースの美しいジュウ渓谷の岩々です。

オーデマ ピゲ発足当時はこれらの岩から採掘した鉄を時計の部品に使っていました。
少ないものでも約250個の部品の時計から、グランドコンプリケーションでは648個の部品の全てに、かつてはこの地で採掘された鉄が使われていました。



ここで注目すべきはジュウ渓谷で時計産業を支えているプロテスタント達が信じている宗教的な教えです。彼らの信ずる「神は誰も見えないところでも見ている」という教えは、オーデマピゲの時計の、人の目には絶対触れることのない部品一つ一つまで手抜かりなく綺麗に作らねばならないという精神に今だに息づいています。オーデマピゲの時計作りには宗教的な教えが背後にあるのです。


オーデマ家とピゲ家を説明する部屋には、壁一面に両家を中心とする家系図がその紋章とともに描かれています。


その中には「Famille LeCoultre」、つまりジャガールクルトの祖先のルクルト家の紋章も掲げられています。これは、過去には、オーデマ ピゲの部品の一部をジャガールクルトの祖先が提供していたということも示しています。
オーデマ ピゲに関わらず、昔のジュウ渓谷のほとんどの時計ブランドは部品を提供し合っていたそうです。

次に、時計のデザインです。
オーデマ ピゲの時計にはその時計が作られた時代が常に投影されてきました。今回はアールヌーヴォー時代からアールデコ時代を中心に説明していただきました。

アールヌーヴォーは、19世紀から20世紀初頭に流行った花や葉をイメージし曲線的なデザインをが特徴のエレガントな装飾で、ベルギーのブラッセルやパリを中心に流行しました。
アールデコは20世紀前半から中盤にかけて流行った幾何学模様がモチーフの、合理的で直線的な雰囲気を持つ装飾で、ヨーロッパやニューヨークを中心に流行しました。

オーデマ ピゲの時計へも、アールヌーヴォーとアールデコの影響が色々なところに見られます。例えばアワーマークでは、アールヌーヴォー時代はより丸味を帯びたアラビア数字を使い、アールデコ時代ではより直線的で角ばったローマ数字を使っていました。ケースもアールヌーヴォー時代は丸味を帯びたものが多かったですが、アールデコ時代は薄いものが多かったそうです。

また、オーデマ ピゲの時計は2つのデザインが流行った時代の建築や洋服の影響を大きく受けていました。アールヌーヴォー時代の時計は、非常に小さいモデルが多く実用的ではありませんでしたが、女性のアクセサリー的な意味合いが大きい時代でした。


まずはアールヌーヴォー時代の時計です。
1900年頃のアール・ヌーヴォーのブローチウォッチです。18Kイエローゴールドを使っています。


1924年制作のバゲットウォッチです。178個の1.8カラットのダイヤモンドと18Kホワイトゴールドで作られています。



1930年制作のコンプリートカレンダーです。タートル型の長方形とケースとゴールドのアプライド数字が使用されています。



1917年制作の八角形のレディース用の腕時計です。82個のダイヤモンドと18Kのホワイトゴールドが使われています。



1926年制作のジュエリーウォッチです。ベゼルと針、アワーマーカーに156個のダイヤモンド、リム部分とチェーンにオニキスとパールで装飾しています。



ここからはアールデコ時代の時計です。1936年制作のベゼル上にブラックエナメルのローマ数字をあしらった三色の文字盤を持つ時計です。14Kイエローゴールドを使用しています。



1917年制作のキュービズムの時計です。サテン仕上げのシルバーカラーダイアルで、リム部分にダイヤモンドとブルーサファイヤをあしらっています。アワーマークもアールデコらしく本来は丸味を帯びたアラビア数字を意識して直線的かつ角型で描いています。



1930年制作の表示窓タイプのジャンピングアワーです。両端の垂直部分の丸ひだ装飾とサテン仕上げが施されたケースに時と分の表示窓があります。18Kホワイトゴールドが使われています。



この頃はアールデコ時代の後半で、このようなデザインはアールデコから派生した流行したストリーム・ラインという様式の典型です。自動車やビルにおいて鉄を使ったデザインが流行しました。ニューヨークのクライスラービルはこの様式に倣って作られています。



1927年制作の表示窓タイプのコンプリートカレンダーです。5つの窓にジャンピングアワー、分デイ表示、デイト表示、マンス表示がされています。18Kホワイトゴールドが使われています。




以上、今回は現地生まれの方でしか分からないような時計の裏に潜む宗教的な背景や歴史、また、かつて世界的に流行した芸術様式をいかにオーデマピゲは時計に採用したかをレポートさせていただきました。
オーデマピゲの「時計以上の何か」とは「ジュウ渓谷の自然、創業者一族のモノづくりの精神、卓越した職人の情熱、プロテスタントの精神、世界を席巻した芸術の流れとデザインの進化」であり、オーデマピゲの時計を持つことはそれらを自分のものに出来るのと同じであると暗示しているようなイベントでした。




オーデマ ピゲ
https://www.audemarspiguet.com/ja/