いまどきのロレックス考 その4

 By : @kikuchi

●バーゼルワールド2016の様子(写真:水橋嵩行/パワーウオッチNo.88)

バーゼルワールド2017の開催も1カ月あまりとなりましたね。
そのためネット上では、シードゥエラーの50周年記念、ヨットマスター40のブレスなどなど・・・。ロレックスの新作についていろいろと憶測が飛び交っていますが、はたして今年はどんな新作が出るのでしょうか。2016年にデイトナの新SSモデルが発表されたことで、2005年のGMTマスター2に始まったロレックスの定番スポーツ系モデルに対するリニューアルは、ほとんどのモデルに対して実施されたことになります。その意味で今年どんな新作が出るのかちょっと見当がつかないのが正直なところです。個人的にはSSケースで青赤ツートンベゼル(通称ペプシベゼル)のGMTマスター2が出てほしいところなのですが・・・。ま、ないでしょうね(笑)。

さて、今回の「いまどきのロレックス考 その4」はそんなバーゼルワールドで昨年新デイトナとともに発表され、想定外のルックスから一躍脚光を浴びたエアキング、Ref.116900について書きたいと思います。


●写真:笠井 修

正直言うと、最初にこのエアキングを見たときは「えっ、どうしたの?」と思いました。
2014年に生産終了した旧エアキングといえば、ケース径34mmと小振りで、ロレックスのエントリーモデル的な位置づけにあった身近なコレクション。それがいきなり耐磁性能を有したスポーツ系モデルとして生まれ変わり、しかもそのルックスたるやロレックスのイメージからしてあまりにも主張の強いものだったからであります。「飛行史へのオマージュ」として誕生したらしいのですが、「Air-king」が生まれた1950年代初期からこのペットネームにはそのような意味が込められていたということなのでしょうかね。知りませんでした。


●1950年代初期のAir-King(Ref.5500)


●2014年で姿を消したひとつ前の4代目エアキングのRef.114200。

この個性的なデザイン、実は瓜二つのモノが別にあるのをご存じですか。新エアキングが発表された当初はロレックス愛好家の間で大変話題になったため知っている方も多いかもしれませんが、
それはロレックスが支援しているプロジェクトのひとつで、ジェットエンジンを搭載した超音速カーによって、時速1000マイル(時速1609km)の地上最速記録の樹立を目指して開発された「ブラッドハウンドSSC」のコクピットに装備されているロレックス製クロノグラフです。

●1000マイル(時速1609km)の地上最速記録の樹立を目指して開発された「ブラッドハウンドSSC」


●右がブラッドハウンドSSCのコクピットに装備されたロレックス製クロノグラフ。その左に新エアキングを勝手に合成して並べてみました。もちろん大きさは違うでしょうが、それにしてもかなり似ていると思いませんか。

上の写真を見てもおわかりのように、ミニッツスケールを大きくしたインデックス、ロゴやクラウンマークの配色などまさに酷似じゃありませんか。でも公式WEBサイトには、これを採用したとはひと言も触れていない。どうでもいい事かもしれませんが、どうも気になります。

さて、この新エアキングですが、もうひとつ気になる点があります。それはどれだけの耐磁性能を有しているのかということ。スペックを確認すると搭載するムーヴメントはCal.3131。これは耐磁時計として知られるミルガウス(前回のその3で紹介)専用に作られ、耐磁性が強化されているキャリバーナンバーと同じ。さらにそのムーヴメント自体は磁気シールドで保護されているとも記載されています。となれば1000ガウス(8万アンペア毎メーター相当)の耐磁能力を持つミルガウスと同じ性能なのではないかと思ってしまうわけです。しかしながら公式にはそのことについてどこにも触れられていないのであります。


●1000ガウスの耐磁性能を誇るミルガウス。鮮やかなZブルー文字盤のRef.116400GV

ロレックス専門の並行輸入ショップとして知られる「クォーク」のFacebookには、実際に裏ブタを開けた中身の写真がアップ(出たばかりの時計を開けるとはスゴイ!)されました。それを見ると確かにミルガウスと同じく磁束密度を表す「B」とともに矢印のマークが磁気シールド中央に刻印されているのが確認できます。つまりミルガウスと同じ性能であっても何ら不思議ではないのです。
●写真はコチラ
https://www.facebook.com/909.co.jp/photos/pcb.1264345896959524/1264345046959609/?type=3&theater

しつこいようですが、もし仮に同じ性能だとした場合はもうひとつ気になる点が浮かび上がってきます。それは国内税込定価です。ミルガウスのRef.116400GVが84万2400円。一方の新生エアキングRef.116900が63万7200円。約20万円もエアキングのほうが安く買えるのであります。この差の理由はわかりませんが、もしミルガウスと同じような性能で価格が安いとなれば、これまでロレックス唯一の耐磁時計として確立してきたミルガウスのポジションが微妙に薄れてしまうような気がしてなりません。

そうすると頭をよぎるのは「ディスコンティニュード」という言葉。そんなことを思い浮かべてしまうのは私だけでしょうか・・・。時計史に残る銘柄だけにぜひそうならないで欲しいものですね。m(_ _ )m

ちなみに、並行輸入市場における実勢価格は、ミルガウスのRef.116400GVが70万円前後。エアキングRef.116900は69万円前後です。購入の参考に。。。