【Only Watch 2023】アクリヴィア(レジェップ・レジェピ) クロノメーター アンチマグネティックを「読む」

 By : CC Fan


オンリーウォッチ2023出品作品
の中でも注目を集めるであろうレジェップ・レジェピ名義の新作、クロノメーターアンチマグネティック(CHRONOMÈTRE ANTIMAGNÉTIQUE)。
2年前のオンリーウォッチ2021でユニークピースが先行公開され、その後レギュラーコレクションがワールドプレミアされたRRCC IIと同じ方法論で発表されるのではないか、と予想されます。

さて、前述の一覧記事ではどのように耐磁クロノメーターながら、「ムーブメントを見れば」と言う表現があることから、通常は耐磁用に強磁性体素材でムーブメントを覆ってしまうため、見える(グラスバック?)というのはどのように実現しているか?と言う疑問がありました。
今回、ブランドから公式に発表された文章を読んでなるほど!と言う解決策が分かったのでレポートします。



とは言っても、現時点でブランドから発表されたのはこの概念を示すこのファーストスケッチと歴史と機能を説明する英文だけで、実機はもう少しお預けのようです。
抄訳した資料から読み取ったことをまとめます。

結論を先に書いてしまうと、ハンターケースのように「耐磁用ソリッドバッグ」が「通常のサファイアバック」にネジ込まれる構造になっていて、通常使うときはソリッドバックをつけて使い、ムーブメントを鑑賞したい時はそれを外せばサファイアバックからムーブメントが見える、と言うシンプルな解決策が採用されています。

1950年の戦後の黄金時代には地磁気が最も強い極地の探索、世界初の原子力発電所の稼働、と科学の限界が次々と破られたとともに、より強力な磁場(magnetic field)に時計が晒されるようになり、科学者たちの取り組みと要求によって、ジュネーブの偉大な時計師たちが刺激され、探検家や科学者に向けた耐磁時計の開発と進化に繋がった、という歴史から刺激を受けたレジェップ・レジェピによって、現代のクロノメーター アンチマグネティックを考案されました。

ジャン・ピエール・ハグマン(JPH)製のケースは非磁性ステンレススティールで作られ、ケースバックには文字盤に記された特徴的な凹凸マークと同じ意匠が施された裏蓋があります。
しかし、この蓋はねじ込み式で、装着者が外すことでその下に隠されたサファイアバックを露わにし、そこから完璧に仕上げられたムーブメントを眺めることが出来ます。

ケース自体は非磁性のステンレススティールですが、ムーブメント外周のリングと文字盤は磁性を持つフェライト系ステンレススティールが使われており、磁場を遮断するケージ(原文ではファラデーケージだが、ファラデーケージは電場を遮断するケージ)として働きます。
さらに、前述した耐磁ソリッドバックがケースバック側の磁場を塞ぐことで全方位からの磁場の侵入をブロックします。

ケージ外に露出する形の針や、脱式機の動作に重要なアンクルは非磁性体のソリッドゴールドで作られています。
RRCC IIとの連続性も感じさせる文字盤のデザインは、磁場の反転もイメージさせた「科学的」な文字盤となっており、RRCC II同様の伝統的なエナメルと彫刻技法で作られています。

ムーブメントもこれまでと同様左右対称を重視した構造になっており、最上位の仕上げが施され、仕上げだけではなく新たな構造を特徴としています。
テンワを6時位置に配置した慎重に設計された輪列によって時分針と共にセンターのセンターセコンド秒針を駆動します。

ハートカムによる秒針リセット機能が備えられており、リュウズを引くことで秒針が60秒の位置にリセットされます。
秒針リセット機構はRRCC IとRRCC IIとは少し異なり、リュウズを引き出すとストップセコンドでテンワが停止され秒針がリセットされる機構なのは同じですが、戻すときに先にテンワを止めるストップレバーが解除され充分安定状態になった状態で更に押し込むことでゼロリセットが解除され、秒針が最初からフルスピードで動き始めることで正確に秒単位での時合わせが行える、と言う機構が組み込まれています。

今までの作品同様、鉄パーツは完全に仕上げられていますが、今回は鋼ではなく、更に耐久性が高く非磁性のステンレス鋼を採用し、磁力に対する耐性を向上させることを狙っています。
鋼に比べるとステンレス鋼の仕上げはさらに困難ですが、今までのムーブメントと比べても遜色がない仕上げを実現しました。

ムーブメント心臓部、脱進機にはステンレスとは正反対の14金で作られたアンクルが採用され、これは歴史的なタイムキーパーに採用されていたものです。
機能性と希少さを両立するレジェップ・レジェピの哲学を反映し、完全に仕上げられています。

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見たい時だけ開ければいい、と言うのは中々思いつきそうで思いつかないコロンブスの卵的な発想ではないでしょうか?
もちろん、ケースによる耐磁だけではなく、各部もケアして磁力に対する耐性を向上させています。

ムーブメントの仕様
時・分・センターセコンド
秒停止機能
正確な時刻設定を行う為の秒ゼロリセット
ゴールド製輪列
耐磁性を考慮して選択された構造と素材
耐蝕性を備えた非磁性素材のゼンマイ
巻きすぎを防止する巻き止め機構
クロノメトリー最適化

ムーブメントサイズ
直径30mm
ブリッジから地板 5.8mm
ブリッジから針 8.1mm

部品数
239部品

石数
25石

テンワ
15歯ガンギ車のスイスレバー脱進機
自社製10.4mm直径のテンワ
ゴールド製アンクル
ブレゲ終端巻き上げヒゲ
固定されたドテピン

周波数
21600振動/時(3Hz)

パワーリザーブ
シングル香箱 72時間(3日間)

装飾
見えない部分まで手作業で完全に仕上げられたジュネーブ伝統の装飾
ブラックポリッシュ、面取り、ペルラージュ、コート・ド・ジュネーブ、手彫り
歯車のスポークも面取り仕上げ
鉛を含まない環境に配慮した洋銀を使用

ケースの仕様
表裏のサファイアクリスタルを含む30個の部品
ムーブメントを磁気から保護するフェライト系ステンレス鋼のリング
磁気から保護するためのネジ込み裏蓋には文字盤と同じ意匠を彫刻
裏蓋は専用の「鍵」にて取り外し、ムーブメントを鑑賞することが可能

寸法
直径38mm、厚み9.90mm(サファイアクリスタルを除く)
ラグからラグの長さ 48mm
ラグ幅 20mm

表示
時・分・センターセコンド


ステンレススティールの3針(確認中)

防水性
3気圧(30メートル)

ストラップ
革、ピンバックル


※オンリーウォッチ (Only Watch) 2023については下記を参照してください:
https://watch-media-online.com/blogs/7247/ 



関連 Web Site

Akrivia
https://www.akrivia.com/



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