URWERK Event

 By : CC Fan
NXONE様にウルベルク(URWERK)のイベントにお招きいただきました。
本国より、時計師のFelix Baumgartner氏とデザイナーのMartin Frei氏の共同創業者お二人が来日し、直接タイムピースの説明や哲学を伺うことができました。
Felix Baumgartner氏曰く、ウルベルクは非常に小規模なビジネス(社員17名、年産150本程度)であり、規模を追うのではなく自分ちの作りたいものを作るという方針のようです。


我がKantharosを観察するMartin Frei氏(左)とFelix Baumgartner氏(右)

特に興味があった歩度測定器を内蔵したEMC(Electro Mechanical Control)をしっかり拝見できたのは幸運でした。
9月に発表されたばかりの新作、EMC TimeHunter X-RayをFelix Baumgartner氏が着用していました。


EMC TimeHunter X-Ray (文字盤側)

"X-Ray"というのは見ての通り、スケルトン文字盤で中身が透けて見えるというイメージからのネーミングだそうです。
中心が時分(針表示)、右上が秒(ディスク表示)、左下がパワーリザーブ(針表示)、そして左上の赤いリングがEMCを象徴する内蔵歩度測定器のディスプレイです。

右側に格納されているのが発電機のクランクハンドルで、引き出して回すことで歩度測定器のマイクロプロセッサを動かすための電力がコンデンサに蓄えられます。
カスタム仕様のマクソン製ギアヘッド付DCモーターを発電機として使っており、クランクを1回転させるとモーターは55回転し、ギアヘッドの歯車はシリコン製で過負荷保護のクラッチも内蔵しているそうです。
回した感触は極めて滑らかながら確かな手ごたえがあり、"ああ、発電してる"と感じられます。

チャージされる電力は一回の動作に必要な分+α程度で、小容量のコンデンサに蓄えるのみです。
これにより、寿命やトラブルの原因となりやすいバッテリや電解コンデンサを使わずに済みます。
その代わりとして都度発電するという考え方のようです。

チャージが完了したら、左側のプッシャーを押すと歩度測定器が起動し、通常時は隠れている歩度測定器用の針が文字盤上に現れます。
その後、赤と緑の2色LEDが点滅(おそらくセンサの測定状態を表示している)して3秒間の測定が行われ、日差(±15秒)と振り角(180度~330度)が表示され、問題が無ければ緑LEDが点灯し、あれば赤LEDが点灯し結果を知らせます。
チャージが不十分な場合は、赤色LEDが点灯したのち、結果を表示せず歩度測定器用の針が再び隠れてしまいます。

ユーザー自らが時計の健康状態を確認でき、調整(後述)もできるという非常に面白いコンセプトです。


EMC TimeHunter X-Ray (ムーブメント側)

赤色のフレームの下に電子基板が隙間を縫うように収められています。

歩度測定は光学式で、テンワの穴をフォトインタラプタで検出して測定する仕組みです。
このため、既存のテンワは使えず、テンワから作成したインハウスムーブメントだそうです。
URWERKサイト内の紹介で分解図が載っていますので、ご覧ください。
あまり見たことのないテンワの形をしています。

測定に使っている水晶発振器の周波数は16MHzだそうで、周期は62.5ナノ秒です。
周波数的には機械式時計の日差を測るのには充分すぎるほどの精度です。

また、測定だけではなく、右側に見えているネジをドライバーで回すことにより、緩急調整もユーザーが行うことができます。


初代EMC

初代EMCも展示されていました。
こちらは、"時計よりもより測定器然としたデザインにした"とのことでした。
初代の方は結果表示用のLEDがなく、測定項目も日差のみです。
使っているマイクロプロセッサなどは同じものだそうですが、初代からTimeHunterでプログラムが進化した結果、振り角の測定機能も加えることができたようです。

ウルベルクと言えば立方体が回転するアワーサテライトやディスクが回転する表示がより有名かもしれません。


UR-105TA

ディスク上に時、ディスク位置で分を表します。
一見重そうな機構ですが、ディスクは軽量なPEEK素材で作られ、負荷は軽いそうです。


UR-1001

ウルベルクの"グランドコンプリケーション" UR-1001です。
サイズ感が分かりずらいですが、時計本体(真ん中の銀色の部分)だけで長さ106mm・厚み23mmあります。
それをさらに腕時計化するストラップ付のケースが支えています。
腕時計としても使えますが、ケースから脱着して懐中時計または置時計として使うのが順当な使い方ではないかと思います。

機能としては回転する直方体で時間を表示するアワーサテライトに加え、同じ表示で月日を表示するアニュアルカレンダーを備えます。
このアニュアルカレンダーは既存のものとは全く設計が異なり、1から作ったものだそうです。

また、ケースバックには5年に一度のメンテナンス時期を知らせるオイルチェンジインジケーター、100年・1000年分の動作時間インジケータという途方もない表示も備えています。

めったに見られない貴重なピースを拝見させていただき眼福でした。
重ねてお礼申し上げます。

関連 Web Site

URWERK
http://www.urwerk.com/
NXONE
http://www.nxone.jp/