ドミニク・ルノー、新作「Pulse60」を発表~"ウルトラ・アンプリチュード"による大振幅・低振動コンプリケーション

 By : CC Fan

2026年3月29日追記:変速歯車が線形なため、拘束角を相対的に小さくする効果はなさそうなので修正しました。

コンプリケーションの担い手として名高い工房ルノー・エ・パピ(現オーデマ ピゲ ルロックル)の「ルノー」の方、ドミニク・ルノー、昨今はルノーティシエとしての活動が活発でしたが、2026年のジュネーブに先駆けドミニク・ルノー名義での新作、「Pulse60」を発表しました。



目を惹く大型(20mm)のテンワ、名前が示すように1分で60ビート(往復)となる1Hzの低振動を特徴としています。
この低振動を実現するためにドミニク・ルノーは「ウルトラ・アンプリチュード」と呼ぶ技術を開発、前作DR01の「ブレードレギュレータ」で実現した低振幅・高振動の知見を活かした真逆の大振幅・低振動の超大型テンワを搭載しています。



大型のテンワは「1秒」を直接表現し、外乱にも強い、としています。
これを支える「ウルトラ・アンプリチュード」は通常360°(1回転)で振り当たりを起こすテンワをそれ以上に振るという技法です、この機構を見ていきましょう。

おそらく、一番分かりやすいのは動画だと思うのでまずは動画を掲載します。



いかがでしょうか。



結論から言えばこの機構は「テンワと振り座を分割し、その間を約2:1の変速歯車で繋いだもの」と読み解きました。
振り座部分が1回転(360°)すると 2:1で変速されているテンワは2回転(720°)近く回転することになります。

逆にテンワ側を基準にすればアンクルと作用する拘束角が半分になったのと等価であり、脱進機誤差を減らす効果があります、振幅が大きいほど同じ最大速度に対して振動数が小さくなります。
変速によって振り座から見た慣性モーメントを大きくする効果もありそうです。

拘束角を下げれば性能が向上する、しかし幾何学的な安全性の下限があり一定より下げることはできない、という既存の設計に対し振り角の方を大きくすれば相対的に拘束角の影響が減る、と理解しました。

低振動で安定度を高くするために振幅を今までの限界を超えて極限まで上げるための機構と理解しました。



アンクルがその名前の由来である錨(Anchor)型ではなく、三角形の形をしている理由は空いた真ん中のスペースに天真を通し、変速機構とアンクルを重ねて配置して省スペースにすることを狙っているようです。

これによりテンワをムーブメント中央に配置することも可能となっています。



斜めから見ると、テンワの小径歯車と振り座の大径歯車、アンクルがコンパクトに収められている様子が分かります。



テンワの振動は1Hz、アンクル脱進機でチックとタックの移動量は等しいため、秒のインデックスは0.5秒ずつ刻まれています。
緩急調整は緩急針のようで、偏心ネジによって調整する方法でしょうか?



反対側にあるのは「トルク・インジケーター」です。
パワーリザーブのように回転数の積算ではなく、香箱の出力トルクを直接表示し、ムーブメントの動作状況をユーザーに伝えます。



振幅を上げることで等価的に拘束角を下げ、脱進機誤差を減らして自由振動に近づけることができます。
手法は異なりますがDR01のロストピートエスケープメントと同じ方向性の考えで、いかに自由振動に近づけるか、と理解しました。



チタンとピンクゴールドのバイカラーの他、チタンケースも。



ホワイト文字盤も



新たな挑戦をするドミニク・ルノー、実機を見てみたいですね。

Technical Specifications

Case
• Grade 5 Titanium / Pink Gold and Grade 5 Titanium
• Dimensions: 40 mm x 44 mm
• Thickness: 12 mm (with sapphire crystal)
• Domed sapphire crystal with anti-reflective treatment
• Caseback: flat sapphire crystal with anti-reflective treatment
• Water resistance: 3 ATM / 30 m

Functions
• Hours and minutes on the 12 o’clock counter
• Natural dead half-second on the 9 o’clock counter
• Torque indicator on the 3 o’clock counter

Movement
• Diameter: 33 mm
• Balance frequency: 1 Hz / 7,200 vibrations per hour
• Balance diameter: 20 mm
• Hairspring diameter: 15 mm
• Regulation system with offset index assembly (patented technology)
• Power reserve: 4 days

Strap
• Interchangeable rubber strap with push-button system
• Delivered with a pin buckle and a triple-folding clasp.