時計をいただきました。

 By : Kingfisher
ご無沙汰しておりました、Kingfisherです。
新年を迎えて初めての投稿となります。1月ももう終ろうというところですが、どうぞ本年もよろしくお願いいたします。
さて、今年の正月は卒論のせいでこれまでになく正月らしさを欠いておりました…
誰だったか、「締め切りに追われる人生の最後はすぐにやってくる」みたいなことを言っていた作家がいましたが、いやというほど実感しましたね。高校生のころなんとなく文筆家の生活に憧れて物書きを目指していたことがあるのですが、とんでもないですね。締め切りに追われる毎日なんて正気の沙汰ではないなと思いました……
普段の、ちょっとずついろんなことが片付いていき、仕事(バイト)納めも終わって、部屋の掃除をして、実家に帰省して……という過程を経ずに全力疾走状態の12月を送ると、ちょっと時差ボケというか、体内時計が狂ってる感じが確かにあるのです。

そして卒論提出して、口頭試問も無事終わったところでSIHH2018が始まり、本当は1月頭位には投稿しようと思っていたこの記事も、気づけばこんな時期ということになってしまいました。

タイトルにもあります通り、今回は時計をいただいたお話です。

年末に帰省する前、父が就職祝いの品を用意してくれているということを聞いていた私は、名刺入れだとか、ネクタイだとか、新生活に必要な、そういった品々かと予想していました。しかしその日父が私にくれたものは、父が22年間愛用していたロレックスのエアキングでした。





正直なところ、これをもらえると知った時、こみ上げてきたものは嬉しさよりも困惑でした。仕事一筋の父は、会社に行くときにはいつもこの時計を身に付けていて、自分には、22年という月日を共に過ごしたその時計は、父の生き様そのものであるように思っていたからです。そんな時計を、就職祝いの品として贈られることの意味を考えさせられ、当惑はやがて厳粛な気持ちへと変わっていきました。





保証書を見れば、1995年となっており、私の生まれた年の翌年に買った時計であることが分かりました。ほぼ私と同い年の時計です。これを買った当時の父は若かったことでしょう。自分の父親の若いころというのは、なかなかうまく想像できないものですが、決して順風満帆というわけではなかったと思います。父は寡黙な人間で、本人からはあまり聞いたことはないものの、母からは若いころに苦労した話をよく聞かされました。それでも、母と、小さな子供二人を食べさせていくために一生懸命働いて、いまではささやかながら責任ある立場を任されるまでに至っています。決して大きなことを成し得たわけではないかもしれませんが、立派な父親だと思います。




若いころの父に想いを馳せていると、いろいろなことを思い出します。その多くは、私が小さなころの脈絡のない断片的な映像としての記憶です。朝起きぬけに見えた、冷え切った冬の朝に台所に立つ母の姿。枕元に置かれた父の眼鏡(眼鏡をとった父の寝顔は、幼心になにかパーツが足りないような気がしました)。買い物に行く母の後ろに乗せられた自転車からみた町の景色。送迎の車窓から見えた、幼稚園までの桜並木等々。昔住んでいたアパートの、記憶の中の光景が正しいかどうか確かめたくて、私は母に家の間取り図を描いてもらいました。恐らくはほとんど完璧に正しいであろう母の描く図と、記憶の中の光景とは全く違っていたものの、不思議なことに私の記憶は修正されてかき消されることはなく、それらの景色は今もどこかにひっそりと存在していて、今でも私を匿ってくれるような優しい記憶のままでいます。そしてそういった何の意味もない瞬間瞬間の記憶が、この時計とともにあったのだと思うと、幼いころからの友人に再会したような気がしてくるのです。





さて、ちょっとおセンチな気分に浸っておりましたが、ひとつ重大な現実的問題があります。ほぼ私と同い年のこの時計、22年間オーバーホール歴なし であります。

恐らくネットを探してもこれほどの耐久レース(?)の記録はないのではないでしょうか。時計にはあまり関心のなかった父でありまして、保証しますが22年間一切オーバーホール、修理もなしです。これはある種のサンプルとして、非常に興味深い個体であります……あんまりいいことじゃないですが。
父はほぼ毎日この時計だけを着用していたわけでありまして、その割には外装も綺麗だし、何より不具合が全くありません。1週間ほど着け続けてみたのですが、はっきりとわかるほどの日差も生じませんでした。Rolexは伊達じゃない!

しかしさすがにこのまま放置は時計好きとしていただけません……ということで、オーバーホールに出すことにしました。KIHさんにおすすめいただいた八重洲の某時計修理店に持ち込んだところ、だいたい1か月ほどかかるようで、恐らく戻ってくるのは2月末くらいになるでしょう。

というわけで、戻ってくることにまたレビューを書かせていただきます。

最後までお読みいただきありがとうございました!
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