BaselWorld2018 ジャケ・ドロー サイニング・マシーン

 By : CC Fan
多少横道にそれましたが、今回からまたバーゼルの新作を紹介したいと思います。
今年、創業280周年を迎えたジャケ・ドロー(Jaquet Droz)からは様々な新作が発表され、ニュースを掲載していますが、個人的に待ち望んでいた作品についてはブログでレポートしたいと思います。

2014年から取り組んでいたサイニング・マシーン(THE SIGNING MACHINE)が記念すべき年についに完成しました。
まずは発表当時の動画を見てみましょう。



創業者ピエール・ジャケ・ドローが制作した3つのオートマタ(自動人形)からインスピレーションを得た"現代のオートマタ"ともいうべき作品です。
2014年のニュースでは、今世紀初頭を象徴するオブジェとしてスマートフォンのサイズを採用し、小型化技術により機構を収めたと報じられています。
ユニークさに惹かれ、製品化を待ち続けていましたが、なかなか続報がありませんでした。

4年の時を経て発表された今年のバージョンの実機写真を。



2014年のものより開口部が広がり、より機構を見渡せるようになりました。
ケースサイズは158 x 82 mm、厚み21mmで、厚み以外は大きめのスマートフォンサイズに収まっています。

プレスリリースからの引用で機能をご紹介します。

4年という開発期間を費やし、2014年に着手した計画がついに完成しました。メゾンの創業280周年に披露されたサイニング・マシーン(THE SIGNING MACHINE)は、1738年から始まった創業者が生み出した、感嘆を誘う古の伝統を受け継いでいます。

ジャケ・ドローの象徴を語るとき、ブランドの機構や美的クリエイティビティに言及されることは偶然ではありません。ブランドは18世紀から「驚異の芸術」を継承して、ピエール-ジャケ・ドローの先導により、高級時計製作、芸術、オートマタの世界を融合した初のブランドとなりました。そして今日、ジャケ・ドローはその唯一のブランドと言えるでしょう。

こうした背景において、「サイニング・マシーン(THE SIGNING MACHINE)」の誕生は特別な意味を持っており、コレクターが待ちに待った一大イベントであるブランド創業280周年に発表されました。これに先駆けて、2014年にサイニング・マシーン(THE SIGNING MACHINE)のファーストバージョンが発表されました。当時はまだ野心的なプロジェクトでしかありませんでしたが、それからさらに4年の開発期間を経てオートマタが完成しました。

オートマタの製造において、メゾンはピエール-ジャケ・ドローの遺産を踏襲し、見事なまでに生きているものを魅惑的かつ神秘的に模倣したユニークさを実現しています。現在、ヌーシャテル美術歴史博物館に展示されている「文筆家」、「音楽家」、そして「画家」のオートマタは、長い年月を通じて、スペインや中国皇帝の宮廷、パリ、ロンドン、ジュネーブ、モスクワを旅しその芸術の礎を築きました。

バーゼルワールドで披露されたサイン・マシーン(THE SIGNING MACHINE)は、その進化形であり、2件の特許が申請され、「文筆家」と「画家」の両方から着想を得ています。オートマタの動きはよりスムーズに改善され、バランスの取れた見事なサインを綴ります。

現在オートマタはパワーリザーブ表示を備えています。このパワーリザーブにより、マシーン側面のレバーで巻き上げを行わずとも2つのサインを仕上げることができます。585個の部品が連動する極めて複雑な機構は、すべて手作業で組立ておよび調整が施されています。サインのプログラム、すなわち3つのカムによる機械的コード化も完全に手作業で行われています。

マシーンが書くサインはユニークで個性的です。サイニング・マシーンはオーナーが定めた4桁のコードで解除しなければ作動しません。またオーナーは、自社アトリエで唯一無二の芸術作品を手作業で作り出すというジャケ・ドローの哲学に応じて、マシーンの装飾の大半を決めることができます。

ポリッシュおよびサテン仕上げが施され、手作業で彫刻したレッドゴールドまたはブラックのハードウッドを纏うマシーンは、レザーポーチに入れて持ち運べるよう設計されています。ジャケ・ドローのサイニング・マシーン(THE SIGNING MACHINE)は、かつて国境や海を超えて感嘆を誘ったピエール-ジャケ・ドローのように、世界を駆け巡ることでしょう。

«Some watches tell time, some tell a story»

オーナーごとにカスタマイズされたユニークピースとして製作され、当然ながらサインに合わせてカムもそれぞれ専用で作られます。
3つのカムというのは、おそらくではありますが一点を中心として動く先端にペンが取り付けられたアームの角度と伸び縮みする長さ、そしてペンの上げ下げを制御していると思われます。
カム自体はガバナーによって定速回転し、それをアームのレバーが読み取って動きに変えることでオーナーのサインを再現するという仕組みです。



大きく開かれた開口部から重なっているカムとアームを駆動するためのリンクが見えます。
おそらく、向かって左下の4桁のロックの上に見える銀色の円形の部品が速度を一定に保つガバナー、その上が香箱とリピータのようなスライダによる巻き上げ機構、緑色の表示がパワーリザーブインジケーターで香箱の残りパワーリザーブに連動して色が変わるようです。
右上には専用のペンが格納されており、実際の使用時には引き出してアームの先端に取り付けて使います。


逆側は塞がれておりシンプルな見た目です。



使用イメージ。
ジャケ・ドローのサインが書かれています。



専用のレザーバックが付属し、持ち歩くことができます。





ユニークピースのため、オーナーの要望に合わせてエングレーブを施すことも可能です。

ジャケ・ドローのブランドの核となっているオートマタを現代風にアレンジした非常の面白い作品だと思います。
惜しむべきは別の取材とバッティングしたため、私は実機を見ることが叶わなかったことです(写真はa-lsさんが撮影)。
次は実機を拝見し、より詳細な技術情報を伺いたいです。

お問い合わせ先
ジャケ・ドロー ブティック銀座 03-6254-7288 
WEBSITE:www.jaquet-droz.com