ダマスコ、注目のジャーマン・ブランドが 天賞堂でフェア開催中!~金属加工会社を起源に持つユニークで技術主義なウォッチメイキング

 By : CC Fan

編集長のBlogで紹介された
ドイツ時計ダマスコ(DAMASKO)、金属加工会社から時計製造に進出したという異色の経歴を持つ会社で、「マニュファクチュール」でも社外サプライヤーに依存することが多い時計ケースを自社製造する特徴的な時計作りを行っています。
なるほど興味深い…と思っていたら、銀座天賞堂さんにてダマスコフェアを行っており、拝見する機会があるというお話を頂いたのでレポートします。


現在は店舗改装中という事で、ビル内で営業中。



最新自社製ムーブメント「キャリバー C51-6」を搭載した新作クロノグラフ「DC86」をキービジュアルに、ラインナップが勢ぞろいしています。



創業ビジネスである金属加工ではワイヤ放電加工機やCNC加工機を使いこなし、化学プラントの各種設備や半導体製造装置の部品など製造、過酷な腐食性を持つ化学物質に耐えるための素材と表面処理、加工の知見を蓄えており、それを時計にも反映させているそうです。
時計業界の慣習にとらわれず、他分野からでも良い物であれば取り込んで採用するという姿勢はまさにドイツ的な理詰めのものづくりと感じました。

金属加工会社で加工が専門ですが、パートナーの冶金会社(金属自体を作る会社)とのコラボレーションによって新しい組成のステンレスの開発も行っており、316Lや904Lと言った時計業界で一般的に聞かれるステンレス鋼より耐蝕性と表面硬度に優れる新開発のステンレス鋼を採用しています。
化学プラントや海洋設備などでは904Lですら耐えられないような過酷な環境はざらにあるため、新合金の開発は行われていましたが、基本的に頑丈という事は加工も難しいという事であり、時計にはあまり顧みられることがありませんでした、そのハードルを乗り越えて採用したのは金属加工会社の面目躍如と言ったところでしょう。

コアとなるステンレス鋼は2種類、1.4108と1.3964です。

まず1.4108はほとんどのモデルに採用されるステンレスで、ASTM F899と言う規格名でも定義されるマルテンサイト系ステンレススティールです。
鉄に対しクロム、モリブデン、窒素を添加して作られており、一般的に金属アレルギーの原因になりやすいニッケルを含まないためアレルギーを起こしにくいとされています。
素材自体のビッカース硬度が740HVで316Lの倍の硬度、さらに表面硬化処理を併用することで4倍の硬度を実現します。

もう一つの1.3964は更にヘビーデューティ向けのダイバーズモデル(防水200m以上)に使われるもので、こちらはオーステナイト系ステンレススティールです。
鉄に対し、クロム、ニッケル、マンガン、モリブデン、窒素、ニオブを添加して作られており、潜水艦にも使われる高耐蝕・高強度合金です。
ダイバーズモデルではこの1.3964を含めて5種類のステンレス鋼を適材適所で使用しているそうです。



3カウンタークロノのDC86とセンター同軸分積算計(飛行機型の針が分積算計)のDC80.
ステンレスと言うよりチタンのように見えた梨地のケースは1.4108に加え独自のDAMESTコーティングによるものです。

PVDやCVDコーティングの弱点として、「エッグシェル効果」と呼ばれる現象があります、これはコーティング自体は非常に硬いが、内部の金属が柔らかい場合、広い面積で力が加わる擦り傷には耐えることができるものの、一点に力が集中する打ち傷では内部の変形によってコーティング自体が割れてしまい、穴が開いてしまう現象で、卵の殻を尖ったもので突くと穴が開いてしまうのと似ていることから名づけられています。

DAMESTコーティングでは金属表面に直接コーティングするのではなく、まず金属表面にイオン注入法で表面応力をかけて硬化させた1.5ミクロンの改質層を作ります、これはビッカース硬度で1500HVでケース本体とコーティングの中間の硬さとなり、接着層として機能します。
この上にプラズマCVDプロセスで合計7ミクロンの多層コーティングを成長させ、2500HVの硬質コーティングとします。
素材そのものが硬いことに加え、中間層が介在することでコーティングの剥離を防ぎ、打ち傷にも強い構造を実現しています。



コーティングの強さを実演するためのケースサンプル。
デモとしてカギで擦るのが「定番」だったそうですが、こちらのケースは無傷なのに対し、マンションのカギが削れてしまいカギとして使えなくなった…と言う笑い話も。

このほかリュウズやケース構造にも新しい発想や他分野の知見を反映した構造を採用、多くの技術で特許を取得しており、試しに創業者のコンラッド・ダマスコ(DAMASKO KONRAD)で特許検索をかけると多くの特許が見つかります。
興味深いので特許読みもまたやりたいところ。

これだけ妥協のない姿勢で作られていても、DC86が550,000円(税込)とまさに破格と言っていいのではないでしょうか。



個人的に一番惹かれたのはこれ、DC80クロノグラフ。
分積算計もセンターに配置されサブダイヤルがないので一見するとクロノグラフとは気が付かないかもしれません。
インデックスや針はツールウォッチとして視認性が最優先!と言った佇まい、日付レスなのも好みです。



自社ムーブ自動巻き C51-1搭載ではありますが、潔いソリッドバック。
スクリューバック100m防水。



三針のDK10、赤文字で入れられたSiはダマスコ開発によるシリコンひげゼンマイEPSテクノロジーを表しています。
曜日・日付表示もあります。



グラスバックなので、自社開発のマイクロベアリングによる自動巻きローターも堪能できます。
このテクノロジーはサプライヤーとしてスイスのブランドにも供給しているとか…



メタルブレスレットのモデルも選べます。
ストラップモデルをメタル化することもできるそうですが、一見同じように見えてケースごとにバリエーションがあり、何タイプかあるそうです。
ここら辺もドイツの生真面目さを感じます。



ブレスレットのコマは6角トルクスネジで組み立てられており、調整用コマと本体コマが全く同じ構造です。
これにより、調整で余ったコマを取っておけば一部が破損した時にそのコマを使って入れ替えるという事ができるほか、ブレスレット全体だけではなくコマ単位での購入もできるそうです。
合理的な構造です。



自社ムーブモデルのほか、ETA搭載のよりお求めやすいモデルも。
200m防水のスポーティースリーハンド。



パイロットウォッチやツールウォッチと言った実用性を最優先したダマスコとしては珍しいドレス調のエレガンスDK105。
9時位置のスモールセコンドが面白いです。



手巻きムーブメントはローターがない分より機会を堪能できます。
誇らしげにMADE IN GERMANYと入れられています。

ダマスコ、不勉強なもので今まで知らなかったのですが、研究開発もしっかり行っており極めて真面目に取り組んでいる時計作りと感じました。
また、とても入手しやすい価格設定にも好感が持てました(価格などは下記の公式サイトdご確認ください)。
ありがとうございました

■ダマスコ公式サイト
URL:https://damasko-watch.jp/



天賞堂のマスコットの天使君もコロナ対策中…!



【DAMASKO(ダマスコ)フェア】
■期間:開催中~6月30日(火)まで
■開催場所:天賞堂
東京都中央区銀座6-9-3 銀座AKビル7F
営業時間:11時~19時30分(月~土)、10時30分~19時(日・祝)
お問い合わせ:03-6264-5156
■フェア特典:フェア期間中にDAMASKO製品をご購入いただいた方に純正ストラップをプレゼントいたします。
詳しくは店頭にてお問い合わせください。


天賞堂
天賞堂は明治12年創業の銀座の老舗。高級時計、宝飾品、また鉄道模型を取り扱う。伊藤博文、尾崎紅葉など、明治期より各界の著名人が顧客として名を連ねていた天賞堂の名は、夏目漱石の小説や永井荷風の随筆にも登場し、当時から高級品店の代名詞として知られています。URL:http://www.tenshodo.co.jp/