MING 初のダイバーズ、「18.01 H41」を1か月使ってみた~実機レビュー

 By : KIH


大変遅くなった。11月半ばに到着し、今日まで毎日装着していたわけだが、どういうわけだか今年は「本業」がこの期間バタバタしており、夜中のZoom会議とか、はたまたプライベートでは親の介護とか、なかなかしんどい状況で、今まで結局このレビューに手を付けることができなかった(他の記事も書けなかったが・・)。

結論を先に言うと、「秀逸」の一言である。この値段(約35万円)で文句を言う人などいないだろう(もちろん、買った人の中で、である)。それでは見ていこう。例によって写真が多く、長くなるが最後までお付き合いいただけると幸いである。



16.5cmの手首に40㎜のダイバー。12.9㎜の厚さは、日本人にはぴったりのサイズか、と。

さて、まずはおさらいとして、こちらをご覧いただきたい。8月7日にウェブで受付を開始、少数しか作らないというのもあるが、10分とかからず売り切れてしまった。筆者は、幸運なことに間に合ったので、少し早いクリスマスプレゼントに恵まれた。私はプレスリリースは先に見ていたので情報を先に知っていた、と思われるかもしれないが、実際にはMINGからのニュースレターにサインアップしていれば、そのしばらく前にちゃんとすべての人に公平に、何日の何時から受け付け開始、というのは知らされていたので、申し込みに関しては、私も皆さんと同じスタートラインであったことはご理解いただきたい(我々はジャーナリストではないので)。


こちらが届いたパッケージ。時計だけ買った人は上の大きめの箱だけ。私は一緒にスペアのカラフルなラバーストラップもゲットしたのでそれが入っている箱。

ちなみに、時計製造はすべてスイスで行われているが、最後のクオリティ コントロール、アクセサリー(ストラップ取り付け、箱詰め、保証書等々)と、商品の発送はMING氏の本拠地であり、本社として(スイスももちろん第二本社の位置づけ)の機能があるマレーシアから来た。




保証書は折って箱に入っている。


これが箱の中。中には、Studio Koji Satoによる革製の時計パウチ。柔らかい革で高級感がある。


3本もゲット(オレンジ、水色、ネイビー)。派手、だったかな・・・。後述する。


革製パウチを入れる布袋も入っている。


こうなるわけ。


保護、というよりはカバンに入れて持ち歩くイメージか。これだけでだいぶコストがかかっているのでは?


見にくいが、MINGのロゴ入り。



スペックを簡単に日本語で再度紹介しよう:
ケース、文字盤、針:
グレード5 チタン、ソリッドケースバック
DLCコーティングされたステンレススチールのベゼル(スーパールミノバX1)
直径 40㎜、厚さ 12.9㎜、ラグからラグまで 46㎜
厚さ3.5㎜のサファイヤクリスタル、両側に非反射コーティング
防水機能 1000m
3重のパッキンを装備したスクリュー式リューズ + 締め忘れインジケーター
文字盤は2層 - セラミックコンポジットのHyCeramにスーパールミノバ X1をアプライし、サファイヤガラスに接着
銀製の針に、スーパールミノバ X1を流し込み
一方向回転ベゼルは60クリック
本体重量 65g

ストラップ:
20x18㎜の両端カーブ、クイックリリース式、ジャン・ルソー(パリ)製
MINGロゴ入りピンバックル

ムーブメント:
トップグレード ETA2824-2 自動巻き、シュワルツエティエンヌによる改造(もともとの2824はデート表示機能があり、それをなくした上でリューズを1段引きにする、というのがメインの改造)
40時間 パワーリザーブ
28,800 bph (4Hz)
25石
センターセカンド、ハック機能付き
250時間テスト、5位置調整
2年間保証
スイス製


1.まずは、実物を手にした印象
これまで何度もお目にかかり、他人のを腕につけたりしてきたMINGの時計だが、自分のものとして新品を受け取ったのはこれが初めて。自分に対しても、お待たせしました、という感じ。パッケージングはよくできていて(MING氏はやはり優れたデザイナーだ)、パウチも質が高いのがわかる。
時計は軽い。めちゃくちゃ軽いわけではないが、ダイバーとしてはめちゃくちゃ軽いと言ってもいいだろう。ケースはチタンだが、ベゼルはスチールということもあるだろう。

 
付属のラバーストラップは表が黒、裏がオレンジ。どちらも同じ材質のラバーだと思われる。

すぐに気が付くのは、ベゼルの「異形」だ。


そう、ベゼルに「ギザギザ」がないのだ。これは違和感がある人は違和感があるだろう。しかし、忘れてはいけない。MINGのチームには、本格的なダイバー(ダイビングがかなり高度な趣味となっているらしい)が2人もいるのだ。その彼らも当然「OK」を出したということは、機能性・実用性に関しては問題がない、ということだ。これは「ギザギザ」の代わりにベゼル表面の摩擦で十分に水中でも確実に回せる、という加工がされているためだという。私自身は、ダイビングもしなければ海にもプールにも行かないが(カナヅチではないが、そういう機会がないということだ)、印象に残るダイバーを欲しいとずっと思っていたところだ。正直、他のダイバーはみんな同じに見えてしまう。

ラバーストラップは、よくできている。後述するが撥水性もいい。ただ、おそらくラバーの特性なのだろう、両面同じ素材で貼り付け縫い付けられているので、曲がりにくい性質がありそうだ。もちろん、固いというわけではないが、そんなにきつく締めなくてもストラップはまっすぐに戻ろうとするのか、ちょっと「遊革」の跡が腕につくなあ、という点が、小さいことだが強いて言うと気が付いた点。もちろん、1か月しか経っていないので、もっと使い込めばこれは直る点かもしれない。





遊革を表に持ってくるとこんな感じ。これだと問題はない。


しかし、かなり厚さの平準化には工夫がされているので、もう少し使い込めば慣れてくるものかもしれない。



2. ダイバーとしての実用性(良い子はマネしないでね)
入浴、シャワー、洗顔等々、この時計をつけて挑戦。まったく問題なし。ギザギザがないベゼルの為、もちろん、泡がついた右手でベゼルを効率的に回すことはできないが、それでもベゼルのクリックはそれほど固くないので実用性は十分。風呂の中でのベゼル操作はまったく問題なく、ダイビングにおける水中での操作性も、ダイビング用のグラブもしていることだし、問題ないであろう。







ストラップはすぐに乾く。


ケースバックの黒の部分は、手首から滑りにくいような素材になっている。これも役割として秀逸で、かつ乾燥も早い。



3.スーパールミノバ X1の力、操作性、精度、工夫、装着写真
まずは、写真を先に。

灯りにずっと当てて、そのすぐそばで撮って、こうである。Super-LumiNova X1®という、ルミの明るさは大したもの。そして、ルミの面積としてはこのダイバーが最大だろう。実用性ではこちらの方が「通常の」ダイバーよりも見やすいのではないだろうか。


ちなみに、ライトボックスで真面目に撮ったらしっかりとルミの強さがわかる。



そしてこちらが、リューズねじ込み忘れインジケーター。この赤い部分であるが、これがねじ込んでいる状態。


こちらは、ねじ込み忘れ状態。これも、小さなことだが装着者から見えやすいところであり、いい工夫だと思う。



また、リューズの操作性はしっかりとした「カッチリ感」である。時刻調整の「あそび」は少なく、針飛びもなく、リューズを引いた時の「カチッ」に「ハズレ」はない。要するに、時刻調整などにイライラしないので快適なのである。


16.5mmの手首に装着した感じ。


皆さんもそうかもしれないが、上から見た写真では、ベゼルがドーナツ状で表面ガラスよりも盛り上がっているような印象があった。しかし、実際にはまっすぐである。


厚さ3.5㎜の表面ガラスにより、極端に横からでは文字盤は見えない。


ベゼルとクリスタルの境目は真っ平らだが、クリスタルが微妙にドーム状になっているところに注目してほしい。これで、さらに強度を高めている。


分厚さ感はこんな感じで、仕事にも着けていったがいつものワイシャツの袖の中に収まったので、ちっとも厚い感じはしない。


すべてがカッチリと作られている。




ケースサイドはポリッシュ仕上げなので、リューズ操作時にその周りに皮脂等がつきやすい。いつも気をつけて磨いておきたいものだ。



レザーストラップに交換してオフィスにて。非反射コーティング特有の青い(または時に緑)反射光。私は、両側に非反射コーティングがなされている時計が好きだ。それぞれの好みだとは思うが。


ちなみに、精度だが最初の10日間計測したが、10日で プラス41秒、1日平均 プラス4.1秒であった。COSC検定は通っていないが、調整にも妥協していない、ということであろう。しかし、忘れてはいけない。この時計は2950スイスフラン(35万円以下)なのだ。同じ価格帯のダイバーで、ここまで作りこんだものはあるだろうか。


4.簡単着脱ストラップ、全体的感想
まずは、クリック式の簡単脱着ストラップ。

これは、ラバーではなくまた別途購入したレザーストラップに交換してみたところ。ちなみに、レザーストラップでは、「遊革」の皮膚への当たり方は柔らかかった。

操作は簡単というか、シンプルと言った方がいいだろう。簡単に見えるが、ある程度の練習・慣れは必要。老眼の人はちゃんと老眼鏡をかけて、落ち着いてやるべき。クリッカーを押し下げるのも力がいるので、爪が傷むこともあるのでそこも注意。とは言え、簡単さは従来のバネ棒に比べると格段の差である。私は断然クリッカー派だ。




こちらはすべてラバー。派手過ぎたかな、とは思っている。


黒(標準)


ネイビー、いい。


水色、軽い?


オレンジ、ま、たまには・・。


遊び心で、時々明るい色に取り換えると、それはそれで目立つし、話題にもなるだろう。そういう自由さがいいと思う。

が、個人的には、ストラップについてここでいろいろ言うのであれば、チタン製のブレスレットも買えばよかった、と反省している・・・。きっと軽くて装着感もいいだろうな、と今になって思う。

©MING

とは言え、デザイン的にストラップの方が良さげに見えたのでこちらを選んだのは事実。でも、そのうちブレスレットを試してみたい衝動にかられる。。


さて、ということで、いつものように長ったらしく写真の多い記事になったが、結論は最初に書いた通り、「秀逸」である。この値段でこの作り。私は文句ない。実際に使えるダイバーであり、私が実際に着けて外に行けるダイバーである。ギザギザのベゼルではなく、ダイバーに見えないところもいい。私にとっては、ちょっと厚めで、激しい防水性能があるカジュアルスポーツウォッチという立ち位置でいいのだ。

今回、チャレンジしたけど買えなかった人は残念だったが、これはもうディスコンが決まったようである。だが、きっと次があると思う。いつになるかわからないが。。


MINGのニュースレターが送られてくる人(簡単に誰でもming.watchで申し込める)にはもう届いたと思うが、Ming Thein氏からの2020年の振り返りと2021年のことが少し書いてあった。

「17.06と18.01 H41は正式にディスコンとなる。ETA2824のコストが上がり、今のコストでは作ることが出来なくなったからだ。自分たちの頭の中は、アイデアの方がリソースよりも溢れているため、今は同じことを繰り返すことにあまり意味はない。 ただし、全部が全部1度きり、というわけではなく、2021年にも繰り返し作るモデルもある。
- 17シリーズの最後を飾るいくつかの新しいバリエーション、新しいムーブメントで。
- 27.01の最後の製造
- 27.02の製造開始
- 初めての「コラボレーション」モデル
- 「Mosaic」とフラッグシップモデル
- MINGのスペシャルプロジェクト「Cave」
- そして、世界で最も軽い機械式時計。プラスチックもカーボンも新素材を使ったいるわけではない、普通のサイズで自動巻きで、多くの革新的なアイデアがつまったもの。もちろん、1千万円もするわけではない。」

と、私は全部買えるわけがないが、彼らが作り出す「新しい」かつ、長く使える時計と出会うことを期待したい。MING、まだ若いブランドだが、これまで縁があってたびたび目にしてきたが、自分はようやく彼らの感性に「追いついた」と感じている。日本でもユーザーが増えれば自分としてもうれしい。無論、今のところ日本語サポートはないので、何かお手伝いできることがあれば遠慮なく言ってほしい。WMOはオーナーによるオーナーのためのウェブサイトである。

MINGのHP
https://ming.watch/