モリッツ・グロスマン 初のワールドタイマー 「ユニバーサルツアィト」のキャリバー100.7を推測する

 By : CC Fan


モリッツ・グロスマンが発表した初のワールドタイム機能搭載タイムピース、「ユニバーサルツァイト」




ワールドタイムというと、いわゆるルイ・コティエ式と呼ばれる24時間リングと都市名(または北極からの方位図)を組み合わせたものが思い浮かべられますが、表示する都市を6つに絞る代わりにより直感的かつ読み取りやすいジャンピングアワー表示を実現しました。

日本東京(UTC+9)、シンガポール(UTC+8)、アラブ首長国連邦ドバイ(UTC+4)、南アフリカケープタウン(UTC+2)、ブラジルリオデジャネイロ(UTC-3)、アメリカアリゾナ州フェニックス(UTC-7)で、時差はそれなりに均一にばらけており、UTC±0のロンドンをセンターに30度ごとの経度線(ほぼ2時間の時差に相当)も引いてあるので中間時刻を求めることもそこまで難しくはないでしょう。

中央のローカルタイム表示が1時間進んで正時になるごとに6つの小窓の表示がジャンプし1時間ずつ進む24時間表示になっています。

仕組みを「推測」すればするほど、「この手があったか!」というシンプルさなので、いつものパワポで見ていきましょう。


ぱっと見の複雑さに対し、仕組みは極めてシンプルです。
対比が取れるように虹色の補助線と各開口部の位置を図に書き入れ、横に並べました。

各都市の時刻を表示する小窓は6つありますが、窓間での時差は一定であるため、個別に表示を用意する必要はなく、以前レポートしたGMT同様の一つのディスクに、窓に重なった時に正立するような24時間の数字表示を同心円状に「散らせ」ばよい、という事が分かります。

ただし同心円状に時刻を散らしてあるだけでは6つの時刻を同心円状に個別に書くためのスペースが足りないため、もう一つの工夫が施されています。



それがこれです。

一周360度を24時間で分割すると1時間の表示に使える角度は15度になりますが、内側から1・3・5番目と2・4・6番目を15度の半分である7.5度分ずらすことにより、より均一な配置にできるようにしています。
特に外周の4-6番目は完全に表示が重なっており、7.5度ずらす方法を使わなければ数字がより小さくなってしまうと考えられます。
この方法では軌道がオーバーラップしているため、切り替わる時に隣の表示が一瞬見えることになりますが、ジャンピング表示のためほとんど気にならないと考えられます。


ジャンピングワールドタイムはデイトのようなトルク蓄積型レバーによって一瞬だけ弾いて進める方式とみられ、正時に「弾く」一瞬以外はディスクとメインの時分針が噛みあわないため、デイトと同様、別リュウズによる修正とメインの時分針からの送りがぶつかることがほぼ起きないという安全性に繋がります。

GMTやデイトでは10時位置のリュウズもメインのリュウズ同様引き出して合わせる方式でしたが、ユニバーサルツァイトでは新たにプッシュ式が採用されました。
見てみましょう。



10時位置のリュウズは無限に回るのではなく、センターのニュートラルポジションから±90度だけ回る構造になっており、突き当たるまで回すとリュウズに取り付けられた部品が「進む」か「戻す」のどちらかのレバーに噛みあいます。

その状態でリュウズを押すとレバーが押され、レバー先端のラチェットが星車を1時間分動かすことによって時差の修正を行うことができます。
「進む」と「戻す」では星車の動く方向が逆になり、両方向に修正することができます。

操作後はリュウズを中心付近のニュートラルポジションに戻しておけば押してもレバーに噛みあわないため、押したとしても空振りするだけで何も起きず、誤動作を防止することができます。



リュウズ先端にかかれたマークの尖っている方を時計回りを指す方向に回して押すと「進み」、逆向きにすると「戻り」になるようになっていることが分かります。
直感的なうえ、引き出し操作が無い分より安全性も高まっている方式と考えられます。



GMTやデイトはスモールセコンドでしたが、時差ディスクがムーブメントの文字盤側を塞いでいるユニバーサルツァイトではスモールセコンドは不可能であり、セントラルセコンドと同様の三番車伝え車によるセンターセコンドを採用されています。

「同じこと」を実現できるならシンプルな方が良い、というのが私の信条ですが、これはまさにシンプルイズベストというアイディアの勝利だと思います。
ちょっと大きいのが日本的にはどうか?はありますが、実機は見てみたい!

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