モリッツ・グロスマン 初の角型専用ムーブメント 102.3の詳細レポート + アトゥムGMTの100.8
By : CC Fanすでに編集長から速報とイベントレポートが掲載された、モリッツ・グロスマン(Moritz Grossmann)初となる角型時計となるコーナーストーン(Cornerstone)、日本からのリクエストで作られたというだけあり、適度なサイズ感と薄さに拘った作品です。
これを実現しているのがブランドとしては初となる角型専用ムーブメント102.3です。
先に完成した時計としてのサイズを決めてからムーブメントを設計したそうで、実にピッタリと収まっています。
型番からもわかるように、小型・薄型ライン用の21,600振動/秒のムーブメントの系譜です。
テンワは共通ながら、ヒゲ持ちに新しい機構を採用、また香箱を大型化することで現時点で約60時間、最終目標として約72時間のパワーリザーブを実現し、より"実用的"な性能を目指すそうです。
型番的にひとつ前の102.2では約48時間のパワーリザーブで、個人的には充分ではないかと思いますが、短いと感じる方もいたのではないかと思います。
かつ、ほかの102シリーズ同様の薄型設計で装着感を向上させています。
編集長の記事にもありましたが、設計目標。
"最大限のパワーリザーブ"のために、今までの102シリーズよりも大きな香箱を収めています、この香箱に直接噛み合う2番車による"中央に時分針"というのは、いろいろ推測するとなるほど…とは思いますが、多くは語りません。
それ以降の輪列は"6時位置にスモールセコンド"を設けるためにユニークな設計になっており、ここが一番見どころと言えると思います。
角型ではありますが、ジャーマンウォッチの文法に従った一枚プレートによるブリッジ、そしてグロスマンのほかのムーブと同様にプレートは支柱(ピラー)で支えられる構造になっており、整備性がよい構造です。
各部のディティールも耐久性を最優先するグロスマンらしい堅牢な作り。
特徴として、厚みを押さえるために4番車がテンワと重ならないようにレイアウトされています。
通常であればこの図の向かって左下にテンワが置かれ、そこへ到達するように輪列がレイアウトされます。
しかし4番車(1分で1周=スモールセコンド)を6時位置に置くと、テンワと4番車が重なってしまい、どちらを上にするにしても厚みを必要としてしまう問題があります。
102.3では重ならないようにするために4番車をずらし、その代わりにスモールセコンドは3番車に噛み合った別のピニオンで動かすインダイレクト(間接)スモールセコンドとすることで、重なりを減らし、厚みを押さえています。
2番車はピニオンが下に凸、3番車は上、4番車は下と交互にすることで同じ高さに複数の歯車を通し厚みを押さえています。
テンワの近くに見えるピニオンがインダイレクト駆動用のピニオンで、3番車に噛み合っています。
角型専用ムーブメントというだけでも珍しいですが、インダイレクト駆動のスモールセコンドという組み合わせは更に珍しいそうです。
このピニオンにはトルクがかからないため、バックラッシ(歯車の遊び)でスモールセコンドがガタついてしまわないようにブレーキレバーで抵抗をかけ、ガタつきを防止します。
上面からの図ではテンワとの距離がギリギリに見えますが、斜めから見れば充分なクリアランスが設けられていることがわかります。
このレイアウトのもう一つのメリットとして、リュウズ周りとテンワの距離が近くなることでストップセコンドの機構をコンパクトにすることができるという事があげられます。
グロスマンはもともと、特徴的なテンワの外周ではなく軸部分を押さえるブレーキ方式ですが、スプリング状に成形されたレバーでさらにマイルドに止めるようになったそうです。
こうやって見ると、香箱の大きさがわかります。
香箱は上下のルビーで支持される、ジュエルド・バレル。
イマイチ仕組みをちゃんと理解していませんでしたが、断面図で説明いただき一目瞭然でした。
本来の香箱芯をパイプ状(水色の部品)にし、スペースが空いた角穴車中心に設置したルビーと地板のルビーで香箱の中心の軸を保持することで香箱は軸で支えられている状態になり、香箱と地板の間を浮かせることで摩擦が発生しなくなります。
これにより、香箱の出力が地板との摩擦でロスすることなく、2番車に効率よく伝わります。
また、地板と香箱の間の摩擦が無いという事は摩耗も発生せず、耐久性も有利でしょう。
ドバイで発表されたGMTのムーブメント100.8についても少しだけ。
基本的にはデイトの100.3(番号がずいぶん飛んだ!?)と同じ考え方で、トルク蓄積型のデイト送り機構の代わりに日の裏車から連動してリングを回すGMT機構をつけたものと理解すればよさそうです。
デイトと同様、10時位置のリュウズで追加機能(デイト/GMTのセカンドタイムゾーン)を設定するという1機能・1リュウズと言える設計です。
星形歯車とスプリングを使ったトルク逆流防止クラッチがついており、セカンドタイムゾーン設定のトルクはメインタイムゾーンへは逆流しません。
このクラッチはインデックスも兼ねており、1時間刻みで時差を設定することができます。
デイト同様、レバーによる同時操作防止機能を備えており、片方のリュウズを引いている状態ではもう片方は引くことができなくなっています。
この機能は無くても問題なさそうですが、念には念を入れているという事でしょう。
"グロスマンらしい"工夫に満ちたムーブメント、非常に興味深いです。
関連 Web Site (メーカー・代理店)
モリッツ・グロスマン・ジャパン株式会社
www.grossmann-uhren.com
モリッツ・グロスマン・ブティック
〒112-0002東京都文京区小石川4-15-9
Tel.: (03) 5615 8185 Fax: (03) 5615 8186
これを実現しているのがブランドとしては初となる角型専用ムーブメント102.3です。
先に完成した時計としてのサイズを決めてからムーブメントを設計したそうで、実にピッタリと収まっています。
型番からもわかるように、小型・薄型ライン用の21,600振動/秒のムーブメントの系譜です。
テンワは共通ながら、ヒゲ持ちに新しい機構を採用、また香箱を大型化することで現時点で約60時間、最終目標として約72時間のパワーリザーブを実現し、より"実用的"な性能を目指すそうです。
型番的にひとつ前の102.2では約48時間のパワーリザーブで、個人的には充分ではないかと思いますが、短いと感じる方もいたのではないかと思います。
かつ、ほかの102シリーズ同様の薄型設計で装着感を向上させています。
編集長の記事にもありましたが、設計目標。
"最大限のパワーリザーブ"のために、今までの102シリーズよりも大きな香箱を収めています、この香箱に直接噛み合う2番車による"中央に時分針"というのは、いろいろ推測するとなるほど…とは思いますが、多くは語りません。
それ以降の輪列は"6時位置にスモールセコンド"を設けるためにユニークな設計になっており、ここが一番見どころと言えると思います。
角型ではありますが、ジャーマンウォッチの文法に従った一枚プレートによるブリッジ、そしてグロスマンのほかのムーブと同様にプレートは支柱(ピラー)で支えられる構造になっており、整備性がよい構造です。
各部のディティールも耐久性を最優先するグロスマンらしい堅牢な作り。
特徴として、厚みを押さえるために4番車がテンワと重ならないようにレイアウトされています。
通常であればこの図の向かって左下にテンワが置かれ、そこへ到達するように輪列がレイアウトされます。
しかし4番車(1分で1周=スモールセコンド)を6時位置に置くと、テンワと4番車が重なってしまい、どちらを上にするにしても厚みを必要としてしまう問題があります。
102.3では重ならないようにするために4番車をずらし、その代わりにスモールセコンドは3番車に噛み合った別のピニオンで動かすインダイレクト(間接)スモールセコンドとすることで、重なりを減らし、厚みを押さえています。
2番車はピニオンが下に凸、3番車は上、4番車は下と交互にすることで同じ高さに複数の歯車を通し厚みを押さえています。
テンワの近くに見えるピニオンがインダイレクト駆動用のピニオンで、3番車に噛み合っています。
角型専用ムーブメントというだけでも珍しいですが、インダイレクト駆動のスモールセコンドという組み合わせは更に珍しいそうです。
このピニオンにはトルクがかからないため、バックラッシ(歯車の遊び)でスモールセコンドがガタついてしまわないようにブレーキレバーで抵抗をかけ、ガタつきを防止します。
上面からの図ではテンワとの距離がギリギリに見えますが、斜めから見れば充分なクリアランスが設けられていることがわかります。
このレイアウトのもう一つのメリットとして、リュウズ周りとテンワの距離が近くなることでストップセコンドの機構をコンパクトにすることができるという事があげられます。
グロスマンはもともと、特徴的なテンワの外周ではなく軸部分を押さえるブレーキ方式ですが、スプリング状に成形されたレバーでさらにマイルドに止めるようになったそうです。
こうやって見ると、香箱の大きさがわかります。
香箱は上下のルビーで支持される、ジュエルド・バレル。
イマイチ仕組みをちゃんと理解していませんでしたが、断面図で説明いただき一目瞭然でした。
本来の香箱芯をパイプ状(水色の部品)にし、スペースが空いた角穴車中心に設置したルビーと地板のルビーで香箱の中心の軸を保持することで香箱は軸で支えられている状態になり、香箱と地板の間を浮かせることで摩擦が発生しなくなります。
これにより、香箱の出力が地板との摩擦でロスすることなく、2番車に効率よく伝わります。
また、地板と香箱の間の摩擦が無いという事は摩耗も発生せず、耐久性も有利でしょう。
ドバイで発表されたGMTのムーブメント100.8についても少しだけ。
基本的にはデイトの100.3(番号がずいぶん飛んだ!?)と同じ考え方で、トルク蓄積型のデイト送り機構の代わりに日の裏車から連動してリングを回すGMT機構をつけたものと理解すればよさそうです。
デイトと同様、10時位置のリュウズで追加機能(デイト/GMTのセカンドタイムゾーン)を設定するという1機能・1リュウズと言える設計です。
星形歯車とスプリングを使ったトルク逆流防止クラッチがついており、セカンドタイムゾーン設定のトルクはメインタイムゾーンへは逆流しません。
このクラッチはインデックスも兼ねており、1時間刻みで時差を設定することができます。
デイト同様、レバーによる同時操作防止機能を備えており、片方のリュウズを引いている状態ではもう片方は引くことができなくなっています。
この機能は無くても問題なさそうですが、念には念を入れているという事でしょう。
"グロスマンらしい"工夫に満ちたムーブメント、非常に興味深いです。
関連 Web Site (メーカー・代理店)
モリッツ・グロスマン・ジャパン株式会社
www.grossmann-uhren.com
モリッツ・グロスマン・ブティック
〒112-0002東京都文京区小石川4-15-9
Tel.: (03) 5615 8185 Fax: (03) 5615 8186
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