モリッツ・グロスマン 2017新作展示~後編

 By : KITAMURA(a-ls)

さて、前稿(参照→ https://watch-media-online.com/blogs/679/  )から引き続き、モリッツ・グロスマンの新作展示会からのレポートをお送りする。

予告通り、今回テフヌート・ラインから。

まずは「テフヌート・ツイスト」。この作品は、通常のリュウズ巻き上げに替わる、まったく新しい巻き上げ機構を備えた新作である。


●モデルは「クラッシック・ジェント」

たとえば女性のネイルなど、リュウズを使う巻き上げは爪に対して決して優しくない。そこに着目したのはさすが女性CEOのクリスティーネ・フッター氏が率いるモリッツ・グロスマンらしいが、その解決策は実にシンプルなものだった。
「ストラップを数回ひねることで手軽に時計を巻き上げることはできないか」ーーモリッツ・グロスマンが考えついた革新的な巻き上げ法、それが、6時位置に組み込まれているグロスマン製ストラップ式巻き上げ機構だった。


●6時側のベルトを数回まわすだけで巻き上げが完了する。モデルは「クラシック」

この発想を現実化するためキャリバー102.0は大きく見直され、ラグの形状や4時位置に設定されたリュウズなど、テフヌート自体の外観にも手が加えられた。かくして、優しい設計思想と機械的独創性という究極のマリアージュは、その印象的な意匠に込められることになった。

とはいえども、テフヌート・ツイストは、レディースに限定されたモデルではない。ユニセックスなコンセプトによる「クラシック」、「クラシック・ジェント」、「ファンシー」という全3タイプのヴァリエーションが発表されており、さらにそれぞれWG、RGのケースがセレクト可能だ。


以下、機能等の詳細はグロスマンのカタログから抜粋(青字部分)する。


【グロスマン製ストラップ式巻き上げ機構】
「手首を返すように巻き上げる」というシンプルなコンセプトを実現するには、緻密な機構が必要でした。
主ゼンマイを巻き上げるための動力源は、6時位置のケース内側にある巻き真です。ムーブメント側から見える輪列を介して、動力は巻き真から香箱に伝えられます。持ちやすいストラップを約90度回転させて巻き上げれば、リュウズよりも大きなトルクが生まれます。この動力はかさ歯車を介して伝達されます。ツメは自由に動くため両方向に回すことができます。このように、テフヌート・ツイストは、時計を完全に巻き上げるにもストラップを数回ひねるだけです。



【設定用リュウズ】
ストラップ式巻き上げ機構のギア比は時刻合わせに適していないため、テフヌート・ツイストでは巻き上げと時刻設定の機能は分けられています。針の調整は従来通り、4時位置に配置された設定用リュウズでおこないます。リュウズを引き出すと、カンヌキによって小鉄車がツヅミ車に噛み合わさり、ストップセコンド機能が作動します。地板にしっかりと固定されたバネが振り座を抑えることで、ポリッシュ仕上げのテンワの表面に接触したり、緻密にバランスを取られたチラネジの調整を崩すことなく、ムーブメントを止めることが可能です。針合わせが済んだ後に設定用リュウズを押し戻すと、ムーブメントが再び動き始めます。


●ファンシー(左)とクラシック(右)

【ケース】
テフヌート・ツイストはこのシリーズの繊細なデザインを受け継ぎ、優美な魅力が目を引きます。そのベゼルと個性的なラグは、釣り合いの取れたプロポーションで目を楽しませてくれます。
7時位置のスモールセコンドや4時位置の設定用リュウズが、わずかに視線をストラップ式巻き上げ部分へと誘導します。
ストラップが手首にしっくりと馴染むよう、巻き真とベルト固定部を22度下方に傾けました。仕様に応じてバネ棒の先端はゴールドのネジか、リュウズと同じ輝く貴石のカボションが施され、テフヌート・ツイストは真の時計作りの芸術性を体現します。




クラシック・ジェント
テフヌート・ツイスト「クラシック・ジェント」は、装飾をそぎ落とし本質を突き詰めました。ほっそりしたケースにはローズゴールドとホワイトゴールドの仕様があり、アリゲーターストラップが組み合わせられます。持ちやすいストラップは革新的な巻き上げ機構を操作する楽しみを与えてくれます。

バネ棒の両端はケース素材と同じゴールドのネジで留められています。鮮やかコントラストと完璧な視認性を兼ね備えたダイヤルは、クラシカルな精密機器を彷彿させます。シルバーダイヤルの表面は時分秒を示す精密な表示を浮きだたせます。手作業で作られる針はインデックスに合わせブラウンバイオレットに焼き戻されています。このカラーは、テフヌート・シリーズのためにデザインされた自社製針は、中央の膨らみから針の目に向かって細くなり、針の先端は繊細に研ぎ澄まされた木の葉型をしています。
この繊細さでモリッツ・グロスマンは真の時計作りにおける芸術性を表現しています。


クラシック
テフヌート・ツイスト「クラシック」は、外観の美しさと優れた機能性がバランスよく融合しています。ジュエリーウォッチと同様に、この仕様にもローズゴールドとホワイトゴールドのケース・バリエーションがあり、アリゲーターストラップが装着されます。設定用リュウズとバネ棒の先端には貴石のカボションがほどこされています。


文字盤の中央部分からは凹凸のあるギョーシェ模様が広がり、一段上がったアワーリングには立体感のあるインデックスと精密な分目盛りが調和の取れた対照をなしています。7時位置のスモールセコンドは特徴的なコントラストを生み出します。分と秒は、完全な目盛りを備えているため、秒単位での精確な視認性を確保します。エレガントなアラビア数字は、自社製針の独自のブラウンバイオレットの色味に合わせられ、クラシカルな時計に個性を添えます。


ファンシー
表情豊かなジュエリーウォッチ、テフヌート・ツイスト「ファンシー」には2種類の仕様があります。ローズゴールドとホワイトゴールドのケースにはアリゲーターストラップが組み合わせられます。スリムなシルエットのラグは内側に傾斜しているため、ケースは華奢な手首にもぴったりとフィットします。


シルバー無垢のダイヤルを縁取るのは、白のブリリアントカット・ダイヤモンドです。スモールセコンドは、ブリリアントカット・ダイヤモンドに加え、虹色のマザーオブパールで装飾されます。放射線状のギョーシェ模様がオフセンターのスモールセコンドを囲み、その存在を際立たせています。ギョーシェ模様とと接する三日月形のマザーオブパールのダイヤルパーツは五つの立体感のあるローマンインデックスで彩られます。気品を漂わせる外観と、機能性に優れた独自のストラップ式巻き上げ機構を備えるテフヌート・ツイストは、格別のレディースウォッチと言えるでしょう。


テフヌート・ツイスト 仕様

ムーブメント:自社製キャリバー102.2、手巻き、5姿勢調整、部品数 200個
石数:19石(うち3個はネジ留め式ゴールドシャトンに使用)
脱進機:アンクル脱進機
調速機:質量ネジ4本および調節ネジ2本を装着した耐震軸受式グロスマン製テンプ、ニヴァロックス1ヒゲゼンマイ(ブレゲタイプ80番、ゲルステンベルガー案に基づく)を下方に設置
テンプ 直径:14.2 mm
振動数: 18,000振動/時
パワーリザーブ:完全巻き上げ状態から約72時間
機能:時、分、ストップセコンド機能搭載スモールセコンド
操作:リュウズ 18Kゴールド(時刻設定用)、回転式ストラップ(巻き上げ用)
ケースサイズ:直径: 36.0 mm、厚さ9.64 mm
ムーブメントサイズ:直径: 26.0 mm、厚さ: 4.2 mm

バージョン
ファンシー:Ref. MG-001232
ケース 18K ホワイトゴールド
ダイヤル マザーオブパール、シルバー
針 手仕上げ、ブラウンヴァイオレットに焼き戻したスチールバージョン

クラシック・ジェント:Ref. MG-001167
ケース 18K ローズゴールド
ダイヤル シルバー
針 手仕上げ、ブラウンヴァイオレットに焼き戻したスチールバージョン

クラシック・ジェント:Ref. MG-001231
ケース 18K ホワイトゴールド
ダイヤル シルバー
針 手仕上げ、ブラウンヴァイオレットに焼き戻したスチール

特徴
6時位置にある回転可能な留め具を用いたストラップ式巻上げ機構/かさ歯車と可動式ツメ付き歯車を用いた巻き上げ機構/鋸歯型コハゼ装置/スリッピングアタッチメント付き主ゼンマイ/7時位置のスモールセコンド/4時位置の時刻設定用リュウズ/質量ネジおよび調節ネジを装着した耐震軸受式テンプ/平ヒゲ/振り座と統合したテン真(ダブルローラなし)/微調整ネジ付きの緩急調整機構/5分の3プレート・支柱・個別の巻き上げ機構からなるプレート構造/表面処理をしない洋銀のフレーム基部/平型ネジ留め式の盛り上がったゴールドシャトン/リュウズ操作時の振り座のストップセコンド機能




続いては「テフヌート・スリーピング ビューティー」。



これは、シンガポール出身のデザイナー、マイケル・コーのデザインと、モリッツ・グロスマンのマニュファクチュールとがコラボレーションした、まさにアジアの感性とヨーロッパ技術との出会いから生まれた新しいジュエリー・ウォッチである。


1990年、弱冠18歳という史上最年少でダイヤモンド独創賞と若手デザイナー賞を受賞、その後、香港ダイヤモンドデザインアワード、ダイヤモンド国際デザインコンペティションアワードなど数々の賞を獲得し、シンガポールを拠点に宝石に情熱を傾ける一方で、画家・彫刻家としても名を知られるマイケル・コーが、スリーピング・ビューティでイメージしたのは、見る人を夢の世界、すなわち、謎に満ちた月の世界へと誘う神秘的ストーリーであったという。
文字盤のデザインから、さらにはケースのラグ足に至るまで、すべてが非対称であり、印象的なムーンのデザインの逆側はケース内側まで大きく食い込ん、実に立体的なインデックスが描かれている。


しかしその反対側、つまり月の"ダークサイド”となる3時側は、地球と月の関係と同じように、そのインデックスも見えないという大胆なデザインが施されている。


カタログ資料によると、この"眠り姫”のストーリーと、印象的な特徴である、ラグ、文字盤におけるアシンメトリーについて、次のように記述されている。

4つのピースからなるダイヤルは地球とその伴星を象徴しています。外側にあるローマン数字のインデックスの半分は、輝くギョーシェ模様で覆われています。月食部分にはベゼルに合わせ輝く宝石がセットされます。マイケル・コーはこの作品のハイライトとして、ダイヤルにメルヘンチックな月を描いたこのモデルを、夜の帳にちなんで「テフヌート・スリーピング ビューティー」と名付けました。

テフヌート・スリーピング ビューティーのケースは、左右非対称のダイヤル構造を実現するために、美しく改良されました。 ケースは、リュウズから9時位置に向かって高くなり、ラグはこの立体的なフォームから流れるようにして、柔らかい頂を形成します。右側がオープンのラグには、リュウズと同じように、アイオライトまたはガーネットのカボションがほどこされています。
べゼルには貴石が散りばめられ、ケース、ストラップ、ダイヤルの色の競演が繰り広げられます。ホワイトゴールドのケースには、白のブリリアントカット・ダイヤモンド、シャンパンカラーのブリリアントカット・ダイヤモンド、またはブルーサファイアがほどこされています。ローズゴールドのケースでは、白のブリリアントカット・ダイヤモンドによって輝くコントラストが生まれます。さりげなく輝くサテンのストラップは、ダイヤルに調和し、ジュエリーウォッチのフェミニンな気品を完成させます。

テフヌート・シリーズのためにデザインされた針は、表情豊かな時計のフェイスと優雅に調和しています。この特徴的な針は、中央の膨らみから針の目に向かって細くなり、針の先端は繊細に研ぎ澄まされた木の葉型をしています。テフヌート・スリーピングビューティーの時針は、個性的かつロマンティックな弓形で、開口部が設けられています。
針はマニュファクチュール工房で数多くの工程を経て手作業で仕上げられ、独特のブラウンヴァイオレットに焼き戻されます。このユニークな針は、時を刻むアクセサリーを華やかに飾り、夜が似合う女性やロマンティックな装いの女性の手首を麗しく引き立てます。


裏から見ると、3時側にラグのないこのデザインがより強調されて感じられるが、5分の3プレートという古典的なブリッジ構造を持つキャリバー102.0は、この作品用に多少の改良はあったとはいえ、グロスマン製精密調整ネジのついた段差式テンプ受けや、盛り上がったシャトン、個別に取り外し可能な巻き上げ機構、グロスマン製テンプなど、グロスマンらしいすべての要素が凝縮されている。




テフヌート・スリーピング・ビューティー 仕様

ムーブメント:自社製キャリバー102.0、手巻き、5姿勢調整
部品数:196個
石数:26石(うち3石はネジ留め式ゴールドシャトンに使用)
脱進機:アンクル脱進機
調速機:質量ネジ4本および調節ネジ2本を装着した耐震軸受式グロスマン製テンプ、ニヴァロックスヒゲゼンマイ
テンプ 直径:10.0 mm 
振動数:21600振動/時
パワーリザーブ:完全巻き上げ状態から約48時間
機能:時、分
操作:リュウズ、宝石付き18K ゴールド(巻き上げおよび時刻設定用)
ケースサイズ:直径36.0 mm、厚さ9,87/7,1 mm
ムーブメントサイズ:直径: 26.0 mm、厚さ: 3.45 mm
ケース:スリーピース、18Kゴールド
針:手仕上げ、ブラウンヴァイオレットに焼き戻したスチール
風防:片面反射防止加工のサファイアクリスタル
ストラップ:サテンストラップ、18Kゴールドのピンバックル

Ref. MG-001022
ケース:18K ローズゴールド、ベゼルに60個のホワイトダイヤモンド

ダイヤル:マザーオブパール、外周に62個のホワイトダイヤモンド
針:手仕上げ、ブラウンに焼き戻したスチール

Ref. MG-001023
ケース:18K ホワイトゴールド、ベゼルに60個のホワイトダイヤモンド

ダイヤル:マザーオブパール、外周に62個のホワイトダイヤモンド
針:手仕上げ、ブラウンに焼き戻したスチール

Ref. MG-001024
ケース:18K ホワイトゴールド、ベゼルに60個のブルーダイヤモンド

ダイヤル:マザーオブパール、外周に62個のブルーダイヤモンド
針:手仕上げ、ブラウンヴァイオレットに焼き戻したスチール


Ref. MG-001025
ケース:18K ホワイトゴールド、ベゼルに60個のイエローダイヤモンド

ダイヤル:マザーオブパール、外周に62個のイエローダイヤモンド
針:手仕上げ、ブラウンヴァイオレットに焼き戻したスチール



特徴
質量ネジ、調整ネジおよび平ヒゲのついた耐震軸受のテンプ、振り石はテンワに統合/平ヒゲ/振り座と統合したテン真/微調整ネジによる緩急調整機構/5分の3プレート・支柱・個別に取り外し可能な巻き上げ機構/表面加工をしない洋
銀のフレーム基部/平ネジ留め式の盛り上がったゴールドシャトン/グラスヒュッテ式コハゼ装置(改良型戻し機能付き)/両側軸受けの香箱(エネルギーバランスを最適化)/ARCAP合金の輪列/18歯のガンギ車を搭載した自社設計脱進機
各88本の限定。




その他、実機紹介があったのは、本ブログでもバーゼル速報として一度紹介しているが、(参照→ https://watch-media-online.com/blogs/555/
「アトゥム・デイト」だ。


この時計の特筆点はそのデイトの表示法。ダイヤル外周に刻まれたデイトを、外周上のマーカーが囲って表示する、つまり、上の画像だと「27日」ということになるわけだ。


その仕組みも惜しげなく公開してくれる。

WG(画像下)とRG(画像上)の2モデルが発表されている。



続いても同じくアトゥム・シリーズから、特に「プリマヴェラ」というシリーズ名を与えられたアトゥムのカラー・ダイヤル・バリエーションである。

これは"シャンパンホワイト”と呼ばれる気品の漂うダイヤル。


同じく“バーガンディ”ダイヤル。

華やかな色合いの表に対し、裏は磨き上げられた機械が凝縮したアトゥム。


全部で4種のバリエーションがある。



"シャンパンホワイト”のみRGとWGケースがあり、"ライトブルー”ダイヤル(下画像の中央)と“バーガンディ”はWGケースのみ。


41mmという、やや大ぶりなアトゥムだが、ここまでシックな風合いのダイヤルがセットされるとレディース・ウォッチとしても充分に華やかで、ベルトの装いによる"遊び”も楽しめそうだ。


以上が、針の手仕上げイベントと同時に行われた、バーゼルワールド2017新作のプレゼンテーションで紹介されたモデルだが、これ以外にも、発売地域が限られたモデルなども存在するので、ブランドのお許しがあれば(笑)、順次掲載していきたい。



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