ヨウスケ セキグチの関口陽介氏来日取材~「プリムヴェール」のシャンルベエナメル文字盤バージョン・レポートとともに

 By : CC Fan

「個人的な思い入れ」から公平な視点ではは書けない…という事で毎回「深夜のラブレター」をお送りしているスイス ル・ロックル在住の時計師、関口陽介氏。

ジュネーブでもお話させていただいたときに、販売とプロモーションを務める小柳時計店の小柳さんから「7月に夏休みを兼ねてメディアを巡るキャラバンを行う」と伺っており、今回はそのトリとしてWATCH MEDIA ONLINEの取材で久々にお会いさせていただけました。
ざっくばらんに色々伺えたのでレポートします。



トリなのでご飯も兼ねて焼き鳥屋さん(トリだけに…?)にてお会いすることに。
関口さんはあんまりお酒が強くないので、お会いする時は大体コーラになります。

プリムヴェールはシャンルベエナメル文字盤のバージョンを持ち込まれました。



写真ではわかりにくいかもしれませんが、シャンルベ技法なので、スモールセコンドサブダイヤルの境界面に金属が見えています。

現代的な「エナメル文字盤」ではベースとなる盤部分だけエナメル技法で作り、インデックスなどはタコ印刷でインクを印刷したものも多いですが、これはガラス質のインデックスを載せた後に焼成させる昔ながらの技法で作っているとのこと。



エナメルっぽい梨地のテクスチャで光が当たった時に光の境界が優しくボケます。
難易度の高いブラックエナメルは地元のサプライヤーの手によるもの、文字盤のレイアウトも洗練されました。



ムーブメントもかなり最終仕様に近いものになっているようです。

現在の進捗を伺ったところ、「チーム関口」による何回かの試作と設計図面のアップデートを経て、エボーシュ(部品)製造が完了したそうで、ここからは関口さんがエボーシュを仕上げて調整し、組み上げるそうです。
おかげさまで?2022年と2023年の受注分は全て行き先が決まっているとのことで、目下のところはこの組立に集中するそう。

先程、「最終仕様」という言葉を使いましたが、これは微妙に間違っていて、結局は関口さんが納得したものになるか、が完成の基準であり納得できないものは出したくないそうです。
ここはオーナーの理解もあるそうで、良かったと思います。



ムーブメントの仕上げは過度に装飾的ではなく、質実剛健なル・ロックルやヌーシャテルのスタイルを踏襲。



大きいリュウズはユーザーの巻きやすさを重視しています。



元々が関口さんが「腕化」し、毎日使っていたヤーゲンセンの懐中時計からスタートした意匠はやはり「毎日使う普通の時計」を目指していると感じます。

関口さんも「手に入れた直後は高揚感も手伝って良い時計と思ってもらえるでしょう、その後、1週間、1ヵ月、1年…と経ったとき、ふとした瞬間に改めて変わらず良い時計なんだと感じていただれば、それが一番嬉しい」と語っています。
個人的には毎日使って欲しい、と思える時計です。

「普通の時計」と言うには凄すぎる、と言うのは重々わかっているのですが、一番感じたことをストレートに表しているのはこの言い方になるな…と。

メンテナンスもできる限り関口さん本人がやりたい、とは考えているそうですが、まだ未知数の所もあり、追ってお話を伺えればと思います。

去年末同様、最終的にはかける言葉は「頑張ってください!」になりますかね…



おまけ1:
同席した小柳さんはもはやレジェンドとなったMIHウォッチをつけていました。
今回のプリムヴェールは関口さんはもちろんですが、小柳さんの長年のサポートもあってこそ、とは感じます。



おまけ2:
止まりましたわ、ガハハの精神でカンタロスを持ち込みました。
クラーレ社のアレコレを聞いていて、ジュネーブで「ギリギリでしたネ」だと持ったら結局止まる、と言うね。
一瞬、「持って行ってもらおうかな?」という考えも浮かびましたが、自分で持って行くことに。

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