ジャガー・ルクルト以外のレベルソ  by k.hillfield

 By : Guest Blog


 ● k.hillfieldさんから、ゲストブログをご投稿いただきました。



今日、角型ウォッチの王道と言えば、ジャガー・ルクルトの「レベルソ」がその代表例でしょう。
角型のシェイプの美しさに加え、本体が反転するという機構は、メカの持つロマンを感じさせてくれるものです。

一般的に「レベルソ」と言うとジャガー・ルクルト社のものが有名ですが、実はジャガー・ルクルト以外でも「レベルソ」と同機構の時計が作られている時期がありました。

本記事において、筆者が見つけたジャガー・ルクルト以外の「レベルソ(=本体が反転する機構を持つ時計)」についてご紹介させていただこうと思います。

ジャガー・ルクルトのレベルソは1930年代にオリジナルが作られましたが、その後、1950年代から1970年代は姿を消します。そして1980年代に再び生産されるようになりました。

 

ファーストモデル(1931年)

引用元:ジャガー・ルクルト公式ホームページより
http://www.jaeger-lecoultre.com/jp/jp/watches/story-of/story-of-reverso.html?JLCclick=CollectionHeader


昔、フランスの学校で経営戦略を学んでいる時に、講師から時計業界における特許更新戦略の話が出て、その例としてレベルソがあげられていたと記憶しております。
つまり、ジャガー・ルクルトは1980年代の再生産以来、その独特な反転機構の特許を更新し続けているため、2017年現在においてはジャガー・ルクルト以外の会社からはレベルソが発表されていないと考えられます。
しかし、1980年代以前はジャガー・ルクルト以外の有名ブランドにおいてもレベルソが作られておりました。その例として、例えばカルティエがあげられます。カルティエのレベルソは珍しいですが、たまに市場で見かけることができます。また本数は非常に少ないですが、パテック・フィリップやヴァシュロン・コンスタンタンなどがあげられます。


(1)パテック・フィリップ

1930年代 (10本以下の本数が作られました。ジュネーブのパテック・フィリップミュージアムで実物が見られます。2016年12月パテック・フィリップミュージアムにて確認済)


引用元:パテック・フィリップミュージアムHPより
http://www.patekmuseum.com/EN/theWatch.asp?id=42&themeId=07&floorId=0

また、過去にクリスティーズに出品されたこともあります。


2010年5月のオークションで、エスティメイト800,000 CHF~120,000 CHF を上回る147,000CHFで落札されました。落札価格は日本円に換算して、約11,760,000円(2010年5月の為替相場より1CHF=80円で計算)でした。

引用元:Christie’sより
http://www.christies.com/lotfinder/Lot/patek-philippe-a-fine-and-extremely-rare-5309262-details.aspx


(2)ヴァシュロン・コンスタンタン

1930年代 (スティールモデルで3本作られたようです。ヴァシュロン・コンスタンタンのコレクターフォーラムより)

 引用元:The Hour Loungeより
http://www.thehourlounge.com/en/vacheron-constantin-discussions/vacheron-constantin-reverso-575155

 

 (3)ファーブル・ルーバ

1940年代 (スイス、ファーブル・ルーバ本社にて2017年7月確認済)
ファーブル・ルーバ本社の金庫内に保管されています。

著者による撮影

 

(4)ハミルトン

1930年代から40年代 (ケアーズ代表の川瀬友和氏の著書「オンリー・アンティークス」にも記載されています)
厳密に言うとこのモデルは「オーティス」というモデル名で、あまりにもレベルソと似ていたため、ジャガー・ルクルトがハミルトンを特許侵害で訴え、生産中止となったようです。 

 

(5)カルティエ

1960年代から70年代 (「タンク」がベースのレベルソ。レアですが、稀に市場で見かけます)

 

2017年9月4日現在、ケアーズの表参道ヒルズ店にてレディースのモデルが店頭に並んでいるようです。

 引用元:ケアーズ(画像掲載許可確認済)
http://www.antiquewatch-carese.com/stocklist/l_watch/cartier/ohills8818.html

 

(6)イブ・サン=ローラン

1970年代 (おそらく限定モデル(レディース)です。ケアーズの表参道ヒルズ店の店頭にて現物確認済。2016年8月)

 

引用元:ケアーズ(画像掲載許可確認済)
http://www.antiquewatch-carese.com/stocklist/l_watch/other/ohills8458.html

  

(7)オメガ

1970年代から1980年代 (モデル名: エクイノックス。クオーツムーブメントであり、流通量は比較的多いです)

画像は下記でごらんください。
Picture:https://omegaforums.net/threads/omega-equinoxe-watch.22708/"

クオーツムーブメント、年代等から、このカテゴリーに該当するのか迷いましたが、「オメガのレベルソ」という印象が強かったので、レベルソの一種として記載しました。 

 

1980年代以降は先述のようにジャガー・ルクルトが(おそらく)特許を更新し続けているため、各社、レベルソとは違った反転機構を発表することとなります。

 

(1)アントワーヌ・プレジウソ: B-SIDE

現行モデル。特許を有する反転機構。
2017年のバーゼルワールドにて、フローリオン・プレジウソ氏より見せていただきました。

著者による撮影

神の手を持つといわれたアントワーヌ・プレジウソ氏を父にもつフローリオン・プレジウソ氏もまた、素晴らしい複雑時計をお作りになられています。

 
(2)カルティエ: バスキュラント

オリジナルは1930年代に作られたようです。ベースは「タンク」です。
2000年前後まで、クオーツムーブメントのモデルを中心に発売されていましたが、現在は廃盤となりました。

 

 引用元:カルティエ公式ホームページ(ドイツ語)よりhttp://www.cartier.de/de/kollektionen/uhren/herrenuhren/tank/tank/1933-tank-basculante-472.html

 

(3)タグ・ホイヤー: モナコ シックスティーナイン

2000年代から発売されたモデル。ベースは「モナコ」です。アナログ表示は手巻き、もしくは自動巻きです。

 引用元:タグ・ホイヤー公式ホームページ(英語)より
https://www.tagheuer.com/en/history/2003-monaco-sixty-nine

 

ご覧いただきましたようにジャガー・ルクルト以外のレベルソは非常に数が少なく、珍しいものが多いです。

もし上記に掲載させていただいたような時計に出会うことがございましたら、それはとても幸運なこともしれません。

もちろん、ジャガー・ルクルトのレベルソにも珍しいものがたくさんあります。

例えば、ジャイロなどの複雑系は非常に貴重であると同時に、レベルソの新しい歴史と言えるのではないでしょうか。