SIHH2018 ヴティライネン 217QRS レトログラードデイト

 By : CC Fan
時計師のカリ・ヴティライネン(Kari Voutilainen)氏が率いる独立メゾンVOUTILAINEN(ヴティライネン)の新作、ヴァントゥイット(Vingt-8)が進化した217QRS レトログラードデイトを拝見いたしました。

ヴァントゥイットはヴティライネンが開発したナチュラルエスケープメントタイプの脱進機を搭載した手巻きムーブメントを搭載しています。
シンプルな三針スモールセコンドからスタートし、地板を再設計して追加輪列を加えることで様々なバリエーションを追加してきました。
ベースとなるムーブメント設計は一緒とはいえ、部品の設計などもやり直しており、機能を追加するごとに再設計しているようなものだそうです。

新作はレトログラード表示のポインターデイトでした!



ちょっと被写界深度が浅めでした…
ほぼ240度の文字盤全域を使ったポインターデイトのレトログラードデイトです。
レトログラードは一般的に瞬間的に動く瞬転動作ですが、この作品ではあえて数秒間かけてゆっくり戻るように設計したそうです。
この動作はクロノのリセットのように、ハートカムとルビー付きのレバーで実現しているそうですが、抑える力を最適化することで速度を制限しているようです。





ホワイトのほか、ブルー文字盤の作品もあり、どちらも文字盤もヴティライネン氏が経営する文字盤工房、コンブレマイン(Comblémine)が製作した素晴らしいギロッシェのダイヤルを備えます。
また、オーナーの希望を叶えるユニークピースの製作も積極的に行っているそうです。



ムーブメント側から見るとリュウズが少し浮いているのが伝わりますでしょうか?
これはリュウズがポインターデイトの修正用プッシャーを兼ねているためで、押し込むことで一日ごと日付を進めるられ、修正用のコレクターが要らない設計になっています。
実際に操作させていただきましたが、適切な感触に調整されており、とても操作しやすかったです。



ムーブメントは素晴らしいの一言です。
また、ケース径とムーブメントのマッチングも適切で、スカスカ感やケースが薄すぎて怖いという感じとは無縁です。

ケースの基本デザインは同じですが、今年のケースは各部の丸みを抑え、シャープな印象にしています。



左が今年のケース、右が今までのケースです。
ラグ部分がわかりやすいですが、丸みを抑えめにしています。



エッジはシャープながらきちんとしたRがつけられており、感触は極めてソフトです。



リストショット。
個人的には新しいケースのシャープな感じが好みです。

次は去年発表された哲学的なピース、ヴァントゥイット イソ(Vingt-8 ISO)の44mmケースバージョン。
お客さんからの要望で制作したユニークピースだそうです。



ただのケース違いではなく、イソに必要な稼働する文字盤リングの部分などを設計しなおし、地板も作り直した新型ムーブと言っていい作品だそうです。



基本コンポーネントは同じですが、ブリッジやプレートは新造です。

最後はノーマルなヴァントゥイットのギロッシェエナメル文字盤。
ギロッシェの上から釉薬をかけて焼結させています。



ギロッシェやエナメルな伝統的な技法に加え、新しい技法にもいろいろ挑戦しているそうです。
最近開発されたのはウェットサンドブラストという技法、サンドブラストを行うときに使用する砂を湿らせる(ウェット)ことにより、サンドブラストと同時に塗装を行うような技法だそうです。

最後に集合写真を…





ムーブメントの仕上げもケース・文字盤にあわせて変化をつけています。

ありがとうございました!

関連 Web Site

ヴティライネン 日本語サイト
http://www.voutilainen.jp/index.html

ヴティライネン 本国サイト
http://www.voutilainen.ch/