カンタロス帰還

 By : CC Fan
当サイトでも何回も記事を書かせていただいている、私が所有するクリストフ・クラーレ(Christophe Claret)のカンタロス(Kantharos)、何回も"里帰り"をする屈指の問題児ではありますが、いまだにコレクションの中で一番好きな時計です。
去年、根本的な色々な改善を行い、11月に帰ってくる予定ではありましたが、直前のテストで問題が発覚、延長となってしまいました。

今回、コメントし辛いはさておき、SIHHでクリストフ・クラーレのブースにて検品を行い、問題はなさそうなので帰ってくることが決定しました!
26日の金曜日にスイスから出荷されたので、来週中には手元に届くと思います。
今回は速報として、ブースでの様子をレポートします。

会期中の18日にクリストフ・クラーレのブース内の金庫に持ち込まれ、確認することができました。
"あなたのピースのために金庫を持ってきた"というのはクラーレのジョーク。



目下の課題だったクロノグラフ機構をチェックしています。
今までの経験で得た、"止まる癖"ともいうべき加速度のかけ方をしても大丈夫でした。
パワーリザーブの関係もありますが、まずは合格です。



ブース内で日本でのマーケティング、ブランドをどうしたいのか…みたいな話をしている間に何度かスタート・ストップ・リセットを繰り返しましたが問題はなさそう。



複雑なムーブメント。
最初の時から部品は入れ替えられ続けていますが、これはまだ同じムーブメントなんだろうか…と哲学的な問い(テセウスの船)が頭をよぎります。
地板が入れ替えられた時点で別のムーブメントなのかもしれません。

今回のSIHHで面白かったのは、A.ランゲ&ゾーネのトリプルスプリットとの比較。
トリプルスプリットは時・分・秒の積算計にそれぞれスプリット針を装備し、時単位のラップタイムを計測できる超複雑なクロノグラフですが、部品数は567個、石数は46石と発表されています。
対してカンタロスはコンスタントフォースと自動巻きがあるとははいえモノプッシャークロノグラフで558個、75石と一体何に使ってるんだという複雑さです。
実際にはその後も改善のために部品数は増減しているみたいなので、現在情報を問い合わせ中です。



今回は"おまけ"として、新品のベルトもつけてくれることになりました。
バックルと元のベルトは法律の問題で日本にあるため、日本で最終組み立てをして時計の形になります。

コンスタントフォースの改善策などは別に報告したいと思いますが、まずは帰ってくるだけで嬉しいです。
輸送もクリストフ・クラーレ社側に任せているため、いつもよりも手続きが煩雑ですが…

今回のプロジェクトに対する思いをクリストフ・クラーレ本人から聞きましたが、自らピースを装着して2週間ぐらい動作を確認し、前回NGを出したのも彼だそうです。
いつもなら試作時はともかく、修理では自らテストをするようなことはないそうなので、このプロジェクトにかける並々ならぬ情熱が伝わりました。
独りよがりかもしれませんが、アクセッサブルピースが全然アクセッサブルじゃないので何とかしたいというビジネス面以外にも、彼は作り手として純粋にこの作品が好きなんだと思います。

前回のように別のカンタロスは?と聞いたところ、今回は持ってきていないとのことで、ついに会場にすら連れてきてもらえなくなったそうです…
公的にはディスコンのDualtowですらあるのに…とは思いましたが、今回のプロジェクトがうまくいけば、"リブート"するということで期待です。



こちらはクラーレ氏が腕につけていた、"マトモ"なアクセッサブルピース、マエストロ(Maestro)のフルバケットタイプ。
うーむ…

関連 Web Site (メーカー・代理店)

CHRISTOPHE CLARET
http://www.christopheclaret.com/

Noble Styling Inc.
http://noblestyling.com/