ローマン・ゴティエ マスタークラス (ジュウ渓谷の伝統的なパ ーツの仕上げに関して) 参加レポート
By : CC Fanローマン ゴティエ(Romain Gauthier)のジュウ渓谷の伝統的なパ ーツの仕上げについて学び、実際に体験するマスタークラスに参加させていただきました。
伝統的な仕上げについては、WMO内の記事でも取り上げられています。
ブランド初のオープンイベントのために、代表のローマン・ゴティエ氏だけではなく、仕上げ部門のトップSlyvie Devaux氏が来日され、マスタークラスではDevaux氏が調整し、実際に工房で使われているのと同じ工具を使って面取りの工程を体験することができました。
まずは開会のあいさつ、右がおなじみローマン・ゴティエ氏、真ん中が仕上げ部門のトップSlyvie Devaux氏、左はスイスプライムブランズ代表、ルカ・オルドゥーニャ氏。
ローマン ゴティエは、様々な革新的な機構を生み出しつつも、仕上げについては手作業でしかできない美しさを追求しています。
例えば、回転するやすり(バフ仕上げ)であれば5分で終わるブリッジの面取りを手作業で行うと1日(8時間)かかってしまいますが、手作業でしか成しえない美しい曲面を描いた面取りを実現することができます。
この手作業による面取りの困難さを"身をもって知る"ことによって、より理解してほしい…というイベントです。
アクロバティックにノートPCを持ちながら説明するゴティエ氏、曰く、"時計作り"と言うと特に組み立てを行う時計師に注目が集まりがちだが、その前段階である部品製造や仕上げの工程にも目を向けて欲しいそうです。
そのために興味を持っている方に対して、来る者は拒まずの姿勢で見学を受け入れており、工房は普通に歩くと端から端まで1~2分の小さい建物ですが、見学の際には2時間かけてゆっくり説明をしていただけるとか。
是非伺ってみたいです。
面取りは4つの工程に分かれており、以下の工程をすべての面に対して行います。
机にセットされた簡易作業台と研磨用の冶具、ウォッチルーペ。
手前から、金やすり(平・丸)、番手の違うエメリーペーパーを巻き付けた棒、カットされたジャンシャンとダイヤモンドペースト。
今回、面取りを行う部品、HMSのブリッジだそうです。
ローマンゴティエの部品の中では比較的"容易"な形状だそうですが、それでも仕上げには1日(8時間)が必要だと。
この中で一番容易な凸になっている向かって右側の辺を面取りします。
最初は金やすりの作業です。
まずはお手本を…
"人間5軸加工機"(Human 5 axis)で、材料とやすりを協調させながら動かし、直線の面を滑らかな曲面にせよ…というミッションです。
なんとなく"スプライン曲線で繋ぐ"というイメージかなと思いました
曰く、最初なのに一番難しく、失敗してしまうと取り返しがつかない作業だそうです。
凸部分は平やすりをうまく動かして曲面を作ります。
市販のやすりを加工し、使いやすくしています。
ルーペは片目で見ますが、拡大していない方の目をつぶってしまうと筋肉が緊張して疲れてしまうため、"目は開けているけど注目していない"と言う状態にする必要があるそうです。
やすりをかけている最中の写真、これ以降作業に集中していてほとんど写真を撮れませんでした。
エメリーペーパーによる研磨のお手本。
やすりは縦に動かして削るのに対し、こちらは"色鉛筆で塗り絵を塗るように"横に動かすとのことでした。
エメリーペーパーの番手。
数字は研磨剤の粒子サイズで、Micはマイクロメートルを示しています。
実際の工程では5マイクロの後に3マイクロで仕上げるそうです。
研磨中は皆さん集中するので無言になり、研磨の音だけが心地よく響きます。
ゴティエ氏曰く、"研磨専門の工場があったとしたら、きっと凄く静かだろう"とのこと。
そしてジャンシャンによる研磨。
ジャンシャンはゴティエ氏が自ら採取したもので、今回のイベントのためにスイスから持ち込んだそうです。
ダイヤモンドペーストの細かさになると、もう音は聞こえなくなりますが、無心に研磨します。
というわけで結果を…
向かって右の辺が今回面取りを行った辺です。
如何でしょうか?
金やすりでやらかして一か所キズがついてしまい、それをリカバリーしようと四苦八苦しました。
面取り曲面とブリッジ表面の継ぎ目はガタガタになっていてもいけないし、段差が認識できてしまってもいけない、極めて難しいと感じました。
ただ、作業中は無心に金属との対話が楽しめたと思いますし、制限時間が無かったらすべての辺を仕上げてみたかった…
ゴティエさん、"オーナーが工房で特訓(1週間ぐらい?)を受けて仕上げたブリッジをタイムピースに組み込むサービス"とかどうでしょう?
ゴティエ氏、Devaux氏のチェックを受けた後は、修了証が発行されます。
ありがとうございます!
さて私の素人作業のレポートだけでもアレなので、会場にあった"お手本"を。
より複雑なブリッジ類。
向かって右が機械加工を終えた直後、向かって左が面取り作業後です。
全てロジカルワンの部品で、左からテンワブリッジ、香箱のブリッジ、チェーンのブリッジ、そして左下がチェーンです。
チェーンには極小のルビーがリンク部分にはめ込まれ、摩擦を低減しています。
ロジカルワンの拡大写真。
肉抜きされたブリッジの内側を面取りする手間は考えるだけで頭が痛くなりそうです。
思い返すと今回、時計はほとんど拝見していませんでした…
会場の様子を。
とても貴重な体験でした。
このような機会を設けてくださり、ありがとうございました。
ローマン・ゴティエ お問い合わせ先:
スイス・プライム・ブランズ 03-4360-8669
伝統的な仕上げについては、WMO内の記事でも取り上げられています。
ブランド初のオープンイベントのために、代表のローマン・ゴティエ氏だけではなく、仕上げ部門のトップSlyvie Devaux氏が来日され、マスタークラスではDevaux氏が調整し、実際に工房で使われているのと同じ工具を使って面取りの工程を体験することができました。
まずは開会のあいさつ、右がおなじみローマン・ゴティエ氏、真ん中が仕上げ部門のトップSlyvie Devaux氏、左はスイスプライムブランズ代表、ルカ・オルドゥーニャ氏。
ローマン ゴティエは、様々な革新的な機構を生み出しつつも、仕上げについては手作業でしかできない美しさを追求しています。
例えば、回転するやすり(バフ仕上げ)であれば5分で終わるブリッジの面取りを手作業で行うと1日(8時間)かかってしまいますが、手作業でしか成しえない美しい曲面を描いた面取りを実現することができます。
この手作業による面取りの困難さを"身をもって知る"ことによって、より理解してほしい…というイベントです。
アクロバティックにノートPCを持ちながら説明するゴティエ氏、曰く、"時計作り"と言うと特に組み立てを行う時計師に注目が集まりがちだが、その前段階である部品製造や仕上げの工程にも目を向けて欲しいそうです。
そのために興味を持っている方に対して、来る者は拒まずの姿勢で見学を受け入れており、工房は普通に歩くと端から端まで1~2分の小さい建物ですが、見学の際には2時間かけてゆっくり説明をしていただけるとか。
是非伺ってみたいです。
面取りは4つの工程に分かれており、以下の工程をすべての面に対して行います。
- 金属やすりにより機械加工が終わった45度の辺に対し丸くなるよう面取りを行う
- アルミナの粉によりやすりの傷を消し、表面を整える
- エメリーペーパー(目の細かい紙やすり)でさらに表面を整える
- 乾燥させたジャンシャン(植物)の茎にダイヤモンドペーストをつけたものでポリッシュする
机にセットされた簡易作業台と研磨用の冶具、ウォッチルーペ。
手前から、金やすり(平・丸)、番手の違うエメリーペーパーを巻き付けた棒、カットされたジャンシャンとダイヤモンドペースト。
今回、面取りを行う部品、HMSのブリッジだそうです。
ローマンゴティエの部品の中では比較的"容易"な形状だそうですが、それでも仕上げには1日(8時間)が必要だと。
この中で一番容易な凸になっている向かって右側の辺を面取りします。
最初は金やすりの作業です。
まずはお手本を…
"人間5軸加工機"(Human 5 axis)で、材料とやすりを協調させながら動かし、直線の面を滑らかな曲面にせよ…というミッションです。
なんとなく"スプライン曲線で繋ぐ"というイメージかなと思いました
曰く、最初なのに一番難しく、失敗してしまうと取り返しがつかない作業だそうです。
凸部分は平やすりをうまく動かして曲面を作ります。
市販のやすりを加工し、使いやすくしています。
ルーペは片目で見ますが、拡大していない方の目をつぶってしまうと筋肉が緊張して疲れてしまうため、"目は開けているけど注目していない"と言う状態にする必要があるそうです。
やすりをかけている最中の写真、これ以降作業に集中していてほとんど写真を撮れませんでした。
エメリーペーパーによる研磨のお手本。
やすりは縦に動かして削るのに対し、こちらは"色鉛筆で塗り絵を塗るように"横に動かすとのことでした。
エメリーペーパーの番手。
数字は研磨剤の粒子サイズで、Micはマイクロメートルを示しています。
実際の工程では5マイクロの後に3マイクロで仕上げるそうです。
研磨中は皆さん集中するので無言になり、研磨の音だけが心地よく響きます。
ゴティエ氏曰く、"研磨専門の工場があったとしたら、きっと凄く静かだろう"とのこと。
そしてジャンシャンによる研磨。
ジャンシャンはゴティエ氏が自ら採取したもので、今回のイベントのためにスイスから持ち込んだそうです。
ダイヤモンドペーストの細かさになると、もう音は聞こえなくなりますが、無心に研磨します。
というわけで結果を…
向かって右の辺が今回面取りを行った辺です。
如何でしょうか?
金やすりでやらかして一か所キズがついてしまい、それをリカバリーしようと四苦八苦しました。
面取り曲面とブリッジ表面の継ぎ目はガタガタになっていてもいけないし、段差が認識できてしまってもいけない、極めて難しいと感じました。
ただ、作業中は無心に金属との対話が楽しめたと思いますし、制限時間が無かったらすべての辺を仕上げてみたかった…
ゴティエさん、"オーナーが工房で特訓(1週間ぐらい?)を受けて仕上げたブリッジをタイムピースに組み込むサービス"とかどうでしょう?
ゴティエ氏、Devaux氏のチェックを受けた後は、修了証が発行されます。
ありがとうございます!
さて私の素人作業のレポートだけでもアレなので、会場にあった"お手本"を。
より複雑なブリッジ類。
向かって右が機械加工を終えた直後、向かって左が面取り作業後です。
全てロジカルワンの部品で、左からテンワブリッジ、香箱のブリッジ、チェーンのブリッジ、そして左下がチェーンです。
チェーンには極小のルビーがリンク部分にはめ込まれ、摩擦を低減しています。
ロジカルワンの拡大写真。
肉抜きされたブリッジの内側を面取りする手間は考えるだけで頭が痛くなりそうです。
思い返すと今回、時計はほとんど拝見していませんでした…
会場の様子を。
とても貴重な体験でした。
このような機会を設けてくださり、ありがとうございました。
ローマン・ゴティエ お問い合わせ先:
スイス・プライム・ブランズ 03-4360-8669
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