The Story of the Unique -ジャケ・ドロー創業280年特別展- レポート

 By : CC Fan
今年280周年を迎えたジャケ・ドロー(Jaquet Droz)、記念すべき年を祝う特別展、"The Story of the Unique -ジャケ・ドロー創業280年特別展-"が6月22日から24日に行われました。
今回はブランドを知らない層にもブランドを知ってほしいという考えから、いつものニコラス・G・ハイエックセンター内のブティックではなく、GINZA SIX内の蔦屋書店 GINZA ATRIUMにてオープンイベントとして開催されました。
日曜日に伺い、撮影と掲載の許可をいただくことができたので早速レポートします。



既に終了していますので、日時・場所はトリミングしましたがキービジュアルを。
こちらが"目玉"となるパロット・リピーター ポケット ウォッチ(PARROT REPEATER POCKET WATCH)です。



GINZA ATRIUMは天井の高いオープンスペース、ジャケ・ドローのロゴと蝶々のモチーフで飾り付けられていました。
書店内のオープンスペースということもあり、そもそも高級時計を全く知らないような方々も興味深そうに見ていました。
あえて値札がついていない展示で、先ずは知ってもらいたいと解釈しました。
ただ、お子様がダッシュ・ジャンプしていたり、四方がオープンだったりとセキュリティの方は大変そうでした。



280周年のロゴは、ブランドを代表する8の数字とグラン・セコンドをフィーチャーしています。



コンゴウインコで飾られたボックスの中に鎮座するのは…



パロット・リピーター ポケット ウォッチ!
高温焼成エナメルをはじめとした、ジャケ・ドローの工芸技術と宝飾技術の粋を凝らして作られています。
ボックス自体が三面鏡のような構造になっており、ボックスに入れたまま各部を堪能することができます。



ハンターケースほどではないですが、スケルトナイズされた表蓋は貴石やエナメル細工で飾られています。
裏蓋側にはミニアチュールペイントとパイヨンで仕上げられたエナメルのパロットの絵が描かれています。
蓋を開けるための機構は新しく考案されたもので、特許を取得しているそうです。



世界限定1本のユニークピースです。
また、この仕様をベースにした特別注文も受け付けているそうで、日本国外ですが引き合いがあるとか…

公式動画を。



ムーブメントは腕時計版と同じRMA88で、ケースサイズは腕時計版も47mm径で大きかったですが、懐中時計は56mmとさらに迫力のある大きさになっています。
腕時計版では3時位置にあったリュウズを12時位置に動かすのはどうやっているのか疑問でしたが、ムーブメントをさらに大きな地板に取り付け、その地板に追加した機構でリュウズの動きを転送しているようです(動画の0:49あたりに見えます)。

オートマタ自体の動きは初代バード・リピーターのCG動画に詳しいです。



ミニッツリピーター機構に連動したカムを使ったオートマタ機構によって2羽の親鳥と3羽のヒナが動いている様子がわかるかと思います。
各カムの周期とリピーターの動きの周期を合わせないことで、一種のランダム性が発生するようにしてあり、同じ時間に起動したとしても毎回違う動きをするようにしてあるそうです。
このオートマタ機構はリピーター機構に密結合しているように見えるので、リュウズの位置をかえる(ベースムーブメントを90度回転させる)のは無理じゃないか?と思ったのが前述の疑問です。



こちらは実機の動画。
初代に関してはa-lsさんのブログに実機レポートがありますのであわせてどうぞ。



個人的に待ち望んでいた、サイニング・マシーン(THE SIGNING MACHINE)。
やっと実機が見られました。



ジャケ・ドローのサインを書いています。
パワーリザーブは"サイン2回分"で、内部のカム・ガバナーなど余すところなく観察することができます。



こちらも基本的には受注生産のユニークピース方式です。
ジャケ・ドローのものは比較的シンプルですが、同じグループ内のハリー・ウィンストンから同じムーブメントを搭載して更に宝飾方向に突き抜けたバージョンもバーゼルで発表されていました。

こちらも動画を。



次はホイッスル・マシーン(THE WHISTLE MACHINE)です。



シンギング・バードを小型化した腕時計チャーミング・バードのシンギングバード部を大型化・独立化し、機構を理解しやすくした作品です。
思い返すと、バーゼルでも展示されていましたが、完全にスルーしてしまったのは不覚です。



二つのシリンダーのうち、片方が圧縮空気を作り、もう片方がタイミングよく開放することで笛(ホイッスル)で鳥の鳴き声を作っています。

こちらもCG動画を見ると動きがわかりやすいかもしれません。



ひたすら往復運動している方のシリンダーが圧縮空気を作り、もう片方のシリンダーがカムのプログラムに合わせて開放することで鳥の鳴き声を作っている様子がわかるかと思います。
香箱に直結されたカムによって鳥の足元にあるピニオンが動かされ、鳥に回転と羽ばたきが与えられています。

チャーミング・バードは時計も備えていますが、シンギングバードのムーブメントとは完全に独立していたので、いっそ独立させてしまおうというのは理に叶っているかと。

パワーリザーブは2分間、音は聞けませんでしたが、チャーミングバードに準じているなら充分に鳥のさえずりを再現していると思われます。

このためにスイスから来日した職人による工芸技法の実演が行われていました。



実体顕微鏡を使い、ミニアチュールペイントを描いています。



手元カメラによって微細な動きを見ることができました。



実際に使用しているというアクリルペイント。
これを面相筆でダイヤルに乗せていきます。



実際のダイヤル。
右側に見えるライオンのサンプルはブラックエナメルにアクリルペイントで仕上げているそうです。



顕微鏡とカメラの様子。

"ブランドを知ってもらう"ための展示として歴史もまとめられていました。



"初代"ジャケ・ドローの旅。



280年前、ピエール・ジャケ・ドローの誕生。



アイコニックなグラン・セコンド懐中時計。



そして280周年。

このほか、各界の有名人がジャケ・ドローについて語っている展示がありましたが、肖像権(?)的に掲載していいのか微妙なのでとりあえずここまでとします。

私事ですが、時計趣味を始めたときに丁度ジャケ・ドローが275周年を祝っていた覚えがあるので、思えば遠くに来たものだなと感慨深い展示でした。
WMOでは全く露出していないので、曰く"カンタロスを一番最初に買ったと思ってた"と言われますが、一番最初はジャケ・ドローだったので、これからも応援していきたいです。
先ずは、自分のジャケ・ドローを一度紹介したいですね…

お問い合わせ先
ジャケ・ドロー ブティック銀座 03-6254-7288 
WEBSITE:www.jaquet-droz.com