グルーベル フォルセイ 2018 新作展示会 in神戸 by Atarassy

 By : Guest Blog

東京と神戸で盛況のうちに開催されたグルーベルフォルセイの2018新作展示会。
新たに日本代理店となったカミネから、「メディアだけでなくユーザーもその席で楽しんでいただきたい」という趣旨を受け、わがWATCH MEDIA ONLINEもユーザーの立場から、読者招待などの協力させていただいた。
超高級時計グルーベルフォルセイーーやはり愛好家の皆さんの関心も高かったようで、このすごい時計(ま、お値段もね)を目の当たりにした神戸でのレポートが、ゲストブログという形で2件届いた。

いつも関西地方の時計イベントを中心に記事を投稿していただいてるharuさんと、そして初めてご投稿いただいた弱冠18歳、高校3年生のAtarassyさんのお二人だ。
視点や切り口など、それぞれの着目点の違いなどもたいへんに興味深く、結果として多角的な面からグルーベルフォルセイの素晴らしさを浮き彫りにできているのではないかと思い、この2つの投稿を同時にUPする。

時計ユーザーの発信力を高めることが、ウォッチ・インダストリーの未来を変えるという信念のもとに運営されているWATCH MEDIA ONLINEですので、どうかご一読のうえ皆さまも、コメント投稿は言うまでもなく、イベントでの体験やご自分の時計についてなど、ゲストブログにどんどんご投稿いただければ有難い。
(WATCH MEDIA ONLINE編集人 a-ls)


前ページのharuさんに続き、Atarassyさんのゲストブログをどうぞ!

こんにちは。
ゲストブロガーのAtarassyと申します。18歳、高校3年生ということもあって、グルーベル・フォルセイ(以下GF)は言うまでもなく、ロレックスすら触ったことがなく、シチズンを使う一"市民"です。

そんな私ですが、イベントの概要等はCC Fanさんの記事(https://watch-media-online.com/blogs/1607/)をご参照いただくとして、今回は実機の感想と画像及び、ステファン・フォルセイさんへの質疑応答という形で書かさせていただきます。

あまり長くなってもあれなので、個々の詳細等は過去記事を参照していただくとして、まだ書かれたことがないであろう情報に絞って書きたいと思います。(と言っても、溢れる感動がついつい筆を進ませるかもしれませんが…)

さて、今回の目玉は、やはりDifférentiel d'Égalitéと言いたいところなのですが、東京に続き、神戸会場にもやはり来ていませんでした。

ステファン・フォルセイさんによる新作紹介が終わると、実機見学、否、実機体験の時間です。
実機画像がことごとく指紋にまみれているのは他でもない、完全なる自由な実機体験がゆえにです。リューズを操作したり腕に巻いたり、さらには、グランドソヌリを操作し放題と、まさに夢の時間でした。

それでは、実機紹介ですが、GFをよく知らない方は、理解の深化の為に取り敢えずCC Fanさんによる以下の記事
https://watch-media-online.com/blogs/1340/
https://watch-media-online.com/blogs/1613/
を読んで頂きたいです。

さて、まずは、Double Tourbillon 30° Technique Blueのプラチナケースverです。

鮮烈なブルーの地板が目を惹きますが、これは、GFのエマニュエルさんによるとCVD(Chemical Vapor Deposition(化学蒸着))というもので、PVD(Physical Vapor Deposition(物理蒸着))を想像したらわかり易いとのことでした。(補足:PVDの処理温度は400〜500℃、CVDは1100℃程度であり、CVDの方が加工難易度は高いが、密着性は優れる)

実機を見るまでは、GFらしい立体的な造形は好きだが視認性が阻害されているのではないかという、未来永劫自分には関係なさげな心配をしていたのですが、それは杞憂でした。完璧なポリッシュとフロストの使い分けにより、文字盤のコントラストは良好で、また各機能の配置も、視認性、美観を備えたものでありました。
また、6時位置のトゥールビヨンの4分周期の回転を示す手裏剣のようなサファイアプレートは、視認性に影響を及ぼすものではなく、視覚的なトゥールビヨンの楽しさを増大させていると感じましたし、角度によって反射が変わり見え隠れするのはやはり楽しいものでした。

別角度からの画像です。
フォーカス外ですが、時分針の高さ、香箱とスモールセコンドの重なり、サファイアプレート上のWG製アプライドインデックス、そして、特徴的なダブルトゥールビヨンとそのブリッジが織り成す立体感がわかると思います。



さて、裏面です。同様に鮮烈なブルーの地板ですが、しれっと地板を曲線で分割しだす辺りにGFの凄さが滲み出ていると思います。又、裏面からも特徴的なトゥールビヨンのブリッジが確認出来ます。

ケースサイドです。こちらにはGFの碑文が刻まれて いますが、これはレーザーによる彫刻だそうです。


プラチナ製のケースということで、正直とても重く、またケースも大きく厚いので、自分には普段使いはできないな、と思いました(これぞ杞憂)が、ラバーストラップは質感が良く、プラチナ製のDバックルと相まってバランスも取れ、装着感は良かったです。

 

さて次は、GMT 5Nです。
これは、GFらしいピースということで、やはり注目度も高かったような気がします。

PGの地板に、アシンメトリカルに各種機能を、そして、特徴的な地球儀を配置しています。GMT Earthと違って、ケースは地球儀側のみならず、トゥールビヨン側も円からはみ出た形状となっています。



斜めからです。
地球儀は、チタン製で、この時計を作るにあたり最も苦労したそうで、最適な素材と製法の発見に1年以上費やしたとのことです。陽極酸化処理により海を作り、そののち、陸を作ることでこのような立体感を実現しています。また、ケースサイドには地球儀を見る為の窓が設けてあり、また、そこから射す光はさながら日光のようです。
ケースバックは、撮り忘れました…。サマータイムの有無も示す都市名表示がありました。


次は、Quadruple Tourbillonです。

2つのダブルトゥールビヨンを並列作動させ平均を計算するという理解不能な凄さの時計です。ステファン・フォルセイさんに質問したところ、アシンメトリカルケースは、このクアドルプルトゥールビヨンを収めるスペースを生み出すべく誕生したということで、あくまでも奇抜な時計を作るためではなく、必要の結果として誕生したということに感動しました。

トゥールビヨン部の拡大です。ブリッジがサファイア製なので、トゥールビヨンが見易いです。



そして、ケースバックです。やはりトゥールビヨンの存在感が凄まじいです。




次に、Double Balancierです。



開口部の大きなデザインを最大限活用して、二つのテンプ(=ダブルバランシエ)を見せています。
テンプを二つ採用することで、姿勢差を相殺する、という意味ではある種トゥールビヨン的な発想と言えそうです。また、インデックスはエナメルの象嵌だと言っていたような気もします。あやふやな記憶ということを強調しておきますが、どなたか確認の機会があれば、是非とも確認してみてください。


斜めから、立体感がやはり凄いです。サイズも大き過ぎることはなく、これは欲しいです。

次は、Tourbillon 24 Secondes Visionのサーモンピンクダイヤルプラチナverです。


通常のTourbillon 24 Secondes Visionとこのプラチナverはインデックスが違い、シャンルベ技法のグラン・フーエナメルのアプライドインデックスです。アプライドインデックスの立体感が伝わりますでしょうか…。
そして、ケースバック。


人間工学的に設計された8時43分位置のトゥールビヨンとサファイア製のドーム。実際に装着感は快適でしたし、鑑賞も楽しめるということで、とても良いアイデアだと思います。また、ひっそりとパワーリザーブインジケーターも備えられています。


次に、Signature 1です。

トゥールビヨンを搭載しないシンプルなモデルですが、仕上げの秀逸さは言うまでもなく、また、デザインや大きさ、価格もまだ一般向けのような気もします。他の参加者の女性で気に入られていた方もいました。

この時計のケースや文字盤がメカニカルナノのベースとなったと思えば感慨深いものがあります。そして、デザイン的な特徴の一つとして、テンプを支える長いブリッジがあります。相変わらず、仕上げは完璧です。
ケースバックです。

相変わらず独創的な地板の分割に、フロスト仕上げです。一見地味なフロスト仕上げですが、ペルラージュやコート・ド・ジュネーブに負けず劣らず魅力的だと思います。


さあ、残すは二つです。先に、QP à Équationです。

このモデルは、永久カレンダーに均時差表示(真太陽時と平均太陽時の差を表示する機構)を備えたものです。しかも永久カレンダーなのに逆行可能、ステファン・フォルセイさんが説明してくださっている時に普通に未来に過去に行くのを見て、他の参加者の方々が焦っていましたが、確かに異常事態だったということに後で気付きました。
つくづく隙が無く、ユーザーに壊させる気がありません。また、これだけ複雑な表示をシンプルなデザインにまとめ上げるデザイン力も賞賛されてしかるべきだと思います。

ケースバックです。

左下の円が季節の変遷と均時差を表しています。理解がまだ不十分なのであまり説明できなくて申し訳ないです。 西暦表示は裏面に設けているのは、普段は不必要な情報ということで文字盤をシンプルにすることに寄与していて好感が持てます。
また、このピースと次のGrande Sonnerieをステファン・フォルセイさんは着用されていました。

さて、最後のトリを飾るのは、そのGrande Sonnerieです。



このモデルは、パワーリザーブインジケーターが二つあることからもわかるように、計時とグランドソヌリの動力が分けられています。特筆すべきが、グランドソヌリの動力は自動巻であるということです。しかし、計時は手巻きなのはあくまでも自らの手で時計を動かして欲しいという願いのようです。この時計もまた安全機構が豊富でユーザーに壊させる気がありません。音を鳴らせている最中にでもリューズを操作することが出来るという素晴らしい安全さで、これなら、私のような不慣れな人間にも特段の気配り無く使えそうですね(^^)

ハンマーの拡大です。


ゴングとトゥールビヨンを2角度から。




そして、ケースバックです。

プラチナ製のローターは前述の通り、グランドソヌリ用です。
この時計は、鳴り物系なのに3気圧防水、チタン製で軽量(しかも音響特性も良い)、そして、安全機構が豊富ということで、極めて「実用的」だと感じました。デザインもシンプルで格好良く、音もとても綺麗で気に入りました。私が買うならこれですね(買えるとは言っていない)。


さて、結局長くなってしまいましたが、実機紹介は以上です。

続いては質疑応答です。
ステファン・フォルセイさんは英国出身ということもあり、英語でのコミュニケーションが可能でした。
私の拙い英語(←受験大丈夫か?)にも耳を傾けて真摯に答えてくださって嬉しかったです。

 

Q:一番好きな素材はなんですか、チタンでしょうか?
A:その通り。チタンは軽いし、タフであり時計の素材として最適である。

Q:セラミックやフォージドカーボン(Forged Compositesと言わないと伝わらなかった)等のケースの予定は?
A:(確か)Why not? 注:正確な記憶ではありません

Q:メカニカル ナノは時計の小型化に寄与するか?
A:Maybe or not 時計の大きさは、機構の大きさのみによって決まるものではない。装飾や、ケースの構造等様々な要因に依って、大きさは決定される。


GFと共に語られることの多いリシャールミルについても訊いてみました。

Q:リシャールミルについて
A:ファンタスティック。 高級時計に結び付かない新たな層を引き込んだのは素晴らしい。先進的な時計。 ラグがないケースの構造は面白いし、湾曲したケースバックは良好な装着感を与える。

Q:フィニッシュについて
A:100幾人かの従業員が居て、そのうち約20人がポリッシュ専門である。 トゥールビヨンのブリッジのポリッシュは20時間も掛かる。

これに付随して、労働時間を訊いたら、8時間だよ、と言っていました。
本当ですかねぇ 、一日掛かってもブリッジ一つ終わりやしませんよ、ということは考えず、ただただ究極を目指す姿勢がGFたる所以なのでしょう。

Q:パワーリザーブについて
A:パワーリザーブはトルクが下がらないところまでを表示している。だから、実際は更にもう一日程度は動く。

・そして、究極の質問として

Q:次に作りたい時計は何か?
A:タイムマシン。やりたいことが多過ぎて時間がないから。

この答はいかにも日々究極に挑んでいるステファン・フォルセイさんらしいと思いましたし、ウイットに富んだ答えだとも思いました。

ステファン・フォルセイさんは真面目一辺倒かと思いきや、ジョークも言える人で、もう一回グランドソヌリを見せてもらえないか、と頼んだ時は、あまり見ると目に悪いよ、と言いながら見せてくれました。

最後に、グルーベル・フォルセイに対しての感想を述べさせていただいて、この記事を締め括ろうと思います。

グルーベル・フォルセイは常に限界を打ち破って究極の究極に達せんとしているように思えます。 仮に、とある地点に限界というものがあるとします、しかしこれは、我々にはまだ認識されていません。しかし、グルーベル・フォルセイによってそのとある地点が突破せられし後、そのとある地点が限界であったと我々に認識される、言わば事後的限界である、このように思えてならないほど、グルーベル・フォルセイはその仕上げ、設計、アイデア、デザインにおいて他を凌駕しているように感じました。

グルーベル・フォルセイのHPのHISTORYの冒頭です。

「When Robert Greubel and Stephen Forsey teamed up and launched Greubel Forsey in 2004,they shared a common view that there was still room for creativity in the development of complications in watchmaking. Their goal was to improve the performance of existing complications but also to invent innovative mechanisms. 」

グルーベル・フォルセイの未来がさらに楽しみです。


今回のグルーベル・フォルセイ新作展示会は、とてと居心地が良かったです。
カミネの皆さま、ステファン・フォルセイさん並びにグルーベル・フォルセイの皆さま、他の参加者の皆さま、ありがとうございました。

そして、読者の皆さま、読んでいただきありがとうございました。

 

関連website

カミネ旧居留地店
http://kamine.co.jp/shop/maison/

グルーベル・フォルセイ
http://www.greubelforsey.com/en/