Chronometre Bleu "Byblos"

 By : Ay&Ty Style
今から2年前の2014年9月5日、F.P.ジュルヌは中東レバノンの首都ベイルートに世界10番目のブティックをオープンし、それを記念して99本限定のモデルを発表した。その名も
 クロノメーター・ブルー "ビブロス"



ベースであるクロノメーター・ブルーは2009年初出。
リーマンショック後の経済状況を反映した廉価モデルとして、具体的にはクロノメーター・スヴランからパワーリザーブ機構を割愛し、貴金属でないタンタリウムをケースに採用して、39mmのワンサイズという特殊なモデルとして登場した。
しかし今では、シンプルで使いやすく、深いブルーの文字盤の美しさが世界の愛好家の心を捉えて離さない。ジュルヌの中でも指折りの人気モデルと言っていいだろう。

そのクロノメーター・ブルーをベースに作られた最初の(そして現時点で唯一の)限定モデルであるビブロス。
鮮やかなブルーとローズゴールドの地板のコントラスト。太陽の像にくり抜かれた文字盤が極めて印象的だ。
一瞬ホント?と目を疑うように強烈で、見れば見るほどに引きこまれていく不思議な魅力を持つデザイン。
シンプルでエレガントなクロノメーター・ブルーとは、もはや全く別な時計である。



しかし限定モデルというのは、やはりこうでなければと思わせる。
振り返れば、2005年の秋に発表されたTokyo限定のときもそうだった。当時はよく理解できなかったけれど、今はわかる。レギュラーでは決して出てこない際立った表現こそが限定の醍醐味なのだ。
おそらくランゲ&ゾーネはこのようなことをやらないだろう。パテックフィリップがこのようなことをすると古くからのファンから大きなブーイングが浴びせられるにちがいない。適度な柔らかさがあるジュルヌデザインだからこそ、また、ジュルヌさん自身が絵を描いているからこそ成り立つモデルではないだろうか。



太陽を象形してスケルトナイズされた文字盤。
スケルトン文字盤は多くのブランドで用いられているが、FPジュルヌの特長であるローズゴールドの地板を生かし、細かな格子状のギョウシェを施すことで、他所とは全く違うアーティスティックな印象に仕上げられている。

そして、ロゴは地板に直接エングレイブ。
"J"にあたる文字はフェニキア文字の「ヨド」に置換されている。
フェニキア文字はアルファベットの元になったと言われる文字体系で、古代ビブロス発祥。「ヨド」は10番目に位置する文字で、腕を意味するようだ。
ビブロス、10番目のブティック、クラフトマンシップという3つの含意を汲み取ることができる。



ムーブメントは通常のクロノメーター・ブルーと同様。
クロノメーター・スヴランとは地板の仕上げが異なる。



Calibre 1304  (in 18K rose gold)

 Dimensions of the Movement:
    Overall diameter: 30.40 mm
    Overall height: 3.75 mm
 Balance:
     Four inertia weights, Flat Anachron micro flamed spring, Mobile stud holders, Free sprung, 
     Nivatronic laser-welded to collet, Pinned GE stud, 
 Frequency: 21,600 v/h (3Hz)



CB Byblos のために特別に用意されたベージュのストラップはバッファロー革。



限定総数99本のうち20本は、アラビア・インド数字インデックスのベイルートブティック限定仕様だ。
このうち1本は、発表当初、チャリティーとしてアンティコルムに出品され、$149,000-の超高額の落札を記録した。これに限られず、熱烈なファンを抱えるFPジュルヌは、過去のチャリティーオークションにおいて目を見張る強さを発揮している。

それにしても、鮮やかなブルーとRGのコントラストは、まるで絵画のよう。
ビブロスから眺める地中海と太陽は、ジュルヌさんが少年時代を歩んだマルセイユのそれとは違って見えるのだろうか。






(この投稿の本文は、拙ブログAy&Ty Styleのいくつかの記事をベースに再整理したものです。)