ローマン ゴティエ氏来日プレゼンテーション、 広田クロノス日本版編集長とも対談。
By : CC Fan12/2に行われた、ローマン ゴティエ(Romain Gauthier)のプレゼンテーション、ローマン・ゴティエ氏本人によるプレゼンテーションのほか、広田雅将クロノス日本版編集長によるプレゼンテーションと、お二人の対談が行われました。
会場は虎ノ門ヒルズ、アンダーズ東京。
東京を一望できる好ロケーションです。
あいにくの曇り模様ではありましたが、眺めは抜群。
早く着きすぎたのでしばし待機。
開場のあいさつをする輸入代理店、スイスプライムブランズ株式会社代表のルカ・オルドゥーニャ氏。
広田雅将氏とローマン・ゴティエ氏。
まずは広田氏による"独立時計師"の歴史と、独立時計師としてのローマン ゴティエの立ち位置についてのプレゼンテーション。
広田氏は、"独立時計師とは、(ビジネス上の都合など)で大手ではできない時計製作を行う存在であり、それぞれの哲学に則った時計作りを行っています"、という定義づけをしたうえで、"独立時計師は3つの世代に分かれ、第一世代は懐中時計の複雑機構を腕時計に乗せることに挑戦した世代、第二世代は腕時計に専用化した機構を考えた世代、そして第三世代は伝統に加え工作機械(マシナリー)の素養を持ち完成度を極限まで高めることを求めた世代で、ゴティエ氏は三世代目に属する"とのこと。
最新の工作機械を毎年更新することと、機械の"癖"ともいうべき特徴を捉えて最適化することで、同じ機械から最大の精度を引き出していると評しました。
また、重要なこととして"数を追わない"こと、すなわち加工速度を遅くすることで、加工時の熱による寸法変化に由来する精度悪化を最小に抑え、2ミクロンという極限の精度を追い込むことが重要であるとのこと。
機械加工による下地をはっきりさせてこそ、手作業による仕上げもよくなると結論付けていました。
続いてゴティエ氏からのプレゼンテーション。
工房紹介のビデオを見ながら、自身のキャリアと時計作りを振り返ります。
高級時計の聖地、ジュウ渓谷で生まれたゴティエ氏は幼いころから時計が身の回りにある生活だったため、そのDNAを"刷り込まれて"育ちながらも、工作機械のエンジニアから時計の世界へ踏み込んだ異色のキャリアの持ち主です。
しかし、幼いころからの経験で身に着けた時計作りに対する哲学と機械工学のバックグラウンドが融合した、out-of-box(革新的)な時計作りを始め、ブランドのスローガンともなっている伝統の進化(THE EVOLUTION OF TRADITION)という言葉が、実にぴったりくる時計作りと感じました。
ゴティエ氏曰く、工房は25人という小さな規模ですが、説明したいことが無数にあるので見学は2時間はたっぷりかかるでしょう。
…とゴティエ氏が言ったところ、会場から"3時間以上かかった"とのツッコミが。
1階は強固な土台の上に最新の工作機械を据えた部品製造部門、2階は仕上げや組み立て、管理部門と一般的な工房のスタイルです。
最新の工作機械は8台、すべては品質(Quality)を最優先に選定されたもので、最も高価な機械は2億円するそうです。
その後、我々も身をもって大変さを実感した手仕上げによる面取りの説明にはいりました。
工作機械の能力を100%引き出したとしても、工作機械で使われる回転工具では微小な振動による線ができてしまい、それを消してさらに磨き上げることは手作業でしかできないとのこと。
手作業でのみ面の綺麗さとエッジの立ち方を両立させることができ、最後は人の手で仕上げる必要があるとの考えだそうです。
仕上げの最終工程に使われ、ジュウ渓谷の手仕上げの代名詞のようにもなっているジャンシャン(リンドウ科の植物=日本ではエゾリンドウ)を自ら集めるというゴティエ氏と息子さんの写真が映し出されました。
根源的な部分では、常に伝統技法を重視しています。
逆に機構に関しては伝統をベースとしながらも、エンジニアリング的に"正しい"方向を目指しているそうです。
それを表す一例がロジカル・ワンのチェーン、プレスリリースの技術詳細によれば、伝統的なフュゼ・チェーンでは円錐に何重にもチェーンを巻きますが、チェーンが細く、円錐状に巻くためひねりの力がかかる問題がありました。
さらに、部品が大きいマリンクロノメーターや懐中時計では問題になりませんでしたが、腕時計サイズになると小さすぎて耐久性や組み立て性に問題が出ていました。
そこでロジカル・ワンでは変速輪列を組み合わせてチェーンを一重にし、円錐の代わりにスネイル状の部品で平面的に変速することでひねりの力が加わらなくしました、さらにチェーンが一重で良くなったため、チェーンを太く、強度も持たせられることができ、リンクにルビーを入れることで摩擦を抑える構造にすること、分解して洗浄が可能なピン構造にすることもできました。
これは伝統をそのままダウンサイズして腕時計サイズを作るのではなく、out-of-boxな発想がなければなしえなかった構造と言えるでしょう。
ほかにもHMSの裏リュウズ、インサイトのマイクロローターなど様々な革新を生んでいます。
もちろん伝統は大事ですが、個人的な見解で機械的に見れば"負の遺産"というような構造も多く、"なんでそうなっているの?"に対して"昔からそうだったから"以上の理由がなければもっと革新するべきだと思っており、氏の姿勢にはとても共感します。
ロジカル・ワンの"ロジカル"とは理論的に考えて正しいものを作ったというネーミングだそうで、氏の姿勢を端的に表しています。
審美的なデザインとエンジニアリングが衝突(ファイト)することもあるそうですが、あくまでエンジニアリングを重視して機構のデザインを決めているというそうです。
お二人の対談と質疑応答コーナー。
"ここだけの新作の展望"や"(訊いたのは私ですが)仕上げについてのややこしい質問"があったので詳細は省略…
ただ、今後もいろいろ面白そうなことがありそうなので目が離せない!ということだけはお伝えします。
この後、実機のタッチ&トライの時間があったのですが、コレクターの皆さんと別の話題で盛り上がっていて写真を撮り忘れ…
過去の記事をご参照ください(スミマセン)。
もうすぐSIHH、次はジュネーブで!
ローマン・ゴティエ お問い合わせ先:
スイス・プライム・ブランズ 03-4360-8669
会場は虎ノ門ヒルズ、アンダーズ東京。
東京を一望できる好ロケーションです。
あいにくの曇り模様ではありましたが、眺めは抜群。
早く着きすぎたのでしばし待機。
開場のあいさつをする輸入代理店、スイスプライムブランズ株式会社代表のルカ・オルドゥーニャ氏。
広田雅将氏とローマン・ゴティエ氏。
まずは広田氏による"独立時計師"の歴史と、独立時計師としてのローマン ゴティエの立ち位置についてのプレゼンテーション。
広田氏は、"独立時計師とは、(ビジネス上の都合など)で大手ではできない時計製作を行う存在であり、それぞれの哲学に則った時計作りを行っています"、という定義づけをしたうえで、"独立時計師は3つの世代に分かれ、第一世代は懐中時計の複雑機構を腕時計に乗せることに挑戦した世代、第二世代は腕時計に専用化した機構を考えた世代、そして第三世代は伝統に加え工作機械(マシナリー)の素養を持ち完成度を極限まで高めることを求めた世代で、ゴティエ氏は三世代目に属する"とのこと。
最新の工作機械を毎年更新することと、機械の"癖"ともいうべき特徴を捉えて最適化することで、同じ機械から最大の精度を引き出していると評しました。
また、重要なこととして"数を追わない"こと、すなわち加工速度を遅くすることで、加工時の熱による寸法変化に由来する精度悪化を最小に抑え、2ミクロンという極限の精度を追い込むことが重要であるとのこと。
機械加工による下地をはっきりさせてこそ、手作業による仕上げもよくなると結論付けていました。
続いてゴティエ氏からのプレゼンテーション。
工房紹介のビデオを見ながら、自身のキャリアと時計作りを振り返ります。
高級時計の聖地、ジュウ渓谷で生まれたゴティエ氏は幼いころから時計が身の回りにある生活だったため、そのDNAを"刷り込まれて"育ちながらも、工作機械のエンジニアから時計の世界へ踏み込んだ異色のキャリアの持ち主です。
しかし、幼いころからの経験で身に着けた時計作りに対する哲学と機械工学のバックグラウンドが融合した、out-of-box(革新的)な時計作りを始め、ブランドのスローガンともなっている伝統の進化(THE EVOLUTION OF TRADITION)という言葉が、実にぴったりくる時計作りと感じました。
ゴティエ氏曰く、工房は25人という小さな規模ですが、説明したいことが無数にあるので見学は2時間はたっぷりかかるでしょう。
…とゴティエ氏が言ったところ、会場から"3時間以上かかった"とのツッコミが。
1階は強固な土台の上に最新の工作機械を据えた部品製造部門、2階は仕上げや組み立て、管理部門と一般的な工房のスタイルです。
最新の工作機械は8台、すべては品質(Quality)を最優先に選定されたもので、最も高価な機械は2億円するそうです。
その後、我々も身をもって大変さを実感した手仕上げによる面取りの説明にはいりました。
工作機械の能力を100%引き出したとしても、工作機械で使われる回転工具では微小な振動による線ができてしまい、それを消してさらに磨き上げることは手作業でしかできないとのこと。
手作業でのみ面の綺麗さとエッジの立ち方を両立させることができ、最後は人の手で仕上げる必要があるとの考えだそうです。
仕上げの最終工程に使われ、ジュウ渓谷の手仕上げの代名詞のようにもなっているジャンシャン(リンドウ科の植物=日本ではエゾリンドウ)を自ら集めるというゴティエ氏と息子さんの写真が映し出されました。
根源的な部分では、常に伝統技法を重視しています。
逆に機構に関しては伝統をベースとしながらも、エンジニアリング的に"正しい"方向を目指しているそうです。
それを表す一例がロジカル・ワンのチェーン、プレスリリースの技術詳細によれば、伝統的なフュゼ・チェーンでは円錐に何重にもチェーンを巻きますが、チェーンが細く、円錐状に巻くためひねりの力がかかる問題がありました。
さらに、部品が大きいマリンクロノメーターや懐中時計では問題になりませんでしたが、腕時計サイズになると小さすぎて耐久性や組み立て性に問題が出ていました。
そこでロジカル・ワンでは変速輪列を組み合わせてチェーンを一重にし、円錐の代わりにスネイル状の部品で平面的に変速することでひねりの力が加わらなくしました、さらにチェーンが一重で良くなったため、チェーンを太く、強度も持たせられることができ、リンクにルビーを入れることで摩擦を抑える構造にすること、分解して洗浄が可能なピン構造にすることもできました。
これは伝統をそのままダウンサイズして腕時計サイズを作るのではなく、out-of-boxな発想がなければなしえなかった構造と言えるでしょう。
ほかにもHMSの裏リュウズ、インサイトのマイクロローターなど様々な革新を生んでいます。
もちろん伝統は大事ですが、個人的な見解で機械的に見れば"負の遺産"というような構造も多く、"なんでそうなっているの?"に対して"昔からそうだったから"以上の理由がなければもっと革新するべきだと思っており、氏の姿勢にはとても共感します。
ロジカル・ワンの"ロジカル"とは理論的に考えて正しいものを作ったというネーミングだそうで、氏の姿勢を端的に表しています。
審美的なデザインとエンジニアリングが衝突(ファイト)することもあるそうですが、あくまでエンジニアリングを重視して機構のデザインを決めているというそうです。
お二人の対談と質疑応答コーナー。
"ここだけの新作の展望"や"(訊いたのは私ですが)仕上げについてのややこしい質問"があったので詳細は省略…
ただ、今後もいろいろ面白そうなことがありそうなので目が離せない!ということだけはお伝えします。
この後、実機のタッチ&トライの時間があったのですが、コレクターの皆さんと別の話題で盛り上がっていて写真を撮り忘れ…
過去の記事をご参照ください(スミマセン)。
もうすぐSIHH、次はジュネーブで!
ローマン・ゴティエ お問い合わせ先:
スイス・プライム・ブランズ 03-4360-8669
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