SIHH 2019: エルメス - 参加2年目、デザインと複雑機構の融合

 By : KIH

「時計好き」と「ラグジュアリー」とは必ずしも同居しないが、ラグジュアリーブランドにとって時計はなくてはならないもののようである。というわけで、今年のエルメスがどのような時計を出しているのか覗いてみた。


今年のSIHHブース。大きな球体が天井からぶら下がっている。




「時計ブランド」として見ると、なかなか面白いものがあった。
時計ブランドがジュエリーウォッチを作るのと、ラグジュアリーブランドが時計を作るのとでは、全く違う、という自論を変える気はないが、ラグジュアリーブランドにはラグジュアリーブランドの「進化」があるのだな、と思った。


1.Arceau L'heure de la lune (アルソー ルゥール ドゥ ラ リュンヌ)


ホワイトゴールド、43㎜ケース。ダイヤルベースはこちらはアベンチュリン。
メテオライトのバージョンもある。


時刻を表すダイヤルと日付を表すダイヤルは同じ位置関係のまま、約59日かけてダイヤル上を1周する。その際に、12時位置と6時位置にある月の上を通るので、月の満ち欠け、すなわち南半球と北半球のムーンフェーズを同時に表示する、というもの。機構の割にはかなり大きめの時計ではあるが、発想は面白い。光の加減で見えにくくて申し訳ないが、12時位置(南半球)と6時位置(北半球)に描かれている月は、どちらもマザーオブパールだ。そして、12時位置の月の南半球には、エルメスの原点である「馬」から、月表面の模様に重ねて「ペガサス」の絵が描かれていることに注目していただきたい。皆さんご存知のことだとは思いますが、そう、エルメスは革製の「馬具」メーカーとしてスタートしています。



自動巻き、パワーリザーブ 50時間。28,800振動。
アベンチュリン、メテオライト、それぞれ100本限定。


ラグジュアリーも楽しみたい紳士には時計としても魅力的だと思う。


2.Galop d'Hermès (ギャロップ ドゥ エルメス)


こちらはクォーツ式。ご覧の通り、こちらも「馬」関連で、「鐙(あぶみ)」をモチーフにしている。
40.8 x 26mm。むろん女性用。エルメスらしい、というところか。


3.Cape Cod  Chaîne d'ancre   (ケープコッド シェーヌ・ダンクル)




それぞれ、ステンレスのケースに、42個のダイヤモンドがベゼルからラグにかけてセットされている。
サイズは、29㎜ x 29mm。白も黒もダイヤルはラッカー仕上げ。クォーツ。


4.Arceau 78 (アルソー 78)


アルソーは1978年に、鐙(あぶみ)から着想を得た上下非対称のラグを持った丸型ケースと、さっそうと走る馬を連想させるインデックス文字を使うことでエルメスの時計のアイコン的なデザインとなったもの。今年の特徴は、ビーズブラスト仕上げによるベゼルと、グレイン仕上げのアントラシット(アンスラサイト)の文字盤。40㎜。クオーツ。



その他、目についた時計には以下のようなものがあるが、SIHHでももう少し目立ってもいいのでは、という気がするほど、デザイン的には秀逸な面もある。

Arceau Baobab Cat


34㎜、自動巻き、12本限定。このダイヤルは秀逸。


Carré H




38㎜ x 38㎜。自動巻。シンプルながら、やはりエルメスらしい雰囲気がある。


Arceau Oursin


23㎜、クォーツ。ホワイトゴールドのケースには289個のダイヤモンドが(0.89ct)、ダイヤルには228個のダイヤモンド(0.59ct)。まさにラグジュアリーなジュエリーウォッチ。クォーツ。


いかがだろうか。他ブランドのジュエリーウォッチとも引けを取らないし、デザイン性はやはりピカ一であろう。時計好きがどう考えるかはまた別の世界のことではあるが、時計好きも納得する機構を持った時計も出してきており、筆者としては来年も覗いてみたいと思った。


【問い合わせ】
 エルメスジャポンTel.03-3569-3300