モリッツ・グロスマン ハマティック 実機レポート

 By : CC Fan
モリッツ・グロスマンが2018年のバーゼルワールドで発表した、自動巻きというコンプリケーション、ハマティック(HAMATIC)。
発表から約1年の熟成を経て、いよいよデリバリーされるというニュースはa-lsさんの記事でお伝えされていますが、加えて実機を拝見する機会があったのでレポートします。



何よりも特徴的な"ハンマー"自動巻き機構を備えたCal106.0です。
自動巻き黎明期に存在したローターが1回転しないハーフローターのようにも見えますが、効率の良い自動巻きを作るために徹底した改良を加えたもので、全くの別物とのこと。

自動巻きは片方の回転のみ巻き上げに使い逆回転はクラッチで捨てる片巻きと、何らかの機構で回転を1方向に整流して両方向を巻き上げに使う両巻きがあり、ハマティックは両巻きです。



システムとしてはかみ合った2枚の巻き上げ歯車に、ハンマーから伸びている2本のラチェット(爪)がそれぞれ噛んでおり、振動することで両方とも押す方向はかみ合い、引く方向は空回りします。
片方が押している間、もう片方は引いて空回し、往復運動を1方向の回転に変換します。
ハンマーの往復は22度、1往復で巻き上げ車の歯が10歯送られ、巻き上げられるとのこと。

グロスマンらしく巻き上げ機構は極めて強固に作られており、2018年の機構よりさらにブラッシュアップされていることがうかがえます。



特に目に付くのはハンマーに追加された2つのスプリング、これは過剰なエネルギーを受け止めるものだそう。
機構自体の支持はセンターのスプリングが行いますが、勢いが付いたときにソフトに受け止めるためのものです。

ハンマーが傾けて取り付けられているのも研究の結果で、人の動きを検討し、どの角度で振動を拾うのが一番巻き上げ効率が良いのか?ということを考えたためとのこと。

往復よりも回転する方が効率が良いようにも思われますが、人の動きは断続的なので、1方向に回転し続けることはほとんどなく、頻繁に回転方向が切り替わるそうです。
通常の自動巻きでは回転方向が切り替わる時に巻き上げることができない角度(不動角)がローター基準で数十度以上あったのに対し、ハマティックではほぼ数度まで抑え込み、効率よく人の動きからエネルギーを取り出せるようにした…そうです。
また、回転軸が中心にあるローターは最大でも回転半径がムーブメント半径までにしかなりませんが、ハマティックの構造であればムーブメントの直径分まで使うことができ、重さ×半径で求められる巻き上げトルクで有利になります、さらにウェイトに18金を使うことで重さも稼ぎ、効率よく巻き上げられるようにしているそうです。
ハンマー先端の金色の丸の部分に金のウェイトが可視化されています。

ペルラージュ模様が見えているのは文字盤の裏面で、ムーブメントの高さ分をウェイトに使った大きなウェイトを持ちます。
自動巻きをコンプリケーションとして考え、効率の良い構造を追求した結果です。



Onlywatchに出品された初代グロスマンの懐中を思わせる極細の針。
オーソドックスなローマンインデックスの古典に範をとったデザインです。

ムーブメントの構造として、小型6振動/秒のCal102のコンポーネントをベースに、自動巻き機構がぐるっと取り囲んでいるような構造のため、4番車が少し内側に寄っており、その結果スモセコの軸も寄っていますが、これはこれでクロノメーター的にも見えるので私は好きなデザインです。

Cal102にCal100に近い香箱を与えた結果、パワーリザーブは72時間とトゥールビヨンのCal103と同等のグロスマンで最長の値。
自動巻きで効率よく巻き上げられることも含め、実用的だと思います。



コンプリケーションとして日常に寄り添う"自動巻き"を選ぶのがグロスマンらしい…と感じた作品でした。

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www.grossmann-uhren.com





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