JeweLuxe - シンガポールでの独立時計師ばかりの展示会報告 その4

 By : KIH
さてさて、腕時計部門の注目銘柄はこれが最後です。こちらは、AHCIメンバーではありませんが、非常に興味をひく経歴と、このモデルが面白いと思いました。AHCIブース以外では個人的には一押し。

その3から続きます。

4. Petermann Bedat


こちらは、Petermann Bedat。PetermannさんとBedatさんという、若い2人が始めたブランドです。ちなみに、Bedatさん(左)と、ビンテージファンならご存知のBedatというブランドとは全く関係ありません、とのこと。


さて、お二人の経歴からですが、なかなかこれがおもしろい、というか経験豊富。彼らは2007年にジュネーブの時計師学校に入った時に知り合い、そこで2011年まで共に勉強します。Petermannさんはその後ランゲに、Bedatさんはハリー・ウインストンで2年半時計作りをした後、ランゲでPetermannさんと再会します。
2014年9月、Petermannさんはレストレーションからパーペチュアルやクロノグラフを担当した後、ランゲを辞め、スイスに戻りジュネーブでクリスティーズのために、ビンテージやコンプリケーション ウォッチのレストアの仕事をしました。そして、2年後、Bedatさんもランゲを辞め、Petermannさんと一緒に、2017年11月スイスのRenensというところ(ローザンヌの近く)にアトリエを構えて、ブランドを立ち上げたのでした。

ちなみに、彼らは外からの投資家にお金を出してもらっていません。そこはとても大事なポイント、と私は最近思います。昨今のというかだいぶ前からですが、新興時計ブランドに出資するのが富裕層でいわば流行していましたが、えてして早く結果を出すこと、すなわち業績アップ、売り上げアップ、を望むあまり、クリエイターと衝突し、ブランドが崩壊するというのはよくあること。彼らのように、自分たちだけのお金で、というのが一番いいのでは、と思うわけです。以前ご紹介したKarsten氏もそうでしたね(ここここここ)。好きなことが好きなようにできるわけですから。大手ブランドも上場している、していない、でだいぶアプローチが違いますよね。もちろん「良い・悪い」と簡単に判断できることではありませんが。

さて、話はずれましたが、時計はこちら。これが第1作目のジャンピングセカンド。シンプルな時計を作りたがったが、ちょっとしたコンプリケーションが欲しかった、というのが彼らの最初の時計に込めたコンセプト。




このジャンピングセカンド ムーブメントにも驚くような逸話がありました。彼らのアトリエの隣には、ルノー・エ・パピ(リシャール・ミルの中身を作っているので有名ですよね。その他APの複雑機構を作ったりしていますね)の創業者で今は退いているルノーさん(Dominique Renaud)のアトリエがあったんですね。で、ルノーさんがあるとき彼ら2人に助けを求めます。ちょっと仕事を手伝ってくれないか、と。彼らはもちろん喜んで引き受けました(160時間費やしたそうです)。で、ルノーさんは終わった後に聞きました。「お礼がしたいが、いくらだ?」。彼らはお礼してもらおうなんて考えていなかったのですが、「我々はできたばかりのブランドです。最初のムーブメントのデザインをお願いできませんか」。ということで、生まれたのがこのムーブメント。もちろん、デザインといろいろな製作に関するアドバイス(パーツやケースの調達など)をもらい、組み立ては彼ら。



パーツとケースは外注ですが、それ以降の組み立てと仕上げはこちらのアトリエで。

これは、最初のお客さんが、ものを見る前に注文してくれたので特別に作った、オニキスダイヤルバージョン。カタログ品ではありません。きれいですね。


これがカタログ品。39㎜。丁度いい大きさです。私はデカ厚には飽きました、はっきり言って。
まだプロトタイプですが、ケースはWG、プラチナが基本ですが、スチールやチタンも可能、とのこと。
お値段は、60,000スイスフランより。


では、動画で見てみましょう(いつも通り素人丸出しの下手な動画でスミマセン)。


ちなみに、箱もクラシックでおしゃれです。


ウェブサイト:
https://www.petermann-bedat.ch/

Petermannさん、Bedatさん、頑張ってください!