MING 37.07 実機レビュー ~ ブランド設立5年の集大成

 By : KIH


MINGの記念すべき5周年モデル「37.07」実機レビュー

ケースフォルム、文字盤デザイン、そして革新的な新型バックル
シンプルな美を追求してきたMINGの5年間の集大成


MINGのお家芸、蓄光剤をふんだんに使った文字盤


このサイトで時計をレビューすることは少なくないが、多くは展示会などで短時間触らせてもらったものや、自分で買ったもののレビューだったと思う。無論、それに深い分析を加えるのがこのサイトの強みでもある。今回はMINGの好意により、レビューサンプルを送ってくれるという幸運に恵まれ、この記事を書いている。

実機がしばらく手許にあったことにより、逆にレビューは中身まではそれほど深く入らず、着用感など実際に使う上での「目に映る感想」がメインになってしまい、写真も多くなってしまった。ある意味、これも「ユーザー目線」での感想というかレビューであるので、ご容赦願いたい。


はじめに
まずはおさらいであるが、37.07発売のニュースを見てみよう。発表が7月25日で、受注が7月29日という設定であった。今回は、注文時間内の受注分はすべて生産するというシステムだったので、手に入れることが出来た方も多いのではないだろうか。むろん、受注はその日限りで、これまでのすべてのMINGモデルと同様、二度と生産しない完売モデルである。この(完売後二度と生産せず)方式は、独立系に多いが、賛否両論あるとは思う。しかし、生産規模や彼らの次から次へと出てくるアイデアを実現するためには、やむを得ない方式でもある。今回の受注方法については、少なくとも「先着順・抽選」や「OO千万円以上購入済みのVIP様のみ」という売り方よりはコレクターフレンドリーで、あくまでも私見ではあるが、好感が持てる。もちろん、私はこのブランドをずっとフォローしてきているファンの1人なので、このレビューにもバイアスがかかっているということは否定しない。ただ、金銭関係は一切ないことは強調しておく。


装着

直径38㎜。いまの時代、これはちょうどいいサイズ。もう少し小さくてもいい気がするが、それはそれぞれの手首の大きさによるかもしれない。


とは言え、昔はどんなごっつい男性も34㎜などをしていたのだから、流行は繰り返すものとも言われているし、しばらくは40㎜未満の時代が続くような気がする。




最初に気が付くのは、シンプルなドレスウォッチとして、比較的薄めにできているということ。サファイヤクリスタル風防がドーム状になっているのも「ニュークラシック」としていい感じだ。リューズがややオーバーサイズに見えるが、これはMINGのデザインランゲージとして、操作性も重視した上でのサイズ配分。手巻き時計としては、無論これより小さくても使用に耐えられるが、MINGらしい大き目のリューズで使いやすい。ラグの角度により小さい手首でも装着しやすいことにも注目して欲しい。




こういう角度から見ると、実はそれほど手首で自分を「主張」しない時計なのだ。


立ち姿
別に立っているわけではないが、時計単体を撮影した写真を披露する。デザインを見てみよう。

ベゼルがない分文字盤が大きくなるため、印象としては大きめの時計に見える。


MINGのストラップはすべてケース側のエンドがケース形状に沿って丸くなっている。



そして、その曲線状になった、クラッチ式のバネ棒。アフターマーケットものでは、クラッチ式はしばらく前からよく見かけていたが、最近はこれを最初から採用しているブランドも出てきていて、これに慣れてしまうともうあの道具を使って、慎重にその先端をバネ棒とラグの間に入れてグッと・・・あ、しまった! などという悲惨なラグ傷つけ事故は起きなくなり、個人的には非常に幸せである。でも、よく考えると、これもまた比較的新しい独立系ブランドに多いな、という印象なのだが、なぜだろう? 歴史のある高級ブランドには似つかわしくない理由でもあるのだろうか?  最近年を取ったのか、いわゆる名門ブランドはフォローしなくなったし、あまり理解できなくなってきている・・・。






まとまりとバランスが良く、もちろん好みの問題はあるだろうが、よくできたケースである。




この文字盤は、非常に手間がかかっている。モデルによって工夫は様々だが、例えば一部のモデルでは文字盤は実はサファイヤなどで何層にもなっており、その間に蓄光材を入れたり、風防の裏にレーザーエッチングで文字や模様を入れ、その中に蓄光材を流し入れたり、文字盤製造だけでもかなり手間のかかる工程だ。この5周年モデルに至っては、どれだけ手間をかけて文字盤に使うクリスタルをレーザーで削ってこのようなモザイク状の模様を作って蓄光剤を流し込んだのだろう、相当の手間だったはずだ。それが、MINGの特徴・強みであり、魅力なのだ。


そして、これが蓄光後に部屋の明かりを消して撮影したもの。サンプルを家で撮影しないとここまできれいには撮れない。いや、実際にこれ以上にきれいである。


デザインの最後だが、ケース側面処理および、ラグのデザイン。美しい曲線で作られており、このケースもMINGの魅力の1つだ。


ケースバック・ムーブメント
セリタ製 + シュワルツ・エティエンヌによるチューンアップによる、SW210.M1。シュワルツ・エティエンヌとMINGは、今や盤石の協働体制となったようだ。例えば、歴史的希少ムーブメントだった、プゾー7001(27.01 及び 27.02 で採用)も、彼らの手にかかれば現代的な姿に変身し、往年の性能にさらに磨きをかけたパフォーマンスを生み出す。また、今回の比較的「汎用」と呼んでもいいかもしれないムーブメントであっても(とは言え、将来は「名機」と呼ばれるかも)、このように「見せる・魅せる」ムーブメントとなる。特に解説はつけないが、MT(Ming Thein = MING創業者で、もともとフォトグラファー)ほどの腕でもないので恥ずかしい限りだが、ケースバックからの眺めを様々な角度からご覧いただきたい。

スペック;
- ムーブメント
o Sellita for MING SW210.M1、アンスラサイトのスケルトン・ブリッジ、コントラストを効かせたロジウムのサーキュラーブラッシュ仕上げ、ロジウム・サーキュラー・ブラッシング
o 手巻き、フルパワーで約40時間のパワーリザーブ


ちなみに、ベースとなっているセリタ210はETA2801の汎用版。無論、グレードやモデル、調整にかける時間によって精度は違うが、追い込めばクロノメーター並みの精度は出せるポテンシャルのあるムーブメント(のはず)。




ブリッジをスケルトン化。




黒くなった地板もかっこよさに貢献。








ラグと、クラッチ式ストラップ


MING第三世代バックル - タックアンダーバックル
これは、様々な意見があるだろうから最後に紹介する。まずは写真から見ていただこう。

これが完成形。バックルはやや縦長で、バックル側のストラップには「定革」も「遊革」もない。スッキリしているのは確か。ストラップのほぼすべてが腕に触れており、実は装着感もいいのだ。


これがバックルの姿。もう大体想像がつくとは思うが、装着の仕方は(恐らく)以下の通り。






すなわち、タックアンダー(Tuck Under = 下に押し込む)。もともとストラップをきつく締める人にはちょっととっつきにくいだろう。割と緩めに締める人は割と簡単。最初は、緩めの穴にしてその状態でストラップ先端を入れて行き、途中で自分の穴に入れ直して残りのストラップを押し込んでいけば、割と簡単だろうと思う。いずれにせよ、各自がやりやすい方法で使えばいいと思う。おそらく慣れていくものだろうと思う。








押し込まれる側の余裕を微調整できる。ストラップが馴染んできて柔らかくなったら、もうちょっとぴったりした方がいい、と思う人も出てくると思う。そういう人は、この微調整を利用するといいだろう。

馴染んでみないとわからない、というのがフェアな評価だと思うが、数日一緒に暮らした限りでは「普通の方が楽」だと思ったのは事実。特に、夏は湿気もあり、ストラップを押し込んでいくのに肌との摩擦が大きい。既述の通りじっくりとなじませるまで使ってみないと判断はできないが、非常に面白い仕組みなので、いろいろなストラップで試したいと思う。締めた時の装着感や見た目は間違いなくこちらの方がいい。滑りの良い、肌との摩擦が小さい裏革のストラップで試してみたいと思った。あるいは、先端が薄めにできたストラップとか。。


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さて、今回のMING 37.07のレビューはいかがだっただろうか。とにかく、まだ現物を簡単に見ることができないブランドであるし、特にビジュアルで良くわかるように見せたかった。装着感や操作性にはそれほど多くの言葉は使っていないが、申し分ない。最後の、バックルについてはなるべく詳しく使い方と、個人的な感想を述べさせてもらった。好き嫌いを含め、判断は個人次第だが、レギュラーバックルのストラップも売っているのでそれとの変更はいつでも可能であることを申し添えておく。最近の強烈に値上がりしたブランドストラップとは別世界の値段設定ということも(一昔前はこれが普通の値段だったのだが...)注目して欲しい。

総括としては、このブランドはまだまだ多くの人に行きわたっているとは言えないが、コスト・パフォーマンスの高さを考えると、もっと多くの人に知って欲しいと思う。雲の上のブランドと違い、エントリーバリアは低い。清水の舞台から飛び降りるほどの投資額ではない。最初に書いたように、私のバイアスはたっぷり入っているとは思うが、今後も動向をレポートしていきたい。もちろん、他にも魅力的な独立ブランドはどんどん出てきているが、私の財布が許すブランドは限られる。MINGはその中でも、個人的には将来性も含めて大いに期待している。5周年を迎え、さらに魅力的な機能やデザインのモデルが発表されることが期待される。なんとなく気になり始めている皆様にとって、このレビューがなにがしかのお役に立てたとすれば幸いである。

最後に、我らのような小さな日本の時計サイトにレビューサンプルを送ってくれたMINGチームに心より感謝申し上げる。
https://www.ming.watch/

KIH

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