BaselWorld2018 ラング&ハイネ アントン 実機写真

 By : CC Fan
私CC Fanとしては、初めて参加したバーゼルワールド、昼間の仕事との関係で非常にタイトなスケジュールに加え、フランス全土での管制官のゼネストによるフライト変更やら、フランクフルト空港での接続ミスによって空港のベンチで一夜を過ごすやら、いろいろ思い出深い旅になりました。
PCを持って行ったものの、滞在先のネット回線の問題で現地からはレポートできなかったため、帰国後のレポートとなりました。

最初に取り上げるのは既にニュースとして掲載しているラング&ハイネ(Lang & Heyne)初のトゥールビヨンピース、アントン(Anton)です。
角型ながら微妙にオフセットした正方形の時分ダイヤルと長辺の半分にも及ぶ大きなスモールセコンドというユニークな意匠を持つ兄弟機、ゲオルグ(George)をベースに、スモールセコンドをフライングトゥールビヨンに置き換えています。



ジャーマン・ウォッチメイキングの世界では、トゥールビヨンはフライング構造こそが"本流"ということで、このピースもそれに倣っています。
トゥールビヨンを文字盤側に可視化するのは一般的ですが、地板側があまり抜かれていないため独特な眺めです。



サンプルとして用意されていたのはプラチナとローズゴールド。
グランフーエナメルのダイヤルは同じですが、ケースと針の色によってずいぶん印象が違います。



どちらのケースカラーでも、白文字盤の開口部から地板の色が見え、それがアクセントになります。



ゲオルグ同様、時分針はやや12時側にオフセットしており、ほぼ正方形のインデックスもそれに合わせてオフセットされ、6時側には空白ができています。
それを突き抜けるようにトゥールビヨン(スモールセコンド)が配置され、通常のスモールセコンドよりも存在を主張する独特のデザインはトゥールビヨンを得てより鮮烈になっています。



ゲオルグと並べてみました。
こうして並べることで、ゲオルグの魅力も再確認できます。



ムーブメント側です。
2番車(時分針の軸)までの構造は同じです。
変更部分は、4番車(秒の歯車)を固定にするかわりに脱進機一式をケージに乗せ、4番車のピニオンから回転させるというトゥールビヨン化のお手本のような構造です。
おそらくは美観的な問題で3番車の位置も変更になっています。



フライングトゥールビヨンは両持ちのブリッジで強固に支えられています。
フライング構造のため、ケージはピニオンの両端の2点のみで支持され、支持位置が近いため横向きの力がかかりやすいと思われますが、ボールベアリングではなく伝統的なルビー支持を使っているそうです。
また、開口部の小ささも相まってトゥールビヨンをどのように組み立てているのか理解できていません。
開口部がトゥールビヨンよりも大きければ完成したものを片側から通せば終わりですが、この構造だと両面から組み立てないといけないため、知恵の輪のように見えます。

ゲオルグと比べると、脱進機と4番車がない分スペースが空いた部分にはダイヤの飾り石に挟まれたLANG & HEYNE DRESDENの文字が彫り込まれています。



おそらく、ゲオルグを設計した時点でトゥールビヨンまでは計画されていたのではないでしょうか。



フライングトゥールビヨンは文字盤側にブリッジがなく、かつケージ自体も薄い構造のため、厚みはゲオルグと変わりません。



トゥールビヨンか、あえてのトゥールビヨンなしか…
どちらも魅力的で、選ぶ楽しみが増えたと言えます。

ちなみに、トゥールビヨンケージのテンワ軸にある三又の手裏剣のような部品(写真中央)ですが、オリジナルの緩衝装置だそうです。
ラング&ハイネは今までも完全に仕上げられたムーブメントの目立つテンワの軸に工業的な見栄えの緩衝装置が露出するのを良しとせず、ダイヤモンドの飾り石をつけてきました。

今回、文字盤側のフライングトゥールビヨンで、高さ方向と重さの制約が厳しく、今まで同じ方法で飾り石が取り付けられないため、このようなユニークな緩衝装置を開発して搭載することにしたそうです。
もちろん、ちゃんとテストし既存の緩衝装置と同等の効果があることも確認済みです。
また、三又のケージの止めネジの内、一本が青いのは秒針替わりにするためです。

最後に何枚かブースの様子を。





広くはないながらも、重厚に仕立てられた内装と什器がセンス良く並べられています。



代表で時計師のマルコ・ラング氏と、手前側は代理店ノーブルスタイリング代表 葛西 憲道氏です。

関連 Web Site (メーカー・代理店)
Lang&Heyne(本国サイト・日本語)
http://www.lang-und-heyne.de/ja/

Noble Styling
http://noblestyling.com/