デテント天文台クロノメーター(仮) キャリーケース製作

 By : CC Fan
記事を掲載したデテント天文台クロノメーター(仮)、いよいよ来週の10月1日(月曜日)にはカンタロス(Kantharos)と共に受け取れることになります。
さて、輸送は大手のように"定期便"がある訳ではなく、宅配便で送るのも怖いので、自分で持ち帰る、いわゆるハンキャリ(ハンドキャリー)となり、方法をいくつか検討しましたが、結局頑丈なハードケースに緩衝スポンジを入れる以上の方法はないだろうという結論に至り、色々調べて製作しました。
凝り性な性分で色々とこだわって作ったので紹介させてください。

ケースはこの手の用途では"定番"となっていて、軍隊なども使っているアメリカのペリカンプロダクツ社のポリマーハードケース、通称ペリカンケースを使いました。
クリストフ・クラーレ(Christophe Claret)も時計本体を送るときはシリーズは違うものの、ペリカンケースを使っているのも決め手になりました。
ポリマー(高分子素材=高機能なプラスティック)で作られているため、アルミを使ったケースに比べると強度はほぼ同じで軽いですが、ヒンジの軸など要所要所には金属が使われ、耐久性に不安はありません。
スモールケースシリーズの一番小さいサイズ1120を選択、さらに小さいマイクロケースというものもありますが、密閉構造と緩衝用のスポンジが簡易化されているように見えたので、不採用に。



ノーブルスタイリングギャラリーで色々打ち合わせをしている時に撮影、オレンジ色なのは趣味と万が一にも置き忘れたりしたときに発見しやすいようにです。

右側に移っているのは何かで話題になり、ノーブルスタイリング葛西さんが見つけてきていたマゼラン(Magellan)の販売用什器、探検家フェルディナンド・マゼランから名づけられたブランドで、地球儀のような文字盤とドーム状のサファイアクリスタル風防(塊から削り出すので時計の価格の割にハイコスト)を持ちますが、現在は在庫なし。
ノーブルスタイリングのWeb Siteには情報が残っており、葛西さん曰く、"これとジュリアーノ・マッツォーリから会社を始めた懐かしいブランド"とのこと、一度だけ実物を拝見したことがありますが、良い世界観を持つ時計でした。

マゼランはさておき、ケースを。



ケース内には緩衝用のスポンジがぎっしりと詰まっています。
蓋側には隙間を埋めつつ過剰な圧力がかからない凹凸状のスポンジが、本体側には高密度なスポンジが詰まっており、採寸したケース形状に合わせた切り抜きをDIYで作成済み。



自画自賛ですが、割ときれいではないでしょうか。
もちろん、フリーハンドでここまできれいに作れるわけもなく、ペリカンプロダクツ独特のPick 'N' Pluckというスポンジのおかげです。
これはスポンジにウォーターカッターであらかじめさいの目に切れ目が入れられており、選んで(Pick)引き抜く(Pluck)ことで綺麗な四角を抜くことができる仕組みです。
抜いたスポンジを切って戻すことで、高さの違う段を作ることができ、要所を接着剤で固定することにより、ほとんど塊のスポンジをくり抜いたのと同じレベルの強度を出すことができます。
よりこだわる場合、特に曲線が必要な場合はスポンジを専門の業者でウォーターカッターで抜いてもらうそうですが、今回はそこまではしませんでした。

配置は一週間ぐらいCADで図を描いて悩み、最優先すべき"保護"という観点を重視することにし、あくまで保護と保管のためのケースと考え、ディスプレイ用は別途考えます。
基本的な方針はなるべくスポンジは厚くなるようにした方がいい、支えるのはケースでリュウズ周りには圧力がかからないように宙に浮いた方がいい、と考えこのような形になりました。
右側の大きな凹部分がリュウズ用の逃げ、それ以外の3方向の凹部分は引き抜くときに指をかけるためのスペースです。

蓋側に見える黒い帯が気密性を支えるためのパッキン(O-ring)です、本体側の凸部分と噛み合い、ラッチで圧力をかけることで密閉されます。
気密性が高すぎると気圧変化で開かなくなったり、更には変形・破壊につながりますが、空気だけを通す気圧調整バルブが外の気圧とつりあうように自動調整するため、心配することはありません。
オーブン加熱で再生できる専用の乾燥剤も用意されており、時計の大敵である湿気にも対応できます、あまりにもミリタリー然とした外観は人を選びそうではありますが、コレクションの収納にも良いのではないでしょうか?



同じく悩んだ銘板。
本来はペリカンケースのロゴが貼られていますが、勢いで剥がし、ラベルプリンターで製作、ペリカンはアメリカの会社なのでおそらくインチでぴったりになるような寸法だと思われますが、ラベルプリンターはミリ単位なので微妙に余っているのが目立たないように貼り付けました。

GoogleとWikipediaを駆使したフランス語表記で、上が天文台クロノメーター(Chronomètre d'observatoire)、下の2行がピボット・デテント脱進機(Échappement à détente pivotée)、真ん中にはメーカーの名前を書こうと思っていたのですが、無銘なので空白となっています。

もう一点工夫したところがありますが、それは次の機会に…

最後にマゼランのロゴを。



計測機器のコンパスを取り入れたユニークな意匠です。

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