カンタロスの小話 里帰り途中経過とフルチタンケースのディスコン

 By : CC Fan
一ヶ月ほど前、激情に任せて、ダウナーな話を投稿したクリストフ・クラーレ(Christophe Claret)のカンタロス(Kantharos)、半ば炎上を覚悟していましたが、思ったよりもポジティブな反応がいただけて、非常にありがたかったです。



※今回の写真は、本筋にあまり関係なく、クラーレ社訪問の時の別写真です。

ハンドキャリー後に、組み立てワークショップに戻り、原因究明とメンテナンスが完了したという連絡が届きました。
詳細は別途レポートが届くそうですが、とりあえず問題はなくなったということです。

非常に残念ながら、先方が"何かの折"に持ってくる機会もなさそうなので、しばらく様子を見てもらったのち、10月のスイス行にて自ら引き取りを行う予定です。
なるべく早く受け取り、スイス滞在中もチェックする構えで…



さて、タイトルにもあるように今回はふと気が付いて無軌道に書いた小話です。
クラーレ社のWeb サイトカンタロスのページ、中央のOPTIONS(ラインナップのバリエーション)を見ると何かが足りなくないでしょうか…?



以前紹介した時には5機種あったラインナップが減り、4機種になっています!
リファレンス MTR.MBA13.901~905のうち、ちょうど中間になるMTR.MBA13.903が消えています。
これはオールグレード5チタン・表面処理なしのケースでロジウム文字盤のモデルで、私の個体の基になったモデルです。

私のはユニークピースこそ謳えませんでしたが、MTR.MBA13.903のチタンケースにMTR.MBA13.902のチャコールグレー文字盤・ロジウムカウンターを組み合わせたもので、ケースが一番気に入っていただけにディスコンはショックです。
正直、SIHHに持ってこないなど、最近はカンタロス自体があまりいい扱いをされていませんが、その中でも更にラインナップからも消えてしまったのはなぜか考えてみたいと思います。

変な日本人が普通は受け付けない注文で文字盤を変更、日常使いしてやたら止まったと言ってくるうえに、ワークショップにまで乗り込んで来たのがムカついたので消した、という理由でなく、順当な理由を考えるとオールチタンだけは余計な手間がかかっているというのが理由ではないかと考えられます。

クラーレのケースはいわゆるシリンダーケースで、グレード5チタンのシリンダー状のミドルケースにグレード5チタンまたは貴金属のベゼルと裏蓋がねじ止めされている構造になっています。
で、このミドルケースが厄介で、フルチタン以外はPVDブラックコーティングが施されているのに対し、フルチタンだけはチタン無垢です。
フルチタンは恐らくではありますが、"アクセッサブル"で、価格を10万スイスフラン以下にするために、なるべく簡易化したのでしょうが、ほかのケースと互換性がない別のパーツを用意しなくてはいけなくなってしまいました。
更に、文字盤の部品もチャコールグレーは3機種共通ですが、専用のロジウム文字盤が必要です。

それでも、バンバン作れて、バンバン売れるならこれぐらいの部品の差異は特に問題にならないでしょう、しかし現実には複雑すぎて一番技術力のあるアトリエでないと組み立てられない上に、そこまで売れているわけでもない、という状況になってしまい、"値段は一番安いくせに専用部品だけは多い"というありがたくないラインナップは順当に整理された…と考えられます。



ただ、繰り返しになっているかもしれませんが、カンタロスは身内びいきの私から見ても、意欲的過ぎるところはあると思いますが、クラーレ社が改善する意思がある限りは、この挑戦自体を失敗とは言いたくないと思っています。
逆に、彼らがさじを投げたとき、私がどうするかは神のみぞ知るです。

当時のクラーレ社がいかにカンタロスに期待していたかは下記の事柄からもわかります。
  • 2013年の新作はカンタロスのみ
  • ブランド初の非限定ピース
  • 他のピースと比べ価格を抑えた
  • 複雑機構はちゃんと入れる
  • いきなり5バリエーションを準備
  • 気合いの入ったプロモーションムービー
特にプロモーションムービーは会社(マニュファクチュール・クラーレ)紹介を兼ねているソプラノ(Soprano)を除けば、いまだ比肩するものがないぐらい凝っています。



ブランド側がこれだけ入れ込んでいたとしても、反応が残念だったというのは悲しいことです。
日本的には引き合いはあったものの、ほとんど物が見られず、機会損失も相当あったようですが…
手元にある状態であれば、機会を作るために、ご興味がある方にはお見せしてもよいとさえ思っていますが、今はないのが残念です。

予想外にコストがかかった結果、冗談めかしていたとはいえ、『あなたは、(クラーレのタイムピースのオーナーの中で)一番と言っていいほど得な買い物をした』というのは偽らざる本心ではなかったかと思っています。

ディスコンはショックな半面、自分の持っているピースがレアになったという嬉しさがあるのは事実です。
ただ、それで価値がとか資産がどうこうと言う気はありません、それはただの"結果"であって時計に自分から求めるものではないと思っているからです。
ここはあまり深く言うとまたダウナーに方向に行きそうなので、この辺で…

とりあえずは、10月に乞うご期待!
オフ会などで、グルーベル フォルセイのように、"まずは見る"ができるようにはしたいです。
と無軌道にまとめました。

関連 Web Site (メーカー・代理店)

CHRISTOPHE CLARET
http://www.christopheclaret.com/

Noble Styling Inc.
http://noblestyling.com/