Hautlence Vortex Primary & Unique Piece

 By : CC Fan
オートランス(Hautlence)の新作・ユニークピースを拝見できた新作発表会に参加してきました。
本国より、創業者の一人で現CEOのサンドロ・レジネッリ(Sandro Reginelli)氏が来日し、新作の紹介とプレゼンテーションを行いました。
一度ブランドを離れた後、モーリス・ラクロワ(Maurice Lacroix)に在籍していましたが、今年の1月にCEOとして戻ってきたそうです。


Sandro Reginelli氏

オートランスは2004年にスイス・ヌーシャテル(Neuchatel)地方のスペシャリストが集まって設立されたブランドで、ブランド名HAUTLENCEはNeuchatelのアナグラムです。
現在はH.モーザーなどと同じ、ジョルジュ-アンリ・メイラン氏のMELBホールディングスの傘下になっています。
この買収により、H.モーザーとのコラボレーションで、モーザーのトゥールビヨンムーブメントを使ったモデルなども展開しています。

先ずはサンドロ氏によるブランド・新作のプレゼンテーションが行われました。


ブランドの立ち位置

オートランスは、3つのテーマに則って活動しているそうです。
Gentlemen…洗練された製品を表す
Rebels…洗練の中にちょっとした遊び心を含める
Club…希少性・オーナーの繋がり

今回の新作ボルテックス プライマリー(Vortex Primary)も上記のテーマに沿って製作されました。


Vortex Primary

元サッカー選手で現在はデザイナー・俳優として活躍しているエリック・カントナ(Eric Cantona)氏のデザインを実現したモデルです。
氏は赤色・黄色・青色の三色を風防に使うことを求めたそうで、各色は塗装ではなく、素材自体が色を持つスピネルとサファイヤを切り出し、ステンドグラスのように19個の独立したパネルを組み合わせて作られます。
色の境界面には支持部分が必要なため、通常のボルテックスとも異なる専用のケースを使っており、ケース開発に一年程度必要だったそうです。

ムーブメントの動きは説明が難しいため、まずは動画をご覧ください。


ムーブメントHL2.0の解説(オートランスYouTubeチャネルより)

これはボルテックスの前機種のHL2.0の動画ですが、ムーブメントの基礎構造は同じです。
レトログラード分表示が0に戻るたびに、時間表示のチェーンが一目盛り分動かされ、それによって脱進機が載ったブリッジ全体が60度回転する機構です。
チェーンを動かす動力は専用の香箱(コンプリケーション香箱)から供給され、タイミングは計時輪列側からコネクティングロッドで伝え、速度はミニッツリピーターと同様のスピードレギュレータにより制御されます。
姿勢差打消しという目的もありますが、何より"動きが面白い"に尽きます。


Vortex Primary(左) Unique Piece Ti(中央) Unique Piece Ti PVD(右)

プライマリーとユニークピースのグレード5チタン、ユニークピースのPVDグレード5チタンケースです。
文字盤の作り、ムーブメントの仕上げなども異なりそれぞれに個性があります。
個人的には磨かれたグレード5チタンが好きなので中央のユニークピースが最も好みです。
サファイヤを立体的に削り出した風防だけでもとても手間がかかっていそうです。


Unique Piece Ti(左) Unique Piece Ti PVD(中央) Vortex Primary(右) 

ユニークピースとプライマリーで背面のシースルーバックの構造が違うこともわかります。


プライマリーのステンドグラス的な作り

プライマリーはシリアル番号(一部削除)でも分かるように、18本の限定生産になっています。


HL2.5

ボルテックスより前に発表されたご先祖様のHL2.5です。
基本は同じムーブメントですが、また表情が違います。

オートランスのデビュー作に近いHLRS01も拝見できました。


HLRS01

レトログラードミニッツのタイミングをリンクを組み合わせたコネクティングロッドでジャンピングアワーに伝える構造で、ロッドの動きを可視化し、動きの面白さを表現しています。
こちらはコンプリケーション用に別の香箱を搭載まではしておらず、スネイルカムによるトルク蓄積によってジャンピングアワーを駆動します。
ケースはチタン、PVDチタン、ゴールドを組み合わせた凝った作りです。


HLRS01 (ムーブメント側)

コネクティングロッドなどの機構はを文字盤側に配しているため、ムーブメント側はシンプルです。

レトログラードではないタイプではSoprodのムーブメントを使ったモデルもあります。


Destination

最後にオートランスとしては珍しいラウンド型ケースを使ったトゥールビヨンです。


トゥールビヨン

コート・ド・ジュネーブの基台にサファイアクリスタルのディスクを浮かせて設置し、そこにインデックスを載せるという凝った構造の文字盤です。
ムーブメントは前述の通り、H.モーザーの自動巻きトゥールビヨンムーブメントです。
文字盤の構造のためにモーザーに比べるとケースが厚めになっています。
同じムーブメントを使っていてもかなり印象が異なります。


ケースバック側

こちらは8本限定で最後の1本だそうです。

ボルテックス プライマリーやユニークピースをはじめとしてこれだけのコレクションを一度に拝見できる機会はなかなかなく、非常に興味深かったです。
サンドロ氏は8日に出国するので、7日は何時までかは不明ですがノーブルスタイリングギャラリーに展示されています。
特にボルテックスやHL2.5のブリッジが回転する様子は是非ご覧ください。

"問題作" ラビリンス(Labyrinth)については記事を分けます。

関連 Web Site

Hautlence
http://www.hautlence.com/en/

Hautlence YouTube Channel
https://www.youtube.com/user/HAUTLENCE

Noble Styling
http://noblestyling.com/