アントン・スハノフ ファロス 1か月の精度と8日巻き(1週間巻き)のメリット

 By : CC Fan

緊急事態宣言の直前に、近々来日緊急開封会納品会と詳細レポート追加動画と時合わせをお伝えした気鋭のロシア人ウォッチメーカー、アントン・スハノフ(Anton Suhanov)による3軸トゥールビヨンクロック、ファロス(Pharos)。
納品と上に上げた記事を書いたのが3月末で、この後の1か月の激動を振り返ると、結果論ではありますが本当に良いタイミングだったかと思います。
昨今のロシアは心配ですが…

さて、別用で「某ビッグカスタマー氏」にお会いする機会があったので、個人的に気になっている精度と使い勝手について伺ってきました。

最初に結論を書くと、感覚の話になってしまいますが、「1か月の最初にあわせ、その後1週間に1回巻きあげていれば、1か月の間は表示のズレは気にならない」ぐらいの精度と「これは本当にいい買い物だった」と言う感想のようです。
必要十分以上の精度ではないかとの評価でした。



スモールセコンドを3軸トゥールビヨン中間軸を駆動する歯車(60秒で1周)に設けるペリフェラル・セコンドにしたおかげでメインの文字盤は2針のシンプルな構成、厚みのある針と適正なインデックスも相まって視認性は非常に良いと感じました。
今更、写真を見直して気が付いたのですが、墨入れされたANTON SUHANOVとPHAROSのレターの他に、6時位置に控えめにMADE IN RUSSIAとも入れられています。



ペリフェラル・セコンド、回転しながら秒単位を表示します。
表示(見やすさ)とデザイン(文字がうるさすぎない)が良いレベルでバランスしていると感じ、これを数字に意味がある表示とみるか、動いていれば良いと考える動作インジケーターとしてみるかは微妙な勝負ですが、どちらの使い方にも適合できそうです。
こちらの歯車はトゥールビヨンを駆動する歯車ですが、逆サイドの空回りする歯車にも同じものがあり、2つの位相はちゃんと合わせられています。
最外周は3分で1周、ペリフェラル・セコンドは1分で1周なので同じ位置に来た時には同じ秒を表示しているので位置でも大まかな秒数は知ることができます。



カスタマー氏も驚いていたのはこの時合わせの滑らかさ、カギ自体の大きさもあるのかもしれませんが、一切引っかかるような感触がないばかりか、擦るような感覚さえなく、体験したことのない滑らかさで抵抗なくクルクル回ります。
この大きさなのに、腕時計よりも軽いかもしれません。
この感覚はどれだけ文章で伝えようとしても伝わらず、「百聞は一見に如かず」かと思います。

減速比が大きくて抵抗が分からないようになっているのかな?と思って観察すると、1回転で1時間分進む通常の変速比なので、純粋に時合わせ輪列の抵抗が極めて小さいことによって実現されているようです、予想レベルでは、転がり抵抗になるボールベアリングをうまく使いこなしているのではないか?という結論です。



時合わせとは逆に巻き上げの重さも今まで体験したことのないレベルです。
しかし、これもバネの強さとコハゼの間隔の広さによって「重い」とは感じますが、「硬い」とか「引っかかる」という感覚は皆無、内部の軸の精度が良く、巻き上げカギからゼンマイへダイレクトにトルクが伝わっていることが感じられます。



「帆」型のパワーリザーブインジケーターによってゼンマイ巻き残量を知ることもできますが、8日巻きなのを活かし、「1週間の決まった日に巻けばいい」と習慣づけておけば止まることはありません。
これはチャペック学校ソヌリで実感したことですが、むやみにパワーリザーブを伸ばすことを目的にするのではなく、何かの習慣に合わせられるような値にすることの方が重要で、社会システムを考えると多くの人の基本ルーチンであろう1週間をターゲットにするのは良い考えではないでしょうか。
これは古典に8日巻きのクロックが多い理由も同じではないかと思っています。



実質的な一作目というエクスキューズ(言い訳)抜きにしても「製品」としてちゃんと完成しているファロス。
カスタマー氏も「いい買い物だった」と大満足の様で本当に良かったですし、私は納品に同席できただけでも幸せです。

ロシアにも行きたいね…?

関連 Web Site

Workshop ≪ANTON SUHANOV≫
http://www.anton-suhanov.com/

Noble Styling
http://noblestyling.com/