NIxie Machine III: フランク・ブッフバルトの第3弾にして最終作となるNixie Machine。 M.A.D.ギャラリーにて限定展示

 From : MB&F (エムビー アンド エフ )

ジュネーブ、ドバイ、香港そして台北のM.A.D.ギャラリーのみで購入可能な18点限定のコレクション。そこに見られる最初のNixie Machineからの進化を、ぜひ皆様にも感じていただきたい。

フランク・ブッフバルトの手作りランプの見事なコレクション「Machine Lights」は、ジュネーブに設立された初のM.A.D.ギャラリーのオープン時から、他の芸術家の作品と並んで展示されている。同作品群は、MB&Fの創業者マクシミリアン・ブッサーから高い評価を受け、ブッフバルトの作品は各地のM.A.D.ギャラリーで常設展示されることになった。それから数年後に制作された「Nixie Machine」第1号は、エイリアンのようなSF風のデザインが引き継がれ、ビンテージのNixie管を活用した置き時計であった。


Nixie Machine III

1950年代に登場したNixie管は、冷陰極表示装置とも呼ばれ、グロー放電発光を使用して数を表示する一般的な方法となった。 Nixieという名称は、バローズ社の”NIX I”に由来すると考えられている。”Numeric Indicator eXperimental No.1”(実験的数字表示器第1号)の略語とされる。



各ガラス管にはネオンを中心としたガスが低圧で充填され、メッシュ状の陽極と数字の形をした層状の陰極があり、0~9の各数字を表示するために個別の陰極が必要となる。 電圧が印加されると各陰極を覆うように特徴的な赤橙色のグロー放電発光が起こる。 複数の管に電子回路を接続した複数桁のNixie管表示は、コンピュータ、時計、周波数カウンタなどに頻繁に使用された。しかしその後、おそらく魅力には欠けるが、より実用的かつ安価な発光ダイオード(LED)表示などに取って代わられてしまった。



新作のNixie Machine IIIは、フランク・ブッフバルトの作品の進化版となる。デザインや構築、細かな仕上げに至るまで、ダリボル・ファルニーが制作した6本のNixie管を用いた置き時計のすべてのディテールがそれぞれ手作業で仕上げられている(別項参照)。

Nixie Machineシリーズの第1号と第2号に改良を加えたNixie Machine最終作の第3号では、フランク・ブッフバルトの誇るデザインと構造的な原則が斬新なアート作品へと昇華されており、コンパクトで力強いフォルムや、非の打ち所がないバランスなど、デザインの機械的な側面に重点が置かれている。



まず目に入るのは、下部構造の上に並んでいる6本のNixie管であり、それぞれのガラス管内に浮かぶ数字へと無意識に目を奪われるだろう。だがパーツを一つ一つ観察してみると、マシン独自の構造の根幹をなす原則が見て取れるはずだ。2本の支柱は、巨大な鋼鉄製のボルトと鋼鉄・真鍮製のディスクによって、頑丈な土台と中心の円柱に固定されている。2本の支柱の先端にはもう一つ支えが付いており、並んだチューブをアームのように支える姿は、見る者に時間を「手渡している」ような印象を与える。



装置の核部分は、柔軟に曲がる金属管を通じてNixie管に電力と情報を供給するだけでなく、本体のスイッチも搭載されており、神秘的な「目」のように青みを帯びた光を放っている。このNixie Machine第3号の特殊な設計では、新たな電子回路基板を開発する必要が生じたため、回路部品と接続ピン66本を機械の本体のサイズに合わせて小さな円形の表面に圧縮している。特殊用途のNixie管の製作者・エンジニアであり、Nixie Machines IIとIIIをフランク・ブッフバルトと共同で制作したダリボル・ファルニーにとって、このイノベーションは大きな快挙であった。



Nixie Machine IIIは無垢のステンレス鋼製であり、どのパーツにも手作業による研磨とポリッシュ仕上げが施されている。

Nixie Machine IIIの中核に用いられている電子装置は、全く斬新な方法で時間を表示する。WI-FIで機能する強力な電子装置を中核に備えているため、インターネットへの接続によって常に正確な時刻を刻み、手動で設定する必要性から開放してくれる。

全ての設定・特別機能(スクロール効果、日中/夜間モード、数字の調光制御、タイムゾーン設定など)をオンラインで合わせられるため、取扱説明書も不要になった。時計は自律的であり、オンライン時にもオフライン時にも動かすことが可能である。


Machine Lights



ブッフバルト作のMachine Lightsは、まるでエイリアンのような四脚の台と、人体さながらのシンメトリー効果により、解剖学的フォルムと呼べるほど威厳のある手作りランプである。

ブッフバルトは自ら創作した機械について次のように記している。「注意深く観察すれば、Machine Lightsは人の手ではない源から輝きを放っていることに気づくはずです。私はこの作品に10年以上取り組み続けましたが、本当は自分の作品だとは思っていません。Machine Lightsは自身の性格を持った生き物なんです。」

ブッフバルトが、自らの彫りが生み出す光のデザインの方向が合っていると感じるまでには長い時間が必要で、完全に満足したと言えるまでにはさらに長い時間を要した。「個々のランプの模型は、着想を得たときに思いつくまま設計したものではありません。」と説明する。 「理解し難いが意味のある形を実現しようと、長い間暗中模索したというべきでしょう。」



ランプの一台一台は200以上のパーツを複雑に組み合わせて制作しており、つや出し・黒染め加工を施された鋼鉄によって、深い艶のある真鍮と可視光フィラメントが発する暖かくて黄色い輝きが引き立てられている。真鍮パーツは全て入念に手で磨かれ、鋼鉄パーツは黒い絹を思わせるまで何回も化学薬品を用いて手作業にて艶出しされている。作品には手吹きのガラス球が添えられることも多い。

10年以上もの間をMachine Lightコレクションの様々なデザイン考案に費やしてきたブッフバルトはこう言う。「ようやくMachine Lightsが私の想像する世界を描き出すようになり、 今や十分なレベルの完成度に達したように思います。」

開発プロセス

ブッフバルトの作品が目標とするのは、世代を超えて受け継がれていくことだ。特別なデザイン方法に合わせて制作しているわけではないので、現在のトレンドや市場からの要求にとらわれずオブジェを自由に制作でき、顧客や芸術鑑定家からの好意的な反応も参考にしない。

ブッフバルトの哲学および着想は、過去や日常の経験から得たものだ。「鉛筆、糊、段ボール…鉄道駅、蒸気機関車…子ども時代の思い出。創造力と熱意こそ、私の人生を紡いできた黄金の糸です。これこそが私の原動力なのです。」と説明する。



新たな開発に取り掛かるにあたり、まず簡単に素早くスケッチを行い、基礎として使う。その後、デッサンを繰り返していく。ブッフバルトは普段、大まかな下絵は鉛筆とマーカーペンで描き、気負いなく変更を加えていくことで新しいプロジェクトの本質を見極めていく。

「私の作業はオープンで、素早く修正可能でなければなりません。いつでも一筆で細部の変更が可能です。これは絶えず進化していくプロセスなのです。」とブッフバルトは説明する。「アイデアや印象をフォローしていきます。私はスケッチやデッサンが大好きです。自分のビジョンに命を与えてくれるからです。もし頭の中でアイデアを具体化できなければ、満たさされない気分になります。」



スケッチが完成すれば製図作業を行うが、芸術的な作業が工房では続く。素材の性質や思いついたアイデア次第で、当初のコンセプトが変容する場合もある。興奮に満ちたダイナミックなプロセスだ。

ブッフバルトにとって金属は創造的な作品を製作するのに完璧な素材であり、様々な技術を駆使している。例えば、溶鉱炉で溶かし、巨大な機械で成形することを「創造の営み」のように感じる。エネルギーとパワーが金属に注ぎ込まれるのだ。

バックグラウンド-フランク・ブッフバルト

ベルリンに拠点を置くフランク・ブッフバルトは1956年、ドイツのハノーバーに生まれた。ベルリン芸術大学でデザインを専攻した後、フリーランスのアーティスト、SFイラストレーターとして働き、1993年から金属製家具のデザインと製作に傾倒していく。

あらゆる種類の金属製家具を製作したが、徐々にランプの製作に関心を向け尽力するようになった。しかし、自らの作り出したいわば光の彫刻のデザインに満足するには長い時間を要した。



長年使用可能なオブジェを入念に制作するブッフバルトのスタジオは、ベルリンの古い工場を改装した建物の中にある。レンガ、大きな窓、暗い階段、アンティークな電気スイッチが備わり、第二次大戦中に受けた損傷が目に見える。入口には鋼鉄棒と金属プレートがはめ込まれている。スタジオの中に入ると、壁一帯がスケッチで覆われ、作業机には旋盤、溶接機、手作業用の機器がずらりと並ぶ。熟練したアーティストが素材を使って個性を表現するのに必要なものが何でも揃う。

ブッサーは作業に取り組むブッフバルトの様子を見る機会に恵まれた。「素晴らしい経験でしたよ。」 MB&Fの創設者である彼は言う。「フランクも彼のアトリエも本当に見事だ。金属棒や金属塊でいっぱいなのです。」 彼は何でも自分でデザインし、旋盤にかけ、組立て、仕上げる。それこそが彼にとって日常なのです。」

「フランク・ブッフバルトの Machine Lightsは、M.A.D.ギャラリーの要となる優れた機械アートの典型です。」 とブッサーは付言する。「フランクは光を放つマシンを創作しています。彼の作品は実用を超越し、正真正銘、芸術作品の域に達しています。」

一つ一つの作品にブッフバルトの魂が込められている。彼の熱意は、きめ細かな唯一無二の創造性あふれる、彼の芸術作品に見て取ることができるのだ。

バックグラウンド – ダリボル・ファルニー

Nixie管に対する深い情熱からファルニーは長年にわたり研究と実験を重ね、著名な「Z568M」をもとに現代的なNixie管を製作した。2年間にわたり数多くの試行錯誤を繰り返したが、彼の熱意そしてエンジニアとしての経験に支えられて自身の作品「RIZ658M」を完成させた。

ファルニーがNixie管を制作するスタジオは、チェコのトポルナ近郊の古城の中にあり、実験室と工房を兼ねている。室内にはガストーチ、ネオンガス容器、点溶接機、真空ポンプ、漏電探知機といった数多くの技術装置、その他、真空Nixie管を正確・完璧に製作するために重要な機器が数多く揃っている。


詳細についてはこちらまでお問い合わせください:

Arnaud Légeret(MB&F SA, Rue Verdaine 11, CH-1204 Genève, Switzerland)
Eメール : arl@mbandf.com 電話 : 41 22 508 10 39