Hモーザー「ストリームライナー・パーペチュアルムーン コンセプト メテオライト」で高精度ムーンフェイズの「合わせ方」を考える

 By : CC Fan

メテオライトを文字盤に採用したH. モーザーの「ストリームライナー・パーペチュアルムーン コンセプト メテオライト」
、インタビューを通じて「高精度ムーンフェイズ」に相応しい調整機構を持っている、という事を改めて理解できましたのでレポートします。



このムーンフェイズは計算上の精度は1027年に1日の誤差、他のブランドでも122年に1日といった「高精度ムーンフェイズ」というものがアピールされています。

元々のムーンフェイズは月齢の平均周期29.53…日が約29.5日であることを利用し、それを2倍した整数値59日の歯と2つの月を持つムーンフェイズ表示を1日ずつ送る、というカレンダーと同様の機構で実現されていました、あくまで「近似」であるので数年で誤差が蓄積して1日分のズレとなるため修正が必要、新しい機構ではそれが必要ないというのが「高精度ムーンフェイズ」側の言い分です。
高精度ムーンフェイズの実現方法はいくつかありますが、中間車を入れて変速比をより正確にする、という方法に帰着し、だいたい122日に1日あたりの高精度、という値に落ちつきます。

さて、機構は確かにそれだけの精度を持っている、という事は分かりました、しかし「その精度に相応しい」調整機構はありますか?と聞いてあまり満足の得られる答えが返ってきたことはありません。
モーザーのムーンフェイズにもかかわっているストレーラー先生、または西暦表示カレンダー含め全連動で原理的にズレないIWCぐらいで、他は29.5日用の1日送りプッシャーをそのまま踏襲しているものがほとんどです。
この場合、結局精度を上げてもその正確さで合わせることはできない、という事になります。

計算してみましょう、一般的な高精度ムーンフェイズは122日に1日の誤差で、1年は閏年で整数化する前の日数は約365.24日なので、日数に直すと44,559日に1日の誤差で調整できないと機構そのものの精度より調整による誤差の方が大きくなる、という事になります。
1日は1440分で、月齢の1周期29.5日を分に変換し、42,480分に1分とすると先程の日付の全周期と誤差のオーダーがだいたい等しくなることが分かります、すなわち「高精度」を本当に活かすためには最低でも分単位で月齢を合わせる機構、そして分精度のためには1日ごとではなく時分針から連続駆動する方法でなければならないでしょう。

モーザーは時分針から駆動する方法と調整機構にひと工夫を加えることで問題をスマートに解決して見せました。



ムーンフェイズ修正プッシャーは1日ごと「進める」ではなく、月齢周期の1/8ずつ「切り上げる」動作をします。

これにより、現在の時刻と1/8周期単位の月齢がきわめて正確に同期し、今までの誤差は切り上げの効果によって消滅します。
また、月齢は時分針から駆動されるため、時刻設定に連動して進み・戻りします。



このような「月齢テーブル」が付属しており、現在時刻から最も近い新月・上弦・満月・下弦のどこかを見つけ出します、すると月齢と対応する日付・時刻が分かるためまず時刻をその時刻に合わせ、プッシャーで月齢を合わせます、これによって月齢と時刻の位相が正確に合いました。
次に時分針を進み・戻しして現在時刻に合わせます、日付表示がないため24時間以上の調整は暗算が必要ですが、最悪ケースで7日程度(29.5/4=7.3)なので問題にはならないでしょう。

機構的には1/8周期で出来るんだから、このテーブルも1/8にしたら?と伺ったところ、「信頼できる月齢のソースは新月・上弦・満月・下弦しかなかった」とのこと、直線近似しちゃってもいい気はしますが…



止まった時間が分かっている、止めた時間が数日であれば時間をその分進めることで位相があっている月齢も連動して正確に合わされます、それ以上であれば再調整ですが、見てきたように非常に簡単な調整です。

1/8周期単位で切り上げることで1日単位進めで問題になる「現在値が分かりにくい」という問題も間接的に解決しています、以前の設計では1/4周期ごとの「補助線」が入っていましたが、この切り上げシステムであれば要らないのでよりシンプルにするために省かれています。

時分針から駆動していることは認識していましたが、1/8周期単位の「切り上げ」システムによって合わせやすい!という事を今更知ったのでレポートしました。
以前はベースが手巻きでしたが、再設計に合わせて自動巻きになり、より使いやすくなったこともポイントでしょう。


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