時計愛好家のためのヨーロッパ(IWC シャフハウゼン ミュージアム) by k.hillfield

 By : Guest Blog

バーゼルワールドから日本に帰国する前に、スイス・シャフハウゼンにあるインターナショナルウォッチカンパニー(IWC)のミュージアムに行ってきました。写真撮影は禁止でしたので、文字中心でお伝えします。


●ミュージアム外観。(著者による撮影)


チューリッヒから電車で約1時間弱。 シャフハウゼンはドイツとの国境に位置しています。街にはIWCの発展に寄与したライン川が流れています。このライン川の水力発電こそが、黎明期のIWCの成長を支えた資源なのです。


チューリッヒからシャフハウゼンに向かう車窓より。(著者による撮影)


ミュージアムの展示自体は大きくはありませんが、IWCの歴史を感じることができる場所です。 ヴィンテージウォッチといえば、一般に1930年代後半から70年代前半までが黄金期と言えると思います。 IWCからも1930年代後半より、IWCは美しい手巻きムーブメントの代表として有名なCal.83や、その後継機のセンターセコンドのCal.60、そして、大量生産されたCal.89、アルバート・ペラトンによる自動巻きムーブメントなど次々と著名なムーブメントが発売されました。もちろんこれらのムーブメントを搭載したモデルはミュージアムに展示されています。


●Cal. 60。w1944年製。 (著者私物)


また、ミッドセンチュリーに作られたインジュニアの初期モデルや、マークシリーズの原点であるマーク11、ポルトギーゼのオリジナルモデルなど、現行モデルのオリジナルモデルも展示されています。

●インジュニアオリジナルモデルとポルトギーゼオリジナルモデル。 (IWCミュージアム 公式アプリより)


もちろん1993年に復刻されたポルトギーゼ(ジュビリーギーゼ)も3種類セットで置いていますので、オリジナルモデルとジュビリーギーゼを見比べることもできます。オリジナルモデルはスモールセコンドの針が糸のように繊細で、いかにも懐中時計の針といった印象を受けました。

個人的な話になるのですが、展示の1950年前後の広告から、当時のオリジナルのストラップについて知ることができたのも、コレクターとしてとてもありがたかったです。

しかし、IWCの魅力、そしてこの博物館の面白さは1980年代の時計にあるのではないかと考えます。
他のブランドはいまいちパッとしないことも多い1980年代ですが、IWCの1980年代はとても個性的です。
まず、1980年代、IWCは懐中時計を本気で作っています。 展示されているコンプリケーション搭載の懐中時計を見ると、その機能や仕上げは、コンプリケーションを搭載した懐中時計が成熟期を迎えた1900年前後を想起させるほどです。

一方で新素材の着手も進めました。 IWCはチタンをケースに使った腕時計を量産化した初期のブランドの1つであり、チタンケースのモデルをポルシェデザインとのダブルネームで世に送り出しました。

そして、コンプリケーションと新素材を組み合わせたダヴィンチも発売されました。 (注)ダヴィンチ自体は1969年に登場したブランド初のクオーツモデルが初代。パーペチュアルカレンダーとクロノグラフを搭載した機械式時計のダヴィンチは1985年からとなります。
展示されているモデルは1980年代中盤に作られ、パーペチュアルカレンダー搭載、ケースに酸化ジルコニウムを使用していました。


 ●1980年代中盤に発表された酸化ジルコニウムを使用したダヴィンチ。 (IWCミュージアム 公式アプリより)

懐中時計と新素材―IWCは1980年代に、相反する2つのものに注力し、それぞれを融合したモデルも発売しました。今から考えると、現代の高級時計の在り方を先取りしていたのかもしれません。

                         ●シャフハウゼンの街中にて。(著者による撮影)



IWCシャフハウゼン ミュージアム

予約不要
入場料6スイスフラン
営業時間 火曜日〜金曜日 15時〜17時 土曜日 10時〜17時
(備考)ブティック併設
公式URL https://www.iwc.com/ja/about/museum/


IWCミュージアム 公式アプリ
https://www.iwc.com/ja/about/museum/#app

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