クリストフ・クラーレ 「マエストロ」を借りて、ノーブルスタイリングギャラリーに展示する話(+ブラックジャックとオンリーウォッチ)

 By : CC Fan
7月の取材紀行で引き取ってきたものの、”多少”の問題が発生したカンタロス、相談の結果、いったん戻すことになりました。
今回の問題点は以下の2点。
  • 自動巻き機構が巻き上げず、手巻きしないと止まる
  • ストップセコンド機構が誤動作し、全体が止まる
です。
まあ、どちらも機構的にウィークポイントなのはわかっていたところなので、動くまでやってもらうしかないかなと…

さて、中止になったイベントで手渡しする予定でしたが、中止だったので普通に送ることになり、入れ替わりで今回も”代車”が届きました。
個人的にはクレイジーなデテントトゥールビヨン、アンジェリコが良かったのですが、”プロトタイプしかない”ということでNG、”正しいアクセッサブルピース”と呼んでいるマエストロ(Maestro)が貸してもらえることになりました。



が、いろいろ考えた結果、これは私が使うよりも広く世間に見てもらいたい…と言うことで、ノーブルスタイリングギャラリーに”又貸し”することにし、クラーレ社にも許可を取りました。
恵比寿のウェスティンホテル東京内、ノーブルスタイリングギャラリーにて常設展示されていますので是非ご覧いただければと思います。
ただし、催事などで持ち出されている可能性もありますので、遠方からの場合は確認してからの方が良いかと思います。



マエストロの特徴は直列ダブルバレルによる7日間(約168時間)パワーリザーブ、クラーレとしても挑戦的な自社製テンワ、コーン型ビッグデイト表示、”メモ”コンプリケーションです。

ダブルバレルは片側の出力がもう片方の巻き上げに繋がる直列型(似た構造のマエストーゾは出力が共通の並列型)で、クラーレとしては異例の7日間パワーリザーブを持ちます。
香箱の巻き上げ状態を直接視認できるパワーリザーブインジケーター(直感)で巻き上げ状態を確認でき、アップサイドダウン構造で時針が上にある構造です。

テンワは自社製造によるオリジナルデザインで空気抵抗に優れた形状…ですが、ここで一つネタをばらしてしまいましょう。



これは発表当時のプロモーションビデオですが、何か気が付きませんでしょうか?

…そう、テンワ自体にイメージカラーで色を付けようとしていたのです。
当時の記事を見ると確かに色がついています。

曰く、テンワの素材はベリリウム銅(これは普通のテンワと一緒)で、PVDで色を付けられる!ということだったのですが、まあ無理だったんだな…と。
似たようなことやっているところがありましたが、そっちも無理だったみたいですし。

結局、テンワはメッキ程度に抑え、チラネジに色を付ける方向になったようです。
(もっと爆弾ネタがあったりしますがそれは、また今度…)



ドーム状の風防から、マリンクロノメーターをイメージした立体的なムーブメントが見られます。
ベゼルレスですが、風防自体のエッジは立っていないので割れるリスクは少なめとのこと。

特徴的なビッグデイトは縦に読むユニークな形式で、10の桁と1の桁が逆方向に回る変わった方式です。



ムーブメント側からはビッグデイトの制御を行う歯車(プログラム車)が直接観察できます。



さて、難解なのはもう一つのコンプリケーション”メモ”、ビッグデイトの脇にある小さなコーンです。
これは、プッシャーによって180度回転し、”何かを覚えておく(リマインダー)”として使う機能とされています。
セットされた状態からプッシャーをもう一度押すことで手動でリセットするほか、午前2時30分付近でリセットされます、つまり、カレンダーの応用の機能です。
どういう意味付けをするかはユーザーに託されている部分もあり、やらなきゃいけないことを覚えておく、逆に何かを達成したら押す…など、テーマを決めて使ってほしいとのこと。
”ハンカチの結び目”というメタファーが使われており、発表されたSIHHではハンカチが配られていました。



大きな時計が多いクラーレとしては珍しく42mm、ベゼルレスというデザインで”普通に使える”時計です。



数字上の厚みは16.06mmですが、ドーム状風防も含めてなので実際にはそこまで厚く感じません。



マエストロよりウケがよさそうなブラックジャック(Black Jack)も展示されています。
クラーレで一番有名で、売れた数も一番多いかもしれません。

文字盤側にはブラックジャックモジュールによるブラックジャックゲームが備え付けられており。
9時位置のプッシャーを押すことでカードがシャッフル(スロットが回転)されます。

その後、10時位置のディーラー、8時位置のプレイヤープッシャーを押してカードをオープン(シャッターを開け)し、勝負を行います。
動画で見た方がわかりやすいかもしれません。



プッシャーを押すたびにクラーレが得意とするハンマーによるサウンドが鳴り響くのはカンタロスにもつながるディテールです。



極小のダイスで遊ぶこともできます(見えるかは…?)。



逆サイドにはカードのオープン時に鳴り響くハンマー(HIT)が。



ケースバックの自動巻きローターはルーレットに。
デフォルトの状態ではランダムに止まる通常のルーレットですが、オーナーにあわせて特定の数字(ラッキーナンバー)に止まるような改造も可能とのこと。



ブラックジャックは標準的なクラーレケースなので、45mmと結構大きい…



こんな感じで…

ちなみに、ブラックジャックはブラックジャックモジュールこそ複雑ですが、時計本体とはつながっておらず、”クロノメータームーブメント”搭載なので、時計としてみても信頼製は優れていると言えそうです。



オンリーウォッチの下見会で拝見した、”コーラル”。
蛇はどうなの?というのはありつつ、作りはとてもきれい。
かつ、青色のサファイアと赤いルビーを組み合わせているのはいい。



オンリーウォッチのテーマカラー水色を取り込んでいる…



ウーム…

関連 Web Site (メーカー・代理店)

CHRISTOPHE CLARET
http://www.christopheclaret.com/

Noble Styling Inc.
http://noblestyling.com/