製作の現場を旅して(ドイツ編 / 最終日)~モリッツ・グロスマンからグラスヒュッテ時計博物館へ
By : Guest Blog本サイトの読者の方からゲストブログとして寄せられた、スイスからドイツへ至るいくつかの時計工房見学レポート記事。
連載三回目となる今回は、いよいよ最終日。グラスヒュッテの新興ブランド、モリッツ・グロスマンを訪れます!
最終日はモリッツ・グロスマンを見学します。
所々石材が黒くなっていて、なんでだろうと思っていたのですがガイドの方が、
「空襲で焼けたのではなく経年変化で変色する」のだと教えてくれました。
ドレスデンの朝を満喫しているところでお迎えが来ましたので、
再びグラスヒュッテへ向かいます‼
モリッツ・グロスマンという人物を説明いたしますと、
モリッツグロスマン(中央の人物)はアドルフ・ランゲと双璧をなすグラスヒュッテの重要人物です。
どちらかと言えば縁の下の力持ちのような人物で、あまり日本では有名ではありませんが、主な彼の功績としては数々の論文を発表、時計学校を設立し後人を育てた事が挙げられるかと思われます。
彼の設立した時計学校は、後に時計学校教授となりフライング・トゥールビヨンを開発するアルフレッド・ヘルヴィグなど優秀な時計師を輩出し間違いなく町の発展の礎を築いたと言えるでしょう。
一階には何も置いていなく、なぜかと尋ねると、この下を流れるエルベ川の支流が氾濫することがあるので、水嵩が増しても被害が無いようにとの事でした。
ここが水没したら町は全滅しているような気もしないでもないのですが^^;
モリッツ・グロスマンの社屋最上階からは町が一望できます。
ファクトリー・ツアーを案内してくれたのは時計師のリコ(真ん中のひと)です。
ランゲ時計学校を卒業した優秀な時計師です。
工房は一直線になっており動線が確保されています。
長い鋼材から歯車の材料を切り出しています
部材が設計どおりに仕上がっているか確認する装置のようです
道具を作る部署‼
一緒に見学した方が一番驚いていた所です
モリッツグロスマンの部品や仕上げは特殊なので当然それら用の機械は売っているわけ無く、無いなら作ってしまえと言う部署のようです。
『依頼があれば他社の機械も作るよ』とのことで、実際に依頼があり作った事もあるそうです‼
設計の部屋で、今は三人体制で設計を行っているそうです。
イエンスさんの後任イエルンさんも朴訥な時計師で非常に好感が持てます^^
プロトを組み立てる部屋
なんと設計の方がちょうどプロトを組み立てていました‼
大きなブランドでは設計は隔離され他との接点は全く無いと聞きます。
設計・プロト・仕上げ・組み立ての部屋はすべて同一フロアにあり、行き来しやすく、すぐ意見が言いに行けると時計師の方に好評でした。
きちんと設計したつもりでも、設計通りに組み立てられない・見た目が悪いなどの不具合が起こるので皆で意見を出し合って解決していくとおっしゃっていて、その為にも往来のしやすさが考慮されているようです。
この日はドイツの祝日(統一記念日)で出勤されている方は少ないです^^;
針の製造も見せていただいたのですが、緊張感溢れる現場で写真を撮る勇気が出ませんでした^^;
サンバーストの仕上げもモリッツグロスマン独特で特殊な工具を使っており、その工具も自社で製造しているとの事でした‼
人件費の高いスイスで同じことをしたら、とんでもない高額な時計になることでしょう(笑)。
また特徴である支柱構造ですが、美しく古典的な見た目だけでなく側面から見て手を入れることができ輪列の高さを調節できるなど実用性も高いことを説明していただきました。
時計師の方曰く我々が見慣れたムーブメントの方がプレートで押さえるために中がどうなっているのかが分かりづらく、組み立てが難しいとおっしゃっていました。
このようにロービートで手巻きピラー構造と古典的な特徴が注目されるかと思いますが、真の魅力は空気抵抗を考慮したグロスマンテンプやリシャールも採用するARCAP合金の輪列など現在の技術と古典との融合なのではないかと考えます。
こんでもかと言わんばかりにベリリウムカッパー製のブッシュで補強し、テンプまで分解できる手巻き3針の時計は見たことがありません(手巻き3針が絶滅危惧なだけかもしれませんが・笑)。これもすべて長く使う為の工夫でありロービートと相まって適切なメンテナンスを行えば優に100年使える時計かと思います。
小さいとは言えないサイズや、3針と思えない価格など良いことばかりはいえないのが現状です。しかしそこに投じられた技術や仕上げの美しさを考えた時に決して高額すぎることは無いかと^^
このご時世に『良い品質のシンプルな時計』は売りやすくはないでしょう。ですがそんな時計を世に送り出してきたモリッツグロスマンのドイツ職人魂と世界でいち早く日本にブティックをオープンさせた工藤社長は凄いと思います‼
この辺りで工房見学も終えてグラスヒュッテ時計博物館へと向かいます。分かりやすい説明ありがとうリコ‼
この時計博物館は、町で運営しているのかと思いきや、GOがやっているのです^^
グロスマンの懐中も置いてあります。
なんでもグロスマンの死後、在庫はランゲが引き取ったとの事で、現在ではあり得ない「ダブルネームの時計」も何処かに存在しているのかもしれません^^
アドルフ・ランゲ製作のハーフセコンド掛け時計。
博物館見学も終わり少し時間が余ったので町を再度見学しました。
少し歩き軽食も食べたところでお迎えが^^
楽しかったドイツともお別れです。
今回の旅で特に感じたことは、メガブランドも安定感があり素晴らしいが、小さなブランドにも別の良さやこだわりが沢山あるということです。
確かに新興ブランドは経営など不安な事があるかと思いますが、それ以上の輝きを放つ魅力的なブランドも多いです。
今回ご紹介したスイス・ドイツの3社は、その中でも自分が特に好きなブランドです。
皆様にもこの夢とロマン拘りが詰まった時計を見ていただきたいので、知らないブランドと言わずに是非日本の取り扱い店に足を運んでみてください。手に取っていただければ良さが分かっていただけるかと思います^^
長くなりましたがお付き合いありがとうございましたm--m
三回にわたる連載、ありがとうございました。
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