ショパール: ショイフレ共同社長の来日 ~ その1 ー トークショー @銀座本店ブティック

 By : KIH

バーゼルからほとんど日が経っていませんが、早くもショイフレ共同社長が奥様を伴って来日、ブティックでのイベントなどに精力的に参加しています。

今回の来日は、11日銀座本店ブティックでのトークショー「Time & Wine」で、時計・ワインへの共同社長の情熱について語ってもらい、次に13-14の週末に京都で開かれる「Concorso D'Eleganza Kyoto 2019」への参加が目的です。

幸いにも両方のイベントに招待されましたので、その様子をレポートします。

まずは、トークショー「Time & Wine」です。

ショパール ジャパンの トーマス・ドベリ社長より開会のあいさつ


カール=フリードリッヒ・ショイフレ 共同社長登壇!


「Time & Wine」は、ショイフレ共同社長発案で、氏の情熱の3本柱のうちの2つを語ってもらうイベントでした。そして、時計もワインも「いいもの」ができるのには時間がかかる、という共通項を持ち、それぞれの「味」、似たイメージを持ついくつかの時計とワインを組み合わせてみました。

1.前半「時計トーク」
ショイフレ氏とのトークショーのお相手は、不肖KIHがつとめさせていただきました。「時計ジャーナリストではありません」という一言から始め、ユーザー目線でのトークに心がけました。

Q: お久しぶりです。今日はよろしくお願いいたします。さて、共同社長には3つの情熱があるとお聞きしています。時計、車、そして後で詳しくお話しいただくワイン。まずは、それぞれどのようにそれらの世界に入っていったのか、聴衆のお客様にお話しいただけますか。



A: 時計については、祖父が懐中時計のコレクションを持っていて、それに影響されたところが大きいですね。自分も時計を集め始めて、必ず分解して、元に戻せないことも多かったですが、そうやって時計の世界に引き込まれていきました。

車については、祖父も父も非常に車が好きで、私は自然と、免許が取れる年齢になる前から、うちにある車を運転していましたよ。ですので、子供の頃から夢中でしたね。時計も車も、人間が作る「美しい機械」であるという共通点もあったと思います。




Q: なるほど。では、時計の話をここで少ししたいと思いますが、先月のバーゼルの新作について伺いたいのですが、特にこの、L.U.C フライング T について共同社長はどのようなコンセプト、苦労話、あるいは裏話などがあれば聞かせてください。





A: これは本当に長いこと作りたかったんですよ。でも、常にいくつものプロジェクトが走っているものですから、なかなか取り掛かれなくて。でも、ようやくタイミングがやってきたのでプロジェクトを開始しました。発案から3年かかりました。96キャリバーベースで、初のマイクロローター自動巻きで、初のフライングトゥールビヨン。ストップセコンド、バランスを考え日付なし。これらの組み合わせが、素晴らしい時計を作り出しました。これは今までの時計の中で私が大変誇らしく思っている時計の1つです。


Q: 今年のL.U.C XPSXPはいかがですか?






A: ご存知の通り、XPSはL.U.Cとして初めて作った1.96(注: 今では、96.01と呼ばれています)キャリバーを使った、まさにL.U.Cを代表する時計です。ドレスウォッチ、ビジネスウォッチ、またオフタイムでも使える時計だと思います。もう何代目にもなりますが、常に新しい試みを加えてきています。XPはL.U.C コレクションのエントリーモデルです。今年は、メリノウールのストラップを使ってみました。こちらは若い方にぜひ使って欲しいですね。


Q: 時計の話題の最後になりますが、1つ目のモデルがGPHGグランプリを取った「フェルディナンド・ベルトゥー」についてお話ししていただけますか?



A: それは今夜中に終わらないくらい長い話になりますが、ショートバージョンをお話しましょう。
フルーリエ工場に行かれたときにご覧になったと思いますが、L.U.Ceumという博物館部屋がありますね。もちろん、Museumとひっかけているのですが、我々は「リューシアム」と呼んでいます。そこに多くのベルトゥーの懐中時計があったことを覚えていらっしゃると思います。全て私個人のコレクションです。私も父や祖父に続いて自分でもアンティーク時計のコレクションを始めていましたが、いつだったか、ベルトゥーの時計をオークションで落札しました。その後になってベルトゥーのことを研究し始めたんです。
そうしたら、なんと、ベルトゥーはフルーリエ工場から5分のところに住んでいた18世紀から19世紀初めにかけて活躍した時計師、ということがわかったのです。私は親近感がわき、さらに興味を持っていろいろと文献を探して読んでみました。彼は、フランスで時計師の勉強をして、フランス王室及びフランス海軍の時計師として卓越したマリン・クロノメーターを作りました。マリン・クロノメーターは、ご存知のように大きく、鎖引き機構も使い精度を高める工夫がいくつもしてあります。我々は5000ページ分のベルトゥーの本も手に入れました。しかし、ベルトゥーは、19世紀初頭に突然時計史から姿を消しました。

私は彼の時計作りの情熱に感銘を受け、ずっと彼の名前の権利を持っている人を探していましたが、ようやく見つかり、彼の名前をブランド名にする権利を得たのです。非常に少量生産で、まだモデル数も少ないですが、全て、いわば、彼が作ったマリン・クロノメーターがそのまま腕の上に乗るサイズになった、というほどの手をかけて作っています。


Q: ありがとうございました。それでは、ワインのテイスティングに行く前に、ワインへの情熱について少しだけ語っていただけますか。



A: 誰しもおいしいものは好きですよね。私もそうです。日本はその点素晴らしい。話は逸れますが、工場に来ていただいた方はご存知だと思いますが、ジュネーブ工場には2つの「日本庭園」があるんですよ。1つ目は、前のその建物のオーナーが持っていたものでして、彼は日本と貿易をしていたので、なるほど、という感じですね。2つ目は私が作らせたものです。日本はすべてがきちっとした国です。時計作りにはその正確さや精度へのこだわりが不可欠です。ですから、日本庭園が欲しかったんです。でも私は、わざわざ「日本庭園」だなんて言いません。日本庭園の専門家に作ってもらったわけでもありませんし、真似てつくっただけですので、日本庭園だなんて呼ぶのはおこがましすぎますから。でも、工場に来ていただいた日本人の方は皆さん「素敵な日本庭園ですね」と言ってくださいます。われながら、よくできたと思います。さて、ワインの話に戻りますが、実は祖父から、これまた年齢はいえませんが、若いときからバーガンディ(ブルゴーニュ)の赤ワインを飲まされていました。そして、父からはボルドーのワインを飲まされていました。おかげさまでいろんなワインを飲みましたよ。それで、自分の好きな味が頭の中で固まり、自分でも作ろう、と思ったわけです。25年前にフランス中を妻と車で回ってワイナリーを探しました。なかなか見つかりませんでしたね。しかし、2012年、ついにぴったりのワイナリーを見つけたのです。ここから先はそこに座っている妻なしではできませんでした。いつも、「あなたは多くのことを同時にやりすぎ」と言われていまして、妻が手伝ってくれなければこのワイナリーを買って、育てて、ワインを作るなんてことはできなかったでしょう。

いつお会いしても、このご夫婦は本当に仲がいいです。


2.後半「時計とワインのペアリング - ショイフレ氏の選択」
食事とのペアリングというのはよく聞くが、時計とのペアリングというのは趣向が違います。ここは、氏の好きなL.U.Cと、それと「イメージ」が合うワイン、というペアリングとご理解ください。

ソムリエの佐藤先生


佐藤先生による解説。右側にはちらっと奥様の後ろ姿。




これらがショイフレ氏自ら選んだペアリング。























聴衆の皆さま、ショイフレ共同社長、ショパール ジャパンの皆さま、佐藤先生、ありがとうございました!