ショパール: 時計好きを自負する男性諸君、ショパールは女性アクセサリーブランドではない! - 工場見学レポート #2

 By : KIH
(第1回はこちら

さて、2日目は前日からずっと付き合ってくれている、セドリック・ラフォージュさんが自分の車でフルーリエ工場まで連れて行ってくれました。

このフルーリエ工場、元々は1フロアだけ借りているテナントだったらしいです。ショイフレ共同社長の「高級機械式時計」づくりのために、「L.U.C」モデルを作るために借り始めたのは94年。そして、96年に念願の、そしていまだに最高の自動巻きムーブメントとの呼び声も高い「キャリバー1.96(現 96.01)」が産声をこの工場であげました。

その後、ショパール社はこのビルを丸ごと買取り、自社ビル・自社工場としたのです。

1日目のまとめにも書きましたが、家族経営の非公開会社ゆえにできる、「好きな時に、好きなことに、好きなだけ投資できる」業務環境が大いにメリットを発揮していると言えます。手を抜かない。

2日目は盛りだくさんで、まずはフルーリエ工場見学、中にある、L.U.CEUMと呼ばれる、フルーリエのショパールミュージアム見学、そしてランチは近くにショイフレ氏が個人で購入した家を改造した、恐らく本邦初公開の「ショパール・フォーラム」と呼ばれる瀟洒な建物にて。午後は、その目の前にある、カリテ・フルーリエ財団の見学、そして、フルーリエ工場に戻り、フェルディナント・ベルトゥーの工房の見学。これは恐らく2回に分けて書くことになるのではないでしょうか。

==============================================
では、フルーリエ工場見学から。フルーリエは、ジュネーブから車で約1時間半から2時間、山を越えて行く、本当に静かな町でした。夏だったので何もなかったですが、あの山道は冬場は気を付けないと、という感じですね。しかし、セドリックさんも頻繁に行くし、ショイフレ氏自身が月に2回は行くとのこと。それも自分が運転するポルシェ911で行くそうです。ショイフレ氏は車もご趣味でいらっしゃいます。特にポルシェ。だからこそ、WECにおいてはポルシェチームのオフィシャルタイマーとしてスポンサーしているんですね。私の子供のころからのヒーロー、ジャッキー・イクス氏との長年の友人でもあるし。

こちらの工場には200人が勤務。ジュネーブの工場と併せ、全部で1000人近くの大企業であることがわかります。

フルーリエ工場全景




ロビーには様々なパンフレット、カタログが。




玄関にはショパールと、フェルディナント・ベルトゥーの看板。




今日の私の基地(会議室の1つを貸していただきました)のガラスのテーブルも凝ってます。




むかしのフルーリエを描いた絵ですね。




こんな素晴らしいものまで会議室に・・・。




やはりここもすべてショパール印。




ここは2階。現在はデザインルームとして、ここだけは入れてもらえなかった部屋。ちらっと覗かせてはもらいましたが。
で、ここがショパールが94年に初めて借りた部屋だったのです。




ですから、その時の名残で「呼び鈴」がまだあります。




で、部屋の横には栄光のキャリバー1.96の大きな絵が。私の部屋に欲しい・・。




そして、窓から見えるあの建物。かつては、競合会社のムーブメントメーカーだったのですが、今はショパールの傘下です。その名も、フルーリエ・エボーシュ工場。ここでは、ミッレミリアや、スーパーファストのムーブメントが作られ、ジュネーブに送られています



ここで、私はふと気になりました。ジュネーブシールというのは、ジュネーブで作られたムーブメントにしかつけることができません。では、なぜジュネーブから離れたフルーリエがL.U.Cのメイン工場なのでしょう?
=> 答: ジュネーブシールをもらうムーブメントは、「キット」という形でジュネーブに送りだし、ジュネーブのL.U.C組立部にて、最終組み立てを行う。一方、ジュネーブシールをもらわないL.U.Cもあるわけで(例えばL.U.C 8HFとか)、それらはこのフルーリエ工場で組み立てまでしてしまい、ジュネーブに送ってケースに入れる、という工程なのです。


で、こちらはマイクロメカニック部。細かい部品の細かい加工をしています。ここで作られるL.U.Cムーブメント及び、フェルディナント・ベルトゥーのムーブメントは、パーツ数153から500以上のものまで、数多くの種類を作っており、こういった、細かな部品の1つ1つが非常に大切な役割をします。















こちらの方は何をしているかというと、小さな部品は金属板から切り出すのですが、その際に、プラモデルのように出っ張りが残ります。それをきれいに磨いて取っているのです。




それに、某新人時計師が挑戦。顕微鏡を使ってやるんですぜ。大変。




ま、結果はともかく、久しぶりにいい体験させていただきました。XXXアカデミー以来だなあ。






デコレーション前と後。






そしてこちらはその小さな部品の仕上げをしています。




拡大すると・・。




もちろん顕微鏡。




こちらは、フェルディナント・ベルトゥー FB1の部品。鎖を巻き取るパーツですね。




この女性は、ナタリーさん。写真にある時計のデコレーションをされた方。1つ作るのに6週間かかります。で、これが今年のジュネーブ時計グランプリ(GPHG 2017)の最終選考に残ったことを、セドリックさんが彼女に今日この場で伝えたのでした。正式発表は9月1日で、今日は8月29日。感極まって涙してました。こちらも思わずもらい泣きしそうに。




そしてこちらは、細かいルビーを埋めていく作業。








流れ作業になっていますが、前述の通り、誰が抜けてもその穴を埋められる技量を全員が持っています。










お、ありました。L.U.C 8HFのキャリバーです。裏スケ時計ではないので、全体像は普段は見えないんです。




で、こちらはテスト中のもの。




ただし、ちょっと違う、プラチナモデル(パワーリザーブ計なし)。




この方が、8HFを含め、すべてのテストをする方。今までの記録をすべて持っています。






で、私のは2015年2月8日にこの工場を出て行き、テストの結果、まだまだクロノメーターとして十分な性能を維持していることがわかりました。スマイル!




こちらは、「アフターサービス部」で磨きをしている模様。










なんと! 「カイゼン」が合言葉に。日本の影響って、こんなところまであるんだなあ。ちょっとうれしい。




そしてこちらは、パーツのメッキ工房。








この方、この時はお一人で細かい部品のメッキの結果をチェックしていました。





さて。来ました、L.U.CEUM。L.U.CとMUSEUMをくっつけたんだと思いますが、ショパール博物館のフルーリエ版です。




数々の古くからの時計の数々。












Favre-LeubaのFavreさんですかね。ペラトンって名前も気になりますね。






こちらは、L.U.Chopardさんの作品。






これは、1日目のインタビューの時、ショイフレ氏の後ろにあったアートと同じ作者ですね。芸術品だそうです。そういえば、ジュネーブ工場にしても、フルーリエ工場にしても、飾ってある絵や芸術品は、みな時計や時に関するモノばかりでした。ショイフレ氏の趣味だそうで。






こちらから後はベルトゥー氏一族の作品。






これはフェルディナント・ベルトゥーの作品ですね。










このフルーリエ工場では、一層高い技量を持った職人たちが黙々とパーツをチェック、調整しつつ、ムーブメントを組み立てていく姿を見ました。アフターサービス部ももちろん、ベテラン揃いです。ミュージアムには実に多くの「スイス時計業界の宝」が展示されています。これでもか、というくらいのハイレベルな工房、という印象でした。

さてさて、次回は最終回、ランチをいただいた、「ショパール・フォーラム」、「カルテ・フルーリエ財団」、そして「フェルディナント・ベルトゥーの工房」をご紹介します!


https://www.chopard.jp/