アーミン・シュトローム 「ミニットリピーター・レゾナンス」発表イベント~さらにアワーグラス銀座店にて2週間の展示が決定!

 By : CC Fan

インヴィテーション
Twitter上での”速報”をお伝えした、アーミン・シュトローム(Armin Strom)の自社工房設立10周年記念ピース、ミニットリピーター・レゾナンス(Minute Repeater Resonance)のレポートです。
実機の感想ですが、ブランドとしてのアーミン・シュトロームが時計師のアーミン・シュトローム氏から経営を引き継ぎ、自社工房による自社設計製造ムーブメントを作るにあたり、”強み”を考えた結果である、”既存のムーブメントをスケルトナイズする方法”ではなく、”スケルトンで見せることを前提とした新しい設計のムーブメントを作り出す”という方向性の集大成であると感じました。
レゾナンス・クラッチ・スプリングの物理接続によって共振現象を引き起こすレゾナンスムーブメント、スネイルカムをラックが読み取って音を鳴らすリピータ、全ての構成要素を両面から鑑賞して楽しむことができます。



ミラード・フォース・レゾナンスからの最適化の結果、小型化を果たしたレゾナンス機構は下半分およそ2/3の領域に収まっています。
上半分にミニットリピーターのハンマー、ユニークな形状に成形されたゴング、ほぼ無音の遠心ガバナーが可視化されています。
ゴングが円形ではない影響を危惧していましたが、冒頭に掲載した動画(撮って出し、増幅なし)のように充分な音量と響きが確保されていました。
”時計台”をイメージしたというサウンドは、アンティークの懐中や卓上ソヌリを思わせる迫力を感じました。
イベントに参加できなかったとしても、タイトルに書いていますが、アワーグラス銀座店さんで2週間展示されるのでぜひご確認ください。



プレスリリースの通り、リピーター部はクロード・グライスラーの”元同僚”、ル・セルクル・ドルロジェの設計・製造によるものですが、”まかせっきり”のモジュール構造ではなく、協調設計によって全体としてスペースを融通しあい、最適化した構造になっています。
また、”餅は餅屋”によって、”独立ブランドが初めて作ったリピーター”とは思えない完成度を実現したと言えます。



リピーターとしては、いわゆるアップサイドダウン(逆立ち)構造で、日の裏車がやスネイルカム、読み取り用のラックはムーブメント側にあります。
金色のブリッジで支えられる大型の香箱は一見するとシングルバレルですが、レゾナンス用に2つの独立した香箱が一つの巻き芯を共有したダブルスプリング・シングルバレルと呼んでいる方式だそうです。



リピーターの構造は伝統的+オールオアナッシング機構をつけて変な状態にならないようにした構造。
このレポートを書いていて、計時用香箱とリピーター香箱が一直線になるような構造だったということに気が付きました。



文字盤上にはAとSを組み合わせたミニマルなアーミン・シュトロームロゴのみでレターはありません。



リュウズにもASロゴが。
ケースの造形はジャーマン感のあるシリンダーケースですが、チタン製なので取り回しはよいです。



素材は単一、面ごとに仕上げを変えてコントラストを出すという方法。
もちろんケースには歪みはなく、きっちりとしています。



操作しやすいリピーターレバー。
音の響きにもかかわらず、ちゃんと防水です。



透かして見ると、そんなに開口部自体は大きくないことがわかります。
このピースはプロトタイプではなく、販売可能なピースですがシリアル番号はまだ割り当てられてはいません。

10周年記念にちなんだミニットリピーター・レゾナンスは、何があってもチタンケース10個のみで打ち止め、それ以上は絶対に作らないとのこと。
現在2個(No1とNo3)が販売済み、2個の販売可能ピースをテクニカルディレクターのクロード・グライスラーとマーケティングのエマニュエル・ビトンが持って各国を巡っています。
1と3は不可能ですが、先着順で”好きな番号”を割り振れるそうです!



”スケルトンありき”でムーブメントを設計するという自社設計製造ムーブメントのアーミン・シュトロームの現時点での”到達点”としてのマイルストーンピースです。



直径47.7mm・厚み16.10mmは大きいですが、チタンで軽いため装着感は良好です。
大きなエアボリュームは響きを良くするのに有利で、ゴングは響きを伝えるためにムーブメントではなく、ケース側に固定されています。

テクニカル的には、レゾナンス(共振現象)とレゾナンス(音響の響き)が初めて同一ピースに収まったということ、そして市場に出ている腕時計リピーターの中で最長の96時間(4日間)パワーリザーブを持つということがトピックです。
特に大型のデュアルタイムレゾナンスの110時間に迫り、ミラードフォースとピュアの48時間の倍というパワーリザーブがデュアルタイムより小型のケースに収まり、リピーターを追加したというのは素晴らしいことだと思います。

リピーターの音量は1mの距離で、65dB(普通の会話として聞き取れる音量レベル)を実現したとのこと、動作もスムースで”実用”できると感じました。

このようなピースが実現した背景として、アーミンシュトロームが拠点としているビール(ドイツ語)/ビエンヌ(フランス語)は、ドイツ語圏とフランス語圏の境界、両方の文化が入り混じっており、スウォッチグループ、特にオメガ、そしてロレックスなどの”インダストリアル(工業的)・ウォッチメイキング”の中心地であり、ジュネーブの繊細さともグラスヒュッテの頑丈さとも違う独自の時計作りがある…と言う説明がなされました。

4つの香箱を搭載したデュアルタイムレゾナンスに迫る、96時間パワーリザーブはどのように実現されたのかを見ていきましょう。


ミラードフォースやピュアで横に並べていた香箱を、リピーター機構の厚みにあわせ、縦に重ねることで一つ当たりに収まるゼンマイの長さを長くしています。
更に初めてとなる非対称な輪列を使うことでよりスペース効率を高めています。


2番車(1時間で1回転)→3番車(中間車)→4番車(1分で1回転)→ガンギ車への動力の伝達を表したものが上の図です。

オレンジ色の表示用輪列(文字盤側から見て向かって右側のテンワ)と、緑色の共振用輪列(同じく左側のテンワ)は、歯車の組み合わせは同じながら、輪列の配置が異なっていることがわかります。
オレンジ色は時分針と同軸のセンターからスタートし直線的にガンギ車に伝わりますが、緑色は折返すような配置になっています。
これにより、ミラードフォースやピュアで必要だった表示用の間接中間車(インダイレクト)が不要になり直接2番車で時分針を回すことができます。

また、ムーブメント側から見るとわかりやすいですが、オレンジ色は地板と文字盤側のブリッジの間に軸が配置されていますが、緑色は別に取り付けた三股のパーツと文字盤側のブリッジの間に軸が配置されています。
これは、まずオレンジ側を調整しながら組み立てて完成させた後、独立してミドリ側を調整しながら組み立てられることを意味し、入り組んだ構造ながらも他のレゾナンスと同じくそれぞれの輪列は独立して調整と組み立てができるように配慮された構造になっています。
リピーター部も機構・ブリッジとしては独立しているので、分割して組み立てられる構造です。

ミラードフォースとピュアは”線対称”にこだわり、ひげゼンマイの巻き出し方向にあわせてガンギ車も逆回転する構造でしたが、デュアルタイムレゾナンスでそこまでやらなくても共振が維持できることがわかったようで、同じ方向に回転するようになり、ミニットリピーター・レゾナンスも同じ方向に回転する構造を踏襲しています。
”始祖”たるジャンビエの構造も振り子の方向は一緒だったのである意味先祖返りと言えるかも…

レゾナンスをスタンダードにするべく一点賭けで開発してきた着実な進化を感じさせる構造です。
この香箱と非対称輪列はリピーター以外にも!?

さて、どれだけ言ってもリピーターは音を聞かないと良し悪しは判断がつかないというのが正直なところだと思います。

今回、一期一会になるかも…と思ってイベントの案内をお伝えしてきましたが、去年WMOも協賛したイベントを行い、アーミン・シュトロームを扱っているアワーグラス銀座店さんにて、2週間の展示が行われることが決定しました!



本日(10月23日)にエマニュエルが直接届けてから次のイベント国に移動、2週間後に再び来日して回収するスケジュールだそうです。
詳細なスケジュールは確認後アップデートの予定ですが、ご興味がある方はこの機会に是非!
もちろん、購入も可能です。

関連 Web Site

Armin Strom
https://www.arminstrom.com/

Armin Strom YouTube Channel
https://www.youtube.com/user/arminstrom

アワーグラス銀座店
〒104-0061 東京都中央区銀座5-4-6 ロイヤルクリスタル銀座1F
TEL: 03-5537-7888 
http://www.thehourglass.co.jp/

Noble Styling
http://noblestyling.com/