Giuliano Mazzuoli CEMENTO

 By : CC Fan
ジュリアーノ・マッツォーリ(GIULIANO MAZZUOLI)は、イタリアのフィレンツェ生まれのデザイナーで、日常からインスピレーションを得た時計や筆記具を作っているブランドです。
元々筆記具からスタートしているため、もしかしたら筆記具の方が有名かもしれません。
私は時計の方はいまだご縁がありませんが、筆記具の方でモキーナとマニポロというボールペンを愛用しています。


モキーナ(奥)とマニポロ(手前)

モキーナはMoka、すなわちコーヒーを淹れるポットからインスピレーションを得てデザインされました。
マニポロはイタリア語で手・操作を表す単語"manipolare"から命名され、マッツォーリが自ら削って原型を作った先端部の三つの"くぼみ"に指が収まり、手の大きさに関係なく快適に筆記することができるというデザインです。
他にも機械工具や自動車のメーターなど"日常"を切り取ったデザインがマッツォーリの特徴となっています。
機械的なモチーフが多いため、工学系の私としてはシンパシーを感じます。

コレクションの中で気になっていた新ピース、CEMENTO(チェメント)入荷の報を伺い、時間を作って拝見してきました。


CEMENTO

これがチェメント(CEMENTO)です。
ケースがその名の通り、イタリア製のいわゆるセメントでできています。
英語読みだとセメントですが、イタリアンブランドなのででイタリア読みです。
これは既存作、フィレンツェが誇る大理石を使用したカッラーラ(Carrara)に次ぐ"イタリアン・マテリアル"を活かした時計です。


再掲:Carrara(右)

強度を担保する金属ケースが中心に備えられ、その周りをセメントで固めたのちポリッシュして形を整えているようです。
これはカッラーラも同じ構造です。



一見するとミニマルデザインのシンプルなインデックスですが、あまり見ない特徴として、インデックスと長針が同じ高さかつ間隔が詰められています。
また12時・3時・6時・9時位置でインデックスの一段下がった部分と長針がオーバーラップします。
この他にも、一見すると黒単色に見えるものの細かい粒子状の仕上げがなされている文字盤、角が立ったシャープな形状のインデックス、とかなり手間がかかっているとみられます。



サイドから見るとマッツォーリらしいシリンダー状のケースデザインです。
名前に恥じぬまさにセメントといった感じの表面で、触ったると金属の冷たい感触ではなく、滑らかな石のような不思議な感触でした。
建築物の長年使われたセメントが磨かれて変化するようにエージングを楽しめそうです。



ムーブメントは定番中の定番のETA2892、潔いソリッドバッグでグラスバックよりも装着感が良いです。
ETAは色々言われますが、個人的には素性不明な"自社ムーブメント"よりも良いと思っています。

ベルトもイタリアのトスカーナ製ハンドメイドで、ラグレスで直接ケースにねじ止めされます。
ケースは大きめ(直径45mm)ですが、ラグがないためベルト方向にはそこまで大きくなく、装着感は良かったです。
ベルトの根元付近についている部品は腕とベルトの間にできる隙間を埋めるためのものです。



リュウズはねじ込み式、リュウズと秒針の赤の挿し色が思った以上にいい仕事をしていると思いました。



別のサイドから。
隙間を埋める部品のイメージが伝わりますでしょうか?

"イタリアらしい素材"をそのまま使った独自性という点でカッラーラと共にマッツォーリを象徴するピースではないかと思います。
カッラーラと違い、三針一型のみのラインナップです。
これは比較的ほかの色に合わせやすい乳白色の大理石と違い、灰色のセメントは合わせにくいのではないか?と予想します。
一型しかない分、文字盤は更に気合を入れた造りに見えました。

同時に入荷したマノメトロ(Manometro)の新バリエーションも拝見させていただきました。





これは圧力計をモチーフにしたマッツォーリのファーストモデルで、今回ダイヤルに青と緑が加わりました。
文字盤以外の細かい変更としては尾錠が上位モデルのコンタジーリ(Contagiri)などに付属するタイプと同じものに変更されたそうです。
ケースはニュースで紹介されたポリッシュのほか、艶消しのマット仕上げも選べるそうです。

最後にワンハンド(短針のみ)のコンタジーリです。



見ての通り、自動車のタコメータをイメージしたレトログラード表示です。
タコメータに準じた意匠にするため、12時30分(0時30分)という変わった時間にレトログラードします。
小さい針は秒針相当ですが、秒針というよりムーブメントが動いているか確認する"動作インジケータ"のようです。



こうやって見るとまさにタコメータと言った風貌です。

どのピースもイタリア(というよりフィレンツェ)に対する郷土愛を感じる素晴らしい作品だと思います。
個人的にはチェメントは"予想以上"でした。

P.S.
どうにも上手く写真が取れなかったので、カメラに責任転嫁し、今回の記事からカメラを変更してみました。
如何でしょう?

関連 Web Site

Giuliano Mazzuoli
http://www.giulianomazzuoli.it/index.php

Noble Styling
http://noblestyling.com/