カンタロス4周年とWMO2周年

 By : CC Fan
怒涛の"アーミン・シュトローム(Armin Strom)シフト"で燃え尽き、1週間、気がつけば11月です。
スイス紀行のフォローアップなどもボチボチやっていきます。

さて、11月3日(文化の日)はクリストフ・クラーレ(Christophe Claret)のカンタロス(Katharos)が納品された日、祝4周年です。
そして少し前にWMOも2周年、改めて見返すとカンタロスの2周年3周年(里帰り中で実機なし)の記事を書いていて、SIHHに2回、バーゼルに1回行ってるので確かに2年経ってはいるのですが、主観的にはあっという間でした。
記念ということで現時点でのカンタロスへの思いとWMOに参加した意義みたいなものを少し書いてみたいと思います。

カンタロスは"数多"の里帰りと工房に乗り込む改善プロジェクトを経た結果、最初のころとは見違えるような安定性を獲得、人に安心して…はまだ勧められませんが、スイス紀行から帰ってきて1ヶ月、ずっと使っている限り全く問題なく動いています。
安定させてから出せよというのはもっともな話ですが、ダウナーな話でも書いたように、独立系の規模ではなかなかそこまでは手が回らないのかな…と思っており、理解して買うならいいんじゃないかと思います。
以前の記事でも書きましたが、様々な"時計に対する幻想"を完膚なまでに破壊され、それでも(それもあって?)カンタロスは好きです。



クリストフ・クラーレ社の会議室にて、我がコレクションの"新入り"こと、デテント天文台クロノメーター(仮)と邂逅するカンタロス。
下にあるのは優秀な"ピンチヒッター"、チャペック(Czapek)のケ・デ・ベルク(QUAI DES BERGUES)、こちらもこの時計のための新規設計ムーブメントSXH1ですが、設計を安全方向に振った考え方で安定したムーブメントです。



デテント繋がりでクラーレ社長が出してきたデテント・トゥールビヨンの構造模型。
マエストーゾ(Maestoso)と言い、彼はおそらく機構としてデテント脱進機が好きで、それを自分銘で腕時計にしたいんでしょう。
私も好きなのでシンパシーを感じますし、いろいろ問題はありますが、頑張ってほしいというのは偽らざる本音です。
来年の2019年はデュアル・トゥ(Dualtow)から10年、ブランド10周年、マニュファクチュール・クラーレ30周年で、まだ言えませんが、それにふさわしい"大作"を準備しているとのことで、楽しみです。



デテント天文台クロノメーター(仮)やマエストーゾのデテント脱進機、アーミン・シュトロームのレゾナンス機構、カンタロスのコンスタントフォース機構、クレヨンのユニバーサル・サンライズ・サンセット…全ては書ききれませんが、どれも素晴らしい。

さて、WMOについて。
参加したのはa-lsさんとKIHさんの考え方に賛同したからということが一番です。
さらに、お話をいただいた時点で、雑誌など既存のメディアを読んでいて頭をひねるようなこと・憤りを感じることがありましたが、それはあくまでも読む方だけの視点、書く方を"自分がやったらどうなるだろう?"を実践してみたかったからです。

自分の中でのいくつかのルールを作り、それを破るようなら止めてしまおうと思いながらやってきました。
本業(エンジニア)が別にあり、"本業"ではなく"副業"、下手をすると"趣味"としてやっているのも結果的には良かったかもしれません(本業の人からすると目障りかもしれませんが…)。

気になっていたのは、機械式時計は今となっては工芸品かもしれませんが、もともとは最先端の工業製品であり、現在で工業製品としての性質は残っていると考えられるのに、とにかく人の手作業のみを重視したマーケティング・メディアの姿勢です。
かつては王侯貴族のものだった機械式時計がここまで"民主化"したことには機械化・大量生産化の恩恵は間違いなくあるのに、傍から目にはあまり取り上げていないように見え、注目してみたいと思ったからです。

もう一つは独立系、日本では正式な代理店すら無いが故に、ほとんど知られていないユニークな作り手を紹介したいという考えです。
あくまで"紹介"で、"知っている自分は凄い"にならないよう心掛けてきましたが…いかがでしょうか。
今年の個人的な大ヒットはぶっちぎりでクレヨン(Krayon)です。

最後に少し自分語り、私は"ジャーナリスト"と名乗らないことにしており、言われたら訂正します。
これは、ポジティブな理由とネガティブな理由があり、ポジティブな方は"尊敬するジャーナリスト氏と比べるとまだまだなので同じ肩書を名乗るのがおこがましい"という理由、ネガティブな理由は"公平性を謳いながら偏向している自称ジャーナリストと同一視されたくない"という理由です。
正直、趣味なので"公平"も"正義"なんてありえないと思っている部分もあり、"正義の争い"をするぐらいなら自分の好きなものを全力で紹介したほうが平和的かなと。
なので、私は積極的にバイアス(偏向)がかかっていると自称します。
まあ、WMOを見ていれば一目瞭然だとは思っていますが…

さて、記念日ではありますが…



東京ビックサイトで行われている第29回 日本国際工作機械見本市(JIMTOF2018)へ。
工業製品としての時計作りを支える工作機械も展示されており、シチズン(CITIZEN)のブースもあります。

各社様々な新技術・工作機械を持ち込みデモも面白い!
ビジネスの単価が大きいのか、各ブース気合が入ったデモを行っており、大量の発電機と液体窒素のボンベを持ち込んで工場のラインを再現したブースもありました。
いきなり、対象素材は?と聞かれるとしどろもどろになりますが。

工作機械も非常に興味深いですが、主目的は…



カンタロスのプロトタイプを担当し、デテント天文台クロノメーター(仮)のレストアも行った時計師の関口 陽介氏と再会!
スイスをはじめとしたヨーロッパ製工作機械を提供する株式会社エス・ティー・シーのブースにて、シュワルツ・エチエンヌ(Schwarz Etienne)のグループ企業BCテクノロジー(BC Technology)のイベントとしてフライングトゥールビヨンムーブメントの組み立てを実演!



カメラによって手元が映し出されています。
シュワルツ・エチエンヌとヒゲゼンマイを含む脱進機パーツを製造するE2O、BCテクノロジーのロゴが。



1時間に1回、ほぼこのスケジュールで行われるだろうとのこと。
入場料1000円ですが、ご興味があればぜひ。

そして、個人的にすごくおもしろかったはす向かいのブースで流れていたクーラント(金属加工油)のビデオ。



こちらもスイスのメーカー。

帰りはりんかい線と有楽町線で銀座1丁目駅まで移動し、しばしの散歩、ずいぶん日が落ちるのが早くなってきました。
以前の記事で写真を撮らないとと書きましたが、カンタロスはつけているのが当たり前レベルになりつつあり、ますます写真を撮らなくなっています。
"作り手"にも再会でき、良い記念日となりました。

関連 Web Site (メーカー・代理店)

CHRISTOPHE CLARET
http://www.christopheclaret.com/

Noble Styling Inc.
http://noblestyling.com/