クレヨン クリスマス・プレゼント フロム レミ トゥ ジャパニーズコレクター

 By : CC Fan

師走はあっという間に過ぎ、あと一週間もすれば2018年も終わりです。
KIHさんのように、今年を振り返る記事を書いていましたが、クレヨン(Krayon)創業者、レミ・マイヨ(Rémi Maillat)氏より"クリスマス・プレゼント"が届きましたのでレポートします。
WMOではマイヨ氏と呼んでいましたが、プライベート及びTwitterではレミとファーストネームで呼び合っていたのでそちらに揃えることに。

クレヨンのエブリウェアについては今までも何度も記事を掲載してきましたので、そちらもどうぞ。
さてまずは全容を。


こうやって見るといつもと同じムーブメントの写真じゃないかと思われるかと思いますが、オリジナルはTIFFフォーマットで1枚100MiBほどある高解像度データです。

試しにピクセル等倍 800×600で切り出してみましょう。



これはパラメータセレクタの水平クラッチの部分。
解像度が伝わりますでしょうか?

この画像の撮影には、センサーが大きく画質に優れた中判デジタルカメラのPhase Oneを用い、マクロ撮影、さらに"深度合成"という技術を用いることで全体の解像度を保ったまま画質を向上させています。

厳密な説明を省くと写真でピントが合っているピント面というのはレンズに垂直なある距離の一面ですが、その前後に被写界深度という"ピントが合っているとみなせる"範囲があり、ボケずに見える範囲になります。
レンズのF値という値を大きくするほど被写界深度を広げることができますが、弊害もあり綺麗なまま全域にピントを合わせるのは難しいです。
これを解決する方法がいくつかあり、その一つが深度合成とかフォーカス・ブラケットと呼ばれる方法です。

原理は単純で、複数(ブラケット)のピント距離で撮った画像からピントが合っている部分のみを切り出して合成し、最終的に全域のピントが合っている画像を作り出すという方法です。
レミの説明によれば、Phase Oneを使い慣れた時計・ムーブメント専門の写真家による撮影で、5枚の写真から合成して作り出したとのことで、非常にハイクオリティな画像です。

ムーブメント自体にもいくつかの細かい修正が入っているようで、気が付いたところや見どころを見ていこうと思います。



もっとも目に付くのはこれ、パラメータセレクタやディスク駆動用の歯車の一部に用いられているバネ要素を持ったギアです。
以前のムーブメント分析では2枚の歯車を重ねたものにばねで与圧をかけている構造でしたが、歯自体にばねを持たせバックラッシ(遊び)を埋めさせればよりシンプルで同じことになります。

以前の構造のアニメーションを再掲。



似たコンセプトの機構はほかのブランドでも見ますが、この歯形は初めて見ました。



英知の結晶、機械式計算機のディスク駆動部分。
カム・レバーで計算された緯度・カレンダーの中間値と歯車で伝わった経度・UTCからの時差が差動歯車で統合されディスク駆動値になる。
かなり長いパラメータセレクタ駆動用のレバーも。



再掲、パラメータセレクタ。
選んだ値を水平クラッチでリュウズに接続することで設定する機構。
これにより2段引きリュウズ(1段引きは常に時分調整)とプッシュボタン1つだけで4つのパラメータを設定可能にしたシンプルな操作系を実現しています。



リュウズはオーソドックスな作りの二段引き。



機械式計算機の中枢は厚いブリッジの下、驚異的な複雑性は想像するしかありません。



緩衝装置の真上をローターが通過する攻めた設計のテンプ周り。
マスロット調整・フリースプラングという最先端の構成です。



マイクロローターと大型の香箱。
香箱はムーブメント外周ぎりぎりまで攻めています。



パラメータセレクターの送り部分。
レバーがラチェットを押すことでパラメータセレクタを駆動する。



経度とUTCからの時差を設定する軸、UTCからの時差を設定する歯車には規制バネがあり離散的な設定となっています。



特徴的な歯形のディスク駆動部。
向かって左の二つが日の出・日の入りを駆動、右の一つが24時間の時針ディスクを駆動。
同じ高さにあるように見えるブリッジはペルラージュ仕上げのものが地板の一部、サテン仕上げのものが独立したブリッジというユニークな構成。

いかがでしょうか?
とてつもない複雑性の片鱗でも伝われば幸いです。

Twitterでもやりましたが、Krayonの公式YouTubeチャンネル、再生数があまりにも寂しいのでぜひ見てくださいと勝手に宣伝。



Everywhereとブランドの紹介ビデオ 機能と故郷ヌーシャテルの自然を紹介、創業者レミ曰く"低予算"でみずから出演したとのこと。



設定方法。
フランス語ですが、英語字幕が出るのでなんとなくわかるかと。



英語吹き替え版1。
設立に至るまでのストーリーと時計作りの哲学。
湖畔のシーンで写っているのは"リアル身内"だそうです。



英語吹き替え版2。
操作方法の説明。



英語吹き替え版3。
クラフトマンシップについて。



英語吹き替え版4。
開発について。



エブリウェアのイメージビジュアル。



GPHGのイノベーションプライズを受賞したエブリウェア・ホライゾンのイメージビジュアル。

今年は本当にいい年でした。

Merry christmas and happy new year, Rémi!

関連 Web Site
Krayon, mécanismes horlogers suisses(英語サイト)
https://www.krayon.ch/en/accueil

参考資料 国立天文台 暦計算室
http://eco.mtk.nao.ac.jp/koyomi/

参考資料 海上保安庁 海洋情報部 日月出没計算サービス
http://www1.kaiho.mlit.go.jp/KOHO/automail/sun_form3.html

Noble Styling
http://noblestyling.com/