GPHG2018 クレヨン エブリウェア ホライゾンがイノベーション プライズを受賞!
By : CC Fan最も信頼度の高い「年間ベスト時計賞」とされるGPHG2018、今年も各賞に素晴らしい時計が選ばれました。
総評・各受賞ピースは既にKIHさんがニュースとして掲載してくださっているので、個人的に注目した時計をいくつか見ていきたいと思います。
なによりもまず、今年最も注目したといっても過言ではないクレヨン(Krayon)のエブリウェア ホライゾン(Everywhere Horizon)はプリセレクトで選ばれた男性用コンプリケーション部門では受賞を逃したものの、プリセレクトウォッチ全体から革新的な時計に与えられるイノベーション(Innovation=革新)プライズを勝ち取りました!
遡って見ると、イノベーションプライズまたはイノベーションウォッチプライズは、2017年にはゼニスのシリコン一体型脱進機デファイ ラボ(Defy Lab)、2015年にはアントワーヌ・プレジウソの3つのトゥールビヨンを同調させ、回転させるトゥールビヨン オブ トゥールビヨンズ(Tourbillon of Tourbillons)、2014年にはウルベルクのタイムグラファーを内蔵したEMC、2013年はヴィアネイ・ハルターの"理に叶った"3軸トゥールビヨン ディープ スペース トゥールビヨン(DEEP SPACE TORUBILLON)、2012年は液体で時刻を表示するHYT…とまさに革新的な時計に与えられる賞と言えます。
ちなみに、男性用コンプリケーション部門はローランフェリエのガレ アニュアルカレンダー スクールピースが制しました。
さて、クレヨンのエブリウェアについては今までも何度も記事を掲載してきましたので、そちらもどうぞ。
受賞者の集合写真、創業者レミ・マイヤ(Rémi Maillat)氏は時計界のレジェンド、Special Jury Prizeを獲得したジャン=クロード・ビバー(Jean-Claude Biver)氏の左隣というロケーション。
会場の空気を伝える、"atomsphere"フォトにちょうどいいシーンが。
とても良い笑顔です。
トロフィーと共に、もちろん腕にはエブリウェア!
このような場は不慣れなのか緊張した様子のマイヤ氏。
公式の動画とインタビュー動画もどうぞ。
このジャケットは…
スイス取材紀行の時と同じジャケット、特徴的なカラーで氏の個性を表現しています。
エブリウェアはカスタムが基本の非常に特殊かつ高価なピースですが、セールスは好調なようで、今回のエブリウェア ホライゾンもすでに売約済みのピースをオーナーのご厚意で貸し出していただき、GPHGのワールドツアーに持ち込んだそうです。
このような"理解のある"オーナーに恵まれているのも素晴らしいと思います。
さらに、スイス取材紀行の時点で別の1本が売約済み、部品製造は外部の工房に依頼する水平分業も相まって、設備のプレッシャーがなく、会社も好調なようです。
GPHGのワールドツアーとは別に、クレヨンとしてもワールドツアーを行っており、9月10月はとても忙しかったようですが、その中で時間を作っていただき、訪れることができたのは正に幸運でした。
まあ、取材紀行は"クレヨンありき"でスケジュールを組んだので当たり前と言えば当たり前ですが…
機構についてはある程度理解が進み、詳細記事を書く!と取材紀行の記事で言ったのですがなかなか取り掛かれず…年内には何とか。
イノベーションという言葉が多用されるテクノロジーの世界でも感じますが、真に革新的なものほど意図がなかなか理解されないのか、最初はごく自然に受け入れられ、あまり騒がれず、しばらくたってから実は…と取り上げられる印象があります。
今回、GPHGという形でわかり易く評価されたことで、よりメディアに露出することを期待しています。
マイヨ氏はとてもオープンな性格で、技術資料を見ながらのディスカッションで自分の発想を解説してくれます。
考え方がわかったからと言って、生半可な理解と技術では同じものを作ることはできないという自信の表れと理解しました。
メディア各位は是非、取材しましょう!
CADによる解説も念入りに行ってくれます。
映っているのは複雑な構造を持つ差動歯車周りの断面図。
独創的な構造の地板。
サファイアクリスタルの日の出・日の入りリングを回転させるための歯車はムーブメント側から直接文字盤側に噛み合う構造になっています。
三次元化する前の余計な情報を抜いた"数学的抽象化"によるコンプリケーション設計の片鱗。
この設計手法により、ユニバーサル・サンライズ・サンセットが実現可能だと確信したからこそ、クレヨンを創業し、エブリウェアを作り上げることができました。
大学卒業後の氏の経歴は公にはできませんが、"大手メゾン"で手掛けた作品名を聞けば納得するほどの実績を積んでからの独立であり、所謂"グランド・コンプリケーション"の設計実績もあると言えばその実力はよく伝わるかと思います。
大手メゾン時代から重視していたこととして、複雑な機能であっても薄く収め、日常使いが行えるようにすること、エブリウェアも直径42mm厚み11.70mmと内包する複雑性に対して信じられないほどのコンパクトさです。
カンタロスの跡が残っていますが…
このサイズ感で信じられない複雑性、天文機能の中でも特に日常生活に根付いた日の出・日の入りを計算するという機能は本当に素晴らしい。
なかなか難しいでしょうが、これ一本を常時使い続け、世界各地でその場所の日の出と日の入りを感じながら旅するジェットセッター…憧れのスーパービジネスマン像です。
なにより、複雑性を感じさせない文字盤デザインは秀逸で、"少し変わったレギュレーターウォッチ"ぐらいにしか見えないデザインでありながら、内包する機能とのギャップはとても良いコントラストです。
もちろん、やり残したこと・拡張案もいくつかあり、"高価なくせに永久カレンダーじゃない"という批判があることは承知しており、これに対するカウンターのプロジェクトが現在進行中。
概要すら現状は他言無用で明かせませんが、聞けば驚くような超複雑時計かつ、各機能が日常的に使えるように自然に統合されたものとなっています。
プロジェクトはまだ始まったばかりで設計も初期段階ということですが、今後も追っていきたいとおもいます!
こちらは恵比寿のノーブルスタイリングギャラリーにて展示中の氏のサインとXYプロッタによる設計図。
PCの画面上だけではなかなか感じられない複雑性を感じることができます、是非ご覧いただきたく。
私も個人的に欲しいぐらいです。
次にお会いできるのはジュネーブでしょうか?
関連 Web Site
Krayon, mécanismes horlogers suisses(英語サイト)
https://www.krayon.ch/en/accueil
参考資料 国立天文台 暦計算室
http://eco.mtk.nao.ac.jp/koyomi/
参考資料 海上保安庁 海洋情報部 日月出没計算サービス
http://www1.kaiho.mlit.go.jp/KOHO/automail/sun_form3.html
Noble Styling
http://noblestyling.com/
総評・各受賞ピースは既にKIHさんがニュースとして掲載してくださっているので、個人的に注目した時計をいくつか見ていきたいと思います。
なによりもまず、今年最も注目したといっても過言ではないクレヨン(Krayon)のエブリウェア ホライゾン(Everywhere Horizon)はプリセレクトで選ばれた男性用コンプリケーション部門では受賞を逃したものの、プリセレクトウォッチ全体から革新的な時計に与えられるイノベーション(Innovation=革新)プライズを勝ち取りました!
遡って見ると、イノベーションプライズまたはイノベーションウォッチプライズは、2017年にはゼニスのシリコン一体型脱進機デファイ ラボ(Defy Lab)、2015年にはアントワーヌ・プレジウソの3つのトゥールビヨンを同調させ、回転させるトゥールビヨン オブ トゥールビヨンズ(Tourbillon of Tourbillons)、2014年にはウルベルクのタイムグラファーを内蔵したEMC、2013年はヴィアネイ・ハルターの"理に叶った"3軸トゥールビヨン ディープ スペース トゥールビヨン(DEEP SPACE TORUBILLON)、2012年は液体で時刻を表示するHYT…とまさに革新的な時計に与えられる賞と言えます。
ちなみに、男性用コンプリケーション部門はローランフェリエのガレ アニュアルカレンダー スクールピースが制しました。
さて、クレヨンのエブリウェアについては今までも何度も記事を掲載してきましたので、そちらもどうぞ。
- 基礎・外装編
- ムーブメント編
- 操作動画・その他編
- 創業者レミ・マイヤ氏インタビューと実機レポート
- ムーブメント詳細編
- ジャパンプレビューイベント
- エブリウェア・ホライゾン登場
- プレスキット
- GHPG2018 男性用コンプリケーション部門のプリセレクトウォッチに
受賞者の集合写真、創業者レミ・マイヤ(Rémi Maillat)氏は時計界のレジェンド、Special Jury Prizeを獲得したジャン=クロード・ビバー(Jean-Claude Biver)氏の左隣というロケーション。
会場の空気を伝える、"atomsphere"フォトにちょうどいいシーンが。
とても良い笑顔です。
トロフィーと共に、もちろん腕にはエブリウェア!
このような場は不慣れなのか緊張した様子のマイヤ氏。
公式の動画とインタビュー動画もどうぞ。
このジャケットは…
スイス取材紀行の時と同じジャケット、特徴的なカラーで氏の個性を表現しています。
エブリウェアはカスタムが基本の非常に特殊かつ高価なピースですが、セールスは好調なようで、今回のエブリウェア ホライゾンもすでに売約済みのピースをオーナーのご厚意で貸し出していただき、GPHGのワールドツアーに持ち込んだそうです。
このような"理解のある"オーナーに恵まれているのも素晴らしいと思います。
さらに、スイス取材紀行の時点で別の1本が売約済み、部品製造は外部の工房に依頼する水平分業も相まって、設備のプレッシャーがなく、会社も好調なようです。
GPHGのワールドツアーとは別に、クレヨンとしてもワールドツアーを行っており、9月10月はとても忙しかったようですが、その中で時間を作っていただき、訪れることができたのは正に幸運でした。
まあ、取材紀行は"クレヨンありき"でスケジュールを組んだので当たり前と言えば当たり前ですが…
機構についてはある程度理解が進み、詳細記事を書く!と取材紀行の記事で言ったのですがなかなか取り掛かれず…年内には何とか。
イノベーションという言葉が多用されるテクノロジーの世界でも感じますが、真に革新的なものほど意図がなかなか理解されないのか、最初はごく自然に受け入れられ、あまり騒がれず、しばらくたってから実は…と取り上げられる印象があります。
今回、GPHGという形でわかり易く評価されたことで、よりメディアに露出することを期待しています。
マイヨ氏はとてもオープンな性格で、技術資料を見ながらのディスカッションで自分の発想を解説してくれます。
考え方がわかったからと言って、生半可な理解と技術では同じものを作ることはできないという自信の表れと理解しました。
メディア各位は是非、取材しましょう!
CADによる解説も念入りに行ってくれます。
映っているのは複雑な構造を持つ差動歯車周りの断面図。
独創的な構造の地板。
サファイアクリスタルの日の出・日の入りリングを回転させるための歯車はムーブメント側から直接文字盤側に噛み合う構造になっています。
三次元化する前の余計な情報を抜いた"数学的抽象化"によるコンプリケーション設計の片鱗。
この設計手法により、ユニバーサル・サンライズ・サンセットが実現可能だと確信したからこそ、クレヨンを創業し、エブリウェアを作り上げることができました。
大学卒業後の氏の経歴は公にはできませんが、"大手メゾン"で手掛けた作品名を聞けば納得するほどの実績を積んでからの独立であり、所謂"グランド・コンプリケーション"の設計実績もあると言えばその実力はよく伝わるかと思います。
大手メゾン時代から重視していたこととして、複雑な機能であっても薄く収め、日常使いが行えるようにすること、エブリウェアも直径42mm厚み11.70mmと内包する複雑性に対して信じられないほどのコンパクトさです。
カンタロスの跡が残っていますが…
このサイズ感で信じられない複雑性、天文機能の中でも特に日常生活に根付いた日の出・日の入りを計算するという機能は本当に素晴らしい。
なかなか難しいでしょうが、これ一本を常時使い続け、世界各地でその場所の日の出と日の入りを感じながら旅するジェットセッター…憧れのスーパービジネスマン像です。
なにより、複雑性を感じさせない文字盤デザインは秀逸で、"少し変わったレギュレーターウォッチ"ぐらいにしか見えないデザインでありながら、内包する機能とのギャップはとても良いコントラストです。
もちろん、やり残したこと・拡張案もいくつかあり、"高価なくせに永久カレンダーじゃない"という批判があることは承知しており、これに対するカウンターのプロジェクトが現在進行中。
概要すら現状は他言無用で明かせませんが、聞けば驚くような超複雑時計かつ、各機能が日常的に使えるように自然に統合されたものとなっています。
プロジェクトはまだ始まったばかりで設計も初期段階ということですが、今後も追っていきたいとおもいます!
こちらは恵比寿のノーブルスタイリングギャラリーにて展示中の氏のサインとXYプロッタによる設計図。
PCの画面上だけではなかなか感じられない複雑性を感じることができます、是非ご覧いただきたく。
私も個人的に欲しいぐらいです。
次にお会いできるのはジュネーブでしょうか?
関連 Web Site
Krayon, mécanismes horlogers suisses(英語サイト)
https://www.krayon.ch/en/accueil
参考資料 国立天文台 暦計算室
http://eco.mtk.nao.ac.jp/koyomi/
参考資料 海上保安庁 海洋情報部 日月出没計算サービス
http://www1.kaiho.mlit.go.jp/KOHO/automail/sun_form3.html
Noble Styling
http://noblestyling.com/
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私も買えませんが、ここまで突き抜けた存在は、"偶像"としているだけで元気づけられる存在になっています。
過去の復刻ばかりではなく、新しいコンプリケーションを作ろうという気概は本当に素晴らしい。
余計な厚みもなく、まさにその名の通り年中つけたくなる。
買えんけど(TдT)