ヴィアネイ・ハルター 大いに語る 独立時計師という生き方

 By : CC Fan
ランチ・インタビューに続き、ヒコ・みづのジュエリーカレッジ専門学校の時の記念日のイベントに合わせたヴィアネイ・ハルター(Vianney Halter)氏の講演の様子をレポートします。



様々なイベントが行わる時計フェスタの中でも、ヴィアネイの講演は目玉の一つとして注目を集めているようでした。
講演は2回、11時からの研究生を対象としたものと、14時からの一般向けで、私は両方にプレス枠で参加させていただきました。

研究生向けの講演では現在開発中というコンスタントフォース機構を組み込んだトゥールビヨンの10倍模型や、ディープ・スペース・トゥールビヨンなどの実例を映しながら自身の経験をもとに"後進"に伝えたいメッセージを熱く語っていました。

トゥールビヨンの解説は別記事に分け、ここではヴィアネイからのメッセージをお伝えできればと思います。



トゥールビヨンの10倍模型を組み立てるヴィアネイ。





10倍模型を動かしたので、カチ…カチ…という心地よい音の中での講演となりました。



時への情熱と題し、講演がスタート、情熱というのは時計に使われるルビーの石言葉でもあるそうです。
その情熱を伝えるためにヴィアネイは10年ぶりに来日、後輩と会えることを楽しみにしていたと。

まずは軽く経歴を紹介、今回は独立時計師として25周年だそうです。

パリの時計学校を卒業し、10年間修復の仕事を行っており、その時の経験が今でも役に立っているとのこと。
その後F.P.ジュルヌらとTHA社を立ち上げ、大手ブランドからの下請けの仕事を行い、さらに経験を積みます。
そして、独立して自身の会社ジャンビエ社を設立、独立時計師としての活動を開始し、1999年にはAHCIに入会します。
”良かった時期"も"悪かった時期"もありつつ、独立時計師という生き方を20年以上続けてきた…経験を後進に伝えたいと。

キャリアのスタートが修復だったこともあり、修復のノウハウは独立時計師としての時計作りに非常に役に立っており、修復で学んだことで設計もできるようになったとの考え。
設計図もなく、部品も自ら作らないといけない修復の経験があるおかげで、時計を設計し、部品も作ることができたんだとのこと。

"いいこと"だけではなく、現実的な話も合わせて語っており、"皆さんは時計が好きでこの仕事をやりたいと思っているでしょうが、仕事である以上好きでないこと/やりたくないこともやらなくてはいけません、それでも志は失わないでください"ということや、"生活のためにはお金が必要です、まずは食べていけなくてはいけません"と修羅場を潜ったことを思わせる話も。

"例えば時計雑誌を見て、このような時計を作りたいという時計があるでしょう、それももちろん大事ですが、自分しか作れない、自分を表現するような時計を作ることを考えてください"というのが、私はヴィアネイが今回一番伝えたいことではないかと理解しました。
彼はその発想で、似ていない独自の世界を25年にわたって築いてきたのですから…

そしてトゥールビヨンを見ながらヴィアネイのものづくりについての話へ…
こちらは別にまとめます。

"お話"ではなく、実際に20年以上にわたり独立時計師という生き方を選んできたヴィアネイの"生"の言葉は、後進にもしっかり伝わったのではないかと思いました。

研究生の皆さんは非常に精力的で、ヴィアネイと活発に意見交換をしていました。



今回の出会いを祝し、ヴィアネイのブロマイド?にサインを入れたものが作られました。



私もいただくことができました…
アニバーサリーにも使われた、ヴィアネイのサインが。



時間を改め、一般向けの講演。
こちらでは"時計界のピカソ"と呼ばれるという逸話からスタート。
父親が機関車の運転手で、幼いころから機械に興味があり、クズ金属として溶かされる運命だった古いクロックを引き取って保存していたのが時計師としての原体験だそうです。

経歴はほぼ研修生向けと同じ内容でしたが、ディープ・スペース・トゥールビヨン(2013年)を発表する直前は時計師をやめようかと思うほど落ち込んでいたことや、スタートレックをずっと見続けていてディープ・スペース・トゥールビヨンへの着想を得たエピソードが紹介されました。

落ち込んだ原因は、リーマンショックの影響で景気が急激に悪化し、20人いた従業員を全員解雇しなくてはいけなかったことで、その後ディープ・スペース・トゥールビヨンで復活するまではかなり苦難の道だったようです。
しかし、今振り返ってみると、経営者から一時計師に戻り、自らベンチ(時計師机)に向かえるようになったことは"悪いことばかりではなかった"と思っているそうです。
現在56歳、まだまだ先は長く、時計師は一生できる仕事で、情熱があればアップ・ダウンは平気だ!と力強く締めくくりました。

実際に第一線に立って走り続けたヴィアネイの経験・情熱が日本の若手にも伝わったと思います!

関連 Web Site

Vianney Halter
http://www.vianney-halter.com/index.php

コンタクト
contact@vianney-halter.com

小柳時計店
http://www.koyanagi-tokei.com/vianney-halter.html