ショパール 「アルパイン イーグル」ローンチイベント - 本物の鷹(イーグル)も登場!

 By : KIH

ショパールからこのモデルが昨年10月に発表
されて以来、いくつものブランドから「ラグ・スポ」モデルが投入されてきました。流行もしくは時代の要請なのか、ステンレススチールケースという実用金属への回帰なのか。価格もピンキリなブランドもありますが、一般的には目が飛び出るほどのものではなく、それだけに、コストもかけられない価格帯となるところですが、以前も述べた通り、そういう価格帯にも非常に強いブランドというのは、ショパールのような「経営=オーナーシップ」 の会社であろうと思います。

さて、ほぼ5か月が経過したわけですが、このタイミングでのローンチイベントというのは、理由がありました。「ました」というのは、その理由がなくなってしまったからでして・・・。
時節柄、カール-フリードリッヒ・ショイフレ共同社長の来日が中止になってしまったのです! 無論、会場では以下のビデオで、このプロジェクトの言い出しっぺであった、カール‐フリッツ君と共に、日本に行けなくなって本当に残念だ、というメッセージを寄せています。
そのメッセージの中で、「すぐに(日本に)戻る (I'll be back soon)」という言葉を使ってくれたのは印象的でしたね。ショイフレ共同社長は、世界中を回りますが、日本に来る時だけ、奥様(こちらでご紹介済み)を連れてくるんだそうです。「日本好き」という点では、実際にジュネーブの工場にも日本庭園が確か2つありましたな。



ジュネーブ工場の日本庭園その1とその2




というわけで、イベントはすべてトーマス・ドベリ ショパールジャパン代表取締役によって行われました。日本語も達者な氏ですが、微妙なニュアンスの言葉を選んでショイフレ共同社長が書いたセリフだったので、あえて英語の通訳を介しての物語となりました。字が多いですが、我慢して読んでいただけると幸いです。




トーマス・ドベリ ショパールジャパン代表取締役


1.ショパールと、ステンレススチールのスポーツ時計(ラグ・スポ)
以前書いていますが、カール-フリッツ君が言い出しっぺ、というのは本当の話。1980年に当時22歳(!)だった、現共同社長のカール-フリードリッヒさんの発案により、サンモリッツ コレクションを世に出しました。当時、ショパールにとって初めてのステンレススチールケースの時計でした。お父さん(つまり、カール-フリッツ君のお祖父さん)は「そんなステンレススチールの時計なんて」と最初は大反対。しかし、これからはこういう「かっこいい、機能重視デザインのスポーティーな」時計が必要だ、と説得してようやく世に出たとか。コンセプトは「サンモリッツにおける(ラグジュアリーな)ライフスタイル」でした。15年間にわたり生産され、5万本以上を売り上げました。



さて、40年経って今度はカール-フリッツ君の番。お父さんの執務室でサンモリッツを見つけ「こんなクールな時計、また出すべきだよ」。お父さんは反対。サンモリッツはショパールにとって1つのアイコンであり、そのアイコンをいじるのには相当の覚悟と情熱・革新性が必要。それに、今走っているプロジェクトで手一杯だ、と。お父さんに反対されたカール-フリッツ君、今度はお祖父さんに相談に行きます。カールお祖父さんは、「なんかどこかで見たような」と思ったかどうかわかりませんが、孫の言うことですから、一緒にカール-フリードリッヒお父さんを説得してくれました。そしてようやく、デザイン担当部署と共に絵を描き始めたのでした。というのが、実は2015年初のこと。いやいや、大した時間と手間をかけて作りましたね。ドベリさんはしつこく、なぜこの話が本当だとわかるのか、という点を説明。5年前かそれくらいにジュネーブに出張したときに、ランチルームでカール-フリッツ君が隣に来て、突然サンモリッツの後継となるラグ・スポを作りたいんだけどどんなのがいいかなあ、と相談してきたそう。なるほど、です。立派なランチルームですよ。



この祖父・父・息子 三代による「アルパイン イーグル物語」、是非是非、このページの動画をもう一度見てください

2.工夫した点、特に注目してほしい点
まずは、鷲の虹彩をモチーフにしたダイヤルのパターン。ドイツ語に(注: ショイフレ家も、ドベリ社長も、ドイツ語系の方々)「鷲の眼」という表現があり(英語にもEagle Eyeという表現はあります。同名の映画もありましたね。「鋭い目」という意味ですね)、例えば、眼力がある人を指して「あの人は鷲の眼を持ってるね」などと言うそう。日本語だと「鷹の眼」という言葉の方が多いですね。鷹と鷲の違いについては、後述します。実際、鷲は人間の約8倍の視力があると言われていて、はるか上空から地上の小動物を見つけるのが得意なのです。というように、そもそも「サンモリッツ」が自然に囲まれたサンモリッツのライフスタイルをコンセプトに作られたように、アルパイン イーグルもデザインの源泉はやっぱり自然なのです。そして、一番売れ筋の青(アレッチブルー)ダイヤルですが、その青は、まさにスイスの氷河(スイス最大のアレッチ氷河)の色そのもの、とのこと。やはりデザインのソースは自然ですね。グレーは何でしょう? 雪山、かな・・。答: ベルニナグレーはベルニナ山群の岩々、だそうです。



と、いろいろありますが、注目点はやはり「ルーセント スチール A223」でしょう。この金属は一体何でしょう?
これはいろいろな意味で大事。開発に4年をかけた、と。ショパールは、今やどのブランドにとっても当然かもしれませんが、どこよりも早く「Ethical(倫理的)」なモノづくりにこだわり始めました。例えば、こちらをご参照。Ethicalな貴金属を使うなら、スチールだってそうしよう、ということでいろいろなスチールのサプライヤーにアプローチしたそうです。「Responsible Steel」という連合のメンバーのオーストリアの会社を見つけ、そこと共同開発することに。結果、70%をリサイクルしたスチールを使った(すなわち、二酸化炭素発生量をかなり抑える結果に)Lucent Steelと呼ばれるスチールを開発。当然、そこから納入したスチールは100%使い切る、というか、削りカスとかはすべてリサイクルすることも徹底しているとのこと。で、Lucentの意味ですが、数回のプロセスを経て不純物を徹底的に取り除いたことにより、アレルギー物質も極限まで減らすことができ、かつ、硬度もヴィッカーズ指数で223、という通常のスチールのヴィッカーズ150の1.5倍の硬度を達成したのです。ポイントは、「自然に配慮した」「不純物の極めて少ない」スチールで、耐久性が高く、磨いた部分(ブレスの中央部分)の輝きは、鉄のそれではなくむしろプラチナなどの貴金属の輝きに近くなっている、というわけです。「Ethicalなショパール」「アイコン」「ラグジュアリー」の名にふさわしい素材というのが答でした。



で、最後になりましたが、ムーブメント。最近出た某雑誌に「インハウスムーブだから”良い時計”とは限らない」などと偉そうに書きましたが、ショパールは「インハウスだからこそいいものに惜しげもなく投資でき、いいものが出来上がる」ブランドなのです。操作性についても、以前書いた通り、「カッチリ感」はスイス時計とは思えないくらい(失礼!)で、非常に安心感のあるムーブです。

3.まとめてしまうと
安心感のあるムーブ、自然からもらったデザイン、そして自然への負担をできるだけ減らそうとした製造工程。自然と共に歩む、やっぱり真面目なブランドです。私の好きな言葉は、ccfanさんも時々使ってくれていますが、「buy the watchmaker, NOT the watch」。作っている人・人たちを好きになれなければ、その時計を買うのはやめよう、という意味で私のモットーになってしまった言葉ですが(時計趣味人生が長いといろいろありましてね・・・)、ショパールは私にとっては、そんなブランドです。いつも、真面目さに感心してしまう。

さらに、今回、なおも自然にお返しをしよう、ということで、Eagle Wings Foundationという環境保護団体も設立し、さらにさらに、このイベントにおいて、新たに「バードライフ・インターナショナル」という世界的NGOへの寄付の調印式も行われ、名誉総裁であられる高円宮妃久子殿下もご来場(ショパールさんよりオフィシャル写真をいただきました)。本当は、ショイフレさんとの調印だった予定ですが、ドベリさんが代わりに調印しました。



というわけで、非常に長くなって恐縮でしたが、残りは写真をお楽しみください! 鷲と鷹の違いについても下に書かせていただきました。。



今回は小田原。温泉以外の用事できたのは初めてだ・・・。


場所は、江之浦測候所。名前と違って、アートな世界です。








古代の劇場のよう。ここで、最初のプレゼン、挨拶が行われました。


この舞台、後ろに落ちたらどうなるんだろ・・・。


その舞台、ではなく、手前の石の上でドベリさんの挨拶。ショイフレさんが来れないことをお詫び。


そして、なんと、鷹匠(たかじょう)の登場。






かっこいい。。


鷹の眼は獲物を狙ってます(誰や、これ?)。


佐賀で鷹匠をされている、石橋さん。お若いのにすごいです。16歳で鷹匠の認定を受けたとか。各種イベントに引っ張りだこみたいですね。しかし、このイベントにはぴったりの方でした。

*ここで、細かい話ですが、Eagle=鷲(わし)、Hawk=鷹(たか)の違いについて。Alpine Eagleという名前ですから、本来は「鷲」をモチーフにしておりまして、本当なら「鷲」君に来てほしかったところです。で、この「鷲」と「鷹」の違いですが、インターネットでいろいろ調べてみますと、生物学的な違いはありません。どちらもタカ目タカ科で、生物分類学的に両者に違いはないのです! 大きさによって、一番大きい(85-100cm)のを「鷲」、ちょっと小型(45-70cm)を「鷹」、もっと小さいの(35-50cm)を「隼」。そして、こちらはやや違う遠い親戚(鳶は主に死骸を食べますが、その他3つは生きた獲物しか食べません)とされていますが、「鳶(とび、とんび)」は、鷹と同じくらいの大きさ(60cm)です。「鷲」はかなり大きいですね。鷹匠は、鷲も扱うのだろうか・・・。
誠にわかりにくい! というか、わかりにくい文章で、タイトルや文章で説明してしまいスミマセン。。


こちら、頼もしく時を刻み続けるL.U.C。もちろんショパールのイベントですから・・。当然でしょう。


会場に飾られていたアルパイン イーグル。








いいっすね。。きれいによくできた時計です。


うれしそうなドベリさんと、こちらが本物の Eagle イーグル=鷲!  ぱっと見ただけじゃ、わかりませんでした。石橋さん、ご指摘ありがとうございました。。。



毎度のことながら、ショパールジャパンの皆さま、ありがとうございました!