フェルディナント・ベルトゥー クロノメーターFB 2RE 実機レポート&フュゼ・チェーンとルモントワールの組み合わせについての考察
By : CC Fanこの記事の1分前に発表されているであろうフェルディナント・ベルトゥー(FERDINAND BERTHOUD)のムーブメントまで新造の完全新作クロノメーターFB 2RE、1770年に「初代」ベルトゥーが« フランス国王と海軍の時計・機械職人 »の称号を得たことから今年で250周年となることを記念した作品で、ベルトゥーが活躍した海洋時計、マリンクロノメーターの意匠と機構を色濃く受け継ぎます。
発表に先立ち、プロトタイプを用いたお披露目会が開かれたのはなんと6月某日、個人的には「今日は夜なべしてレポートだ!」と思っていたら2ヵ月近く「お預け」という事になってしまいましたが、やっとレポートできます。
昨今の情勢を反映し、本国担当者は来日せずプロトタイプだけが届き、コミュニケーションはTV会議システムというシステムです。
「初代」ベルトゥーが活躍した時代は海洋征服のために時針の位置を天測航法で同定するための正確な時計というのはまさに「軍事機密」であり「兵器」だった時代で、いかに正確な時計を作って安全に航行するかフランスとイギリスの間で競争が行われていた時代だった…とタイムキーピングの歴史を振り返ります。
ベルトゥーがルイ15世の注文で制作したマリンクロックNo.6はロシュフォールからサントドミンゴへの12ヶ⽉間の旅の間に精度を保っており、これによりベルトゥーは1770年に« フランス国王と海軍の時計・機械職人 »の称号を与えられます。
この躍進を支えた作品が今回のFB 2REのインスピレーションの元となりました。
ブランドの象徴ともなっているチェーン・フュゼに加えルモントワール・デガリテ機構を組み合わせ、「精度のためにやれることはすべてやる」というムーブメントと理解しました。
古典的なマリンクロノメーターの意匠を引き継いだ2段エナメル文字盤。
これは針と文字盤の間隔を狭めることで視差(目の位置によって見え方が異なる現象)を最小にし、読み取りやすくするための工夫です。
時間(12)のインデックスはローマ数字、分と秒(60)はアラビア数字によって表示されています。
マリンクロックNo.6の意匠を取り込んだケース造形、防水コンテナに内部の機構を確認するためのネジ止めされた窓、ラグもネジ止めされています。
ケースサイズは44mmですが、ラグが短く、ベルト取り付け位置がぎりぎりまで寄せられているので数字から感じるような大きさはありません。
新しい製法を使う事で既存のエナメルダイヤルよりも薄くすることに成功したという文字盤。
段差とインデックスに届くように配置された針で読み取りは容易です。
また、針の真ん中が抜かれているため、重なったときも問題はありません。
チェーン・フュゼとルモントワール・デガリテ!
ムーブメントの構造として、見える部分には大型テンワとチェーン・フュゼ香箱そして、ルモントワール・デガリテを持つガンギ車だけを可視化し、メイン輪列は隠した「ミステリー」的な構造になっているため、ルモントワールの動きだけを堪能できます。
構造はあとから見ましょう。
腕に載せるとこんな感じ。
小さいとは言えませんが、ラグのベルト取り付け部がぎりぎりまでケースに近づいているため、感覚的には42mmの普通の構造のケースぐらいに感じます。
精度(と50時間パワーリザーブ)のためにはこのサイズがぎりぎりとのこと。
色によっても印象が違うかも…
段差を強調し、立体的な構造を持つムーブメント。
個人的には、今回の作品はより「ベルトゥーらしい」と感じました、なぜならトゥールビヨンを使っていないからです。
フェルディナント・ベルトゥー自体はブレゲより前の時代の人で、トゥールビヨンが発明されたころはすでに第一線から退いていたはずです。
FB1の時は「ベルトゥーなのにトゥールビヨンなの?時代が合って無くない?」と意地悪な質問をして「これは現代のベルトゥーとしての作品だ」という答えをもらったりしていましたが、FB 2REはまさに古のベルトゥーが現代に復活したような作品ではないでしょうか。
さて、歴史・意匠・各種製法など追っていくとどれも興味深い作品ではあるのですが、やはり個人的に最も注目するポイントはフュゼ・チェーンとルモントワール・デガリテを組み合わせたという事でしょう。
両方ともトルクを安定化させる機構であり、どちらか片方しかひとつの作品には載せられないことが多く、両方を搭載した作品は数えるほどしかありません(そのうち一つはWMOでも取り上げたカーステン・フレスドルフが過去に居たブランドです、同じ説明を彼からも受けていて確信に至りました)。
これは、機能が被るので両方を搭載することは無意味と考えられていると理解していましたが、本当にそうか?という事に今回確信するに至りました。
最初に書いてしまえば、「働きが相補的なので両方搭載は意味がある」という結論になります。
まずはムーブメントの構造を見てみましょう。
地板に対し、ブリッジで支えられる2-4番車が取り付けられています。
高さのある香箱は吊り下げ構造になっておりムーブメントの片側から支えられています。
2-4番車の反対側にはパワーリザーブ計測用の輪列が備えられており、香箱の回転数を計測します。
ピラーの上にテンワとルモントワール・デガリテが取り付けられるプレートを取り付けます。
2-4番車とパワーリザーブインジケーターの軸は下側のブリッジに取り付けられているため、このプレートには軸石が見えず、まるでどこにもつながっていないような「ミステリー」構造に見えます。
ルモントワール・デガリテの脱進用レバーと制御用のルーローの三角形カムを備えたガンギ車。
ルモントワール脱進を行うためのアンクル。
コの字型の部分にルーローの三角形型カムが入り左右に振ることで脱進を行います。
香箱とのコントラストが映える大型のテンワ。
フリースプラングで慣性モーメントで緩急調整を行う可変慣性テンワです。
最後にブリッジを取り付け。
サイドから見るとピラー構造とルモントワール・デガリテの重なりがよくわかります。
香箱自体の高さがあるため、その分をうまく割り振って2階建てにしていることが分かります。
ルモントワール・デガリテの脱進用レバーが一番手前に来て、その構造を余すところなく鑑賞できます。
ルモントワール・デガリテのスケッチです。
4番車からのトルクは青色の3本の脱進レバーに入力され、同軸構造になったガンギ車とルーローの三角形カムとはヒゲゼンマイのみでつながっています。
ヒゲゼンマイに引っ張られてをガンギ車が回転すると、同じくルーローの三角形カムも回転し、手前のルモントワール脱進用のアンクルを振ります。
アンクルが振られることで、2.5振動(1秒)に1回石が外れてレバーを開放し、レバーは60度進みます。
レバーが進むことでヒゲゼンマイにエネルギーがチャージされそのエネルギーで回転を続けます。
ヒゲゼンマイのトルクは角度にほぼ比例し、1秒に1回、一定角度60度だけ進めているため、この機構はガンギに与えるトルクを一定にするコンスタントトルク機構として働きます。
これは輪列の最終段階、ガンギ車の直前でトルクを安定化していることになります。
逆に、チェーン・フュゼは輪列の入り口、香箱の部分でトルクを安定化する機構です。
何もしていない香箱のトルクは緑で示されたように徐々に減少するようなカーブを示します、それに対して逆特性を持つ円錐形(フュゼ)を組み合わせた変速機でトルクが一定になるように変速するのがフュゼ・チェーンの基本的な考え方です。
青色のグラフが変速後のトルクで、ほぼ一定になっていることが分かります。
さてこの二つはどのような違いがあるのでしょうか?
チェーン・フュゼは変速機として働いているためトルクと回転量が両方とも変化しています、エネルギー(正確には仕事)はトルクと回転量の積なので、チェーン・フュゼは摩擦などで失われるエネルギーを除けばエネルギーロスなくトルクを一定にすることができています。
しかし、変速という特性から回転速度が変化してしまうので輪列の途中に入れることはできず、必ず輪列の入り口である香箱に設ける必要があります。
同じ視点でルモントワール・デガリテを見ると、トルクを一定にしていますが、回転量は常に1秒に60度で変化していません、つまりエネルギーとしてみると、余剰なトルク分のエネルギーは捨ててしまっていることになります。
入力と出力のトルクの差が大きいほどこのロスは大きく、またトルクを増やすことはできないため、ルモントワール・デガリテを常に動作させようとすると入力トルクをパワーリザーブ全域で充分に大きくとる必要が出てきます。
かといって入力トルクを大きくすると、今度がルモントワール脱進が難しい(力の弱い側から強い側を動かさないといけない)という別の問題もあり、バランスを取るのはかなり難しく、一般的なルモントワールはパワーリザーブ全域でルモントワールが動作せず、パワーリザーブの半分ぐらいでルモントワール脱進が行われなくなる設計が多いようです。
私が知っている例外は香箱のトルクがとにかく強いランゲ31とルモントワール自体が表示に関わっているためルモントワールが動作しなくなる前に止めるツァイトヴェルクぐらいでしょうか。
チェーン・フュゼは
更に、ルモントワールのトルク変動抑制能力が無限ではないことを考えると、チェーンでルモントワール出力+α程度のトルクに整えてからルモントワール・デガリテで最終的に整えるという戦略が考えられます。
FB 2REはまさにその戦略です。
左から順に、緑色の香箱の出力、それをチェーン・フュゼで安定化した青色の出力までは見ました。
チェーン・フュゼの出力も完全に均一ではなく、チェーンの摩擦によって少し凹凸がありますが、それに加え2-4番車を伝わる時に噛み合いによってトルクが変動する…と言うのが黄色のグラフです。
それを最後にルモントワール・デガリテで安定化したものが赤色のグラフで、トルク変動が減っていることが分かります。
また、ルモントワール・デガリテで捨てるエネルギー量も緑色をダイレクトに入れたときに比べて少なくなることもわかるでしょう。
これにより、FB 2REは50時間のパワーリザーブ全域でルモントワール・デガリテが動作し、ルモントワールが直結になる前に巻き止めによってムーブメントの動作が停止します。
同じ説明は以前にカーステンからも聞いていて納得感があり、今回の事で最初に書いたように「働きが相補的なので両方搭載は意味がある」という結論を得ました。
テンワ自体の慣性モーメントも大きく、十分な共振エネルギーを蓄え、ルモントワール・デガリテで振り角を一定にすることで歩度も担保すると極めて真っ当なアプローチです。
更に、ルモントワール・デガリテの副次的な効果として1秒ステップで動作するためデットビートセコンドとして正確な1秒を表示することもできます。
精度と古典的な仕上げの極致を目指したフェルディナント・ベルトゥーの名前にふさわしい作品ではないでしょうか。
クロノメトリー・フェルディナント・ベルトゥーに興味を持たれた方は、
下記までお問合せ下さい。
ショパール ブティック 銀座本店
東京都中央区銀座 2-4-14
ショパールビルディング
03(5524)8972
発表に先立ち、プロトタイプを用いたお披露目会が開かれたのはなんと6月某日、個人的には「今日は夜なべしてレポートだ!」と思っていたら2ヵ月近く「お預け」という事になってしまいましたが、やっとレポートできます。
昨今の情勢を反映し、本国担当者は来日せずプロトタイプだけが届き、コミュニケーションはTV会議システムというシステムです。
「初代」ベルトゥーが活躍した時代は海洋征服のために時針の位置を天測航法で同定するための正確な時計というのはまさに「軍事機密」であり「兵器」だった時代で、いかに正確な時計を作って安全に航行するかフランスとイギリスの間で競争が行われていた時代だった…とタイムキーピングの歴史を振り返ります。
ベルトゥーがルイ15世の注文で制作したマリンクロックNo.6はロシュフォールからサントドミンゴへの12ヶ⽉間の旅の間に精度を保っており、これによりベルトゥーは1770年に« フランス国王と海軍の時計・機械職人 »の称号を与えられます。
この躍進を支えた作品が今回のFB 2REのインスピレーションの元となりました。
ブランドの象徴ともなっているチェーン・フュゼに加えルモントワール・デガリテ機構を組み合わせ、「精度のためにやれることはすべてやる」というムーブメントと理解しました。
古典的なマリンクロノメーターの意匠を引き継いだ2段エナメル文字盤。
これは針と文字盤の間隔を狭めることで視差(目の位置によって見え方が異なる現象)を最小にし、読み取りやすくするための工夫です。
時間(12)のインデックスはローマ数字、分と秒(60)はアラビア数字によって表示されています。
マリンクロックNo.6の意匠を取り込んだケース造形、防水コンテナに内部の機構を確認するためのネジ止めされた窓、ラグもネジ止めされています。
ケースサイズは44mmですが、ラグが短く、ベルト取り付け位置がぎりぎりまで寄せられているので数字から感じるような大きさはありません。
新しい製法を使う事で既存のエナメルダイヤルよりも薄くすることに成功したという文字盤。
段差とインデックスに届くように配置された針で読み取りは容易です。
また、針の真ん中が抜かれているため、重なったときも問題はありません。
チェーン・フュゼとルモントワール・デガリテ!
ムーブメントの構造として、見える部分には大型テンワとチェーン・フュゼ香箱そして、ルモントワール・デガリテを持つガンギ車だけを可視化し、メイン輪列は隠した「ミステリー」的な構造になっているため、ルモントワールの動きだけを堪能できます。
構造はあとから見ましょう。
腕に載せるとこんな感じ。
小さいとは言えませんが、ラグのベルト取り付け部がぎりぎりまでケースに近づいているため、感覚的には42mmの普通の構造のケースぐらいに感じます。
精度(と50時間パワーリザーブ)のためにはこのサイズがぎりぎりとのこと。
色によっても印象が違うかも…
段差を強調し、立体的な構造を持つムーブメント。
個人的には、今回の作品はより「ベルトゥーらしい」と感じました、なぜならトゥールビヨンを使っていないからです。
フェルディナント・ベルトゥー自体はブレゲより前の時代の人で、トゥールビヨンが発明されたころはすでに第一線から退いていたはずです。
FB1の時は「ベルトゥーなのにトゥールビヨンなの?時代が合って無くない?」と意地悪な質問をして「これは現代のベルトゥーとしての作品だ」という答えをもらったりしていましたが、FB 2REはまさに古のベルトゥーが現代に復活したような作品ではないでしょうか。
さて、歴史・意匠・各種製法など追っていくとどれも興味深い作品ではあるのですが、やはり個人的に最も注目するポイントはフュゼ・チェーンとルモントワール・デガリテを組み合わせたという事でしょう。
両方ともトルクを安定化させる機構であり、どちらか片方しかひとつの作品には載せられないことが多く、両方を搭載した作品は数えるほどしかありません(そのうち一つはWMOでも取り上げたカーステン・フレスドルフが過去に居たブランドです、同じ説明を彼からも受けていて確信に至りました)。
これは、機能が被るので両方を搭載することは無意味と考えられていると理解していましたが、本当にそうか?という事に今回確信するに至りました。
最初に書いてしまえば、「働きが相補的なので両方搭載は意味がある」という結論になります。
まずはムーブメントの構造を見てみましょう。
地板に対し、ブリッジで支えられる2-4番車が取り付けられています。
高さのある香箱は吊り下げ構造になっておりムーブメントの片側から支えられています。
2-4番車の反対側にはパワーリザーブ計測用の輪列が備えられており、香箱の回転数を計測します。
ピラーの上にテンワとルモントワール・デガリテが取り付けられるプレートを取り付けます。
2-4番車とパワーリザーブインジケーターの軸は下側のブリッジに取り付けられているため、このプレートには軸石が見えず、まるでどこにもつながっていないような「ミステリー」構造に見えます。
ルモントワール・デガリテの脱進用レバーと制御用のルーローの三角形カムを備えたガンギ車。
ルモントワール脱進を行うためのアンクル。
コの字型の部分にルーローの三角形型カムが入り左右に振ることで脱進を行います。
香箱とのコントラストが映える大型のテンワ。
フリースプラングで慣性モーメントで緩急調整を行う可変慣性テンワです。
最後にブリッジを取り付け。
サイドから見るとピラー構造とルモントワール・デガリテの重なりがよくわかります。
香箱自体の高さがあるため、その分をうまく割り振って2階建てにしていることが分かります。
ルモントワール・デガリテの脱進用レバーが一番手前に来て、その構造を余すところなく鑑賞できます。
ルモントワール・デガリテのスケッチです。
4番車からのトルクは青色の3本の脱進レバーに入力され、同軸構造になったガンギ車とルーローの三角形カムとはヒゲゼンマイのみでつながっています。
ヒゲゼンマイに引っ張られてをガンギ車が回転すると、同じくルーローの三角形カムも回転し、手前のルモントワール脱進用のアンクルを振ります。
アンクルが振られることで、2.5振動(1秒)に1回石が外れてレバーを開放し、レバーは60度進みます。
レバーが進むことでヒゲゼンマイにエネルギーがチャージされそのエネルギーで回転を続けます。
ヒゲゼンマイのトルクは角度にほぼ比例し、1秒に1回、一定角度60度だけ進めているため、この機構はガンギに与えるトルクを一定にするコンスタントトルク機構として働きます。
これは輪列の最終段階、ガンギ車の直前でトルクを安定化していることになります。
逆に、チェーン・フュゼは輪列の入り口、香箱の部分でトルクを安定化する機構です。
何もしていない香箱のトルクは緑で示されたように徐々に減少するようなカーブを示します、それに対して逆特性を持つ円錐形(フュゼ)を組み合わせた変速機でトルクが一定になるように変速するのがフュゼ・チェーンの基本的な考え方です。
青色のグラフが変速後のトルクで、ほぼ一定になっていることが分かります。
さてこの二つはどのような違いがあるのでしょうか?
チェーン・フュゼは変速機として働いているためトルクと回転量が両方とも変化しています、エネルギー(正確には仕事)はトルクと回転量の積なので、チェーン・フュゼは摩擦などで失われるエネルギーを除けばエネルギーロスなくトルクを一定にすることができています。
しかし、変速という特性から回転速度が変化してしまうので輪列の途中に入れることはできず、必ず輪列の入り口である香箱に設ける必要があります。
同じ視点でルモントワール・デガリテを見ると、トルクを一定にしていますが、回転量は常に1秒に60度で変化していません、つまりエネルギーとしてみると、余剰なトルク分のエネルギーは捨ててしまっていることになります。
入力と出力のトルクの差が大きいほどこのロスは大きく、またトルクを増やすことはできないため、ルモントワール・デガリテを常に動作させようとすると入力トルクをパワーリザーブ全域で充分に大きくとる必要が出てきます。
かといって入力トルクを大きくすると、今度がルモントワール脱進が難しい(力の弱い側から強い側を動かさないといけない)という別の問題もあり、バランスを取るのはかなり難しく、一般的なルモントワールはパワーリザーブ全域でルモントワールが動作せず、パワーリザーブの半分ぐらいでルモントワール脱進が行われなくなる設計が多いようです。
私が知っている例外は香箱のトルクがとにかく強いランゲ31とルモントワール自体が表示に関わっているためルモントワールが動作しなくなる前に止めるツァイトヴェルクぐらいでしょうか。
チェーン・フュゼは
- 香箱直後にしか入れられない
- 摩擦以外のエネルギーロスはない
- 配置は自由
- トルク差分のエネルギーを捨てている
更に、ルモントワールのトルク変動抑制能力が無限ではないことを考えると、チェーンでルモントワール出力+α程度のトルクに整えてからルモントワール・デガリテで最終的に整えるという戦略が考えられます。
FB 2REはまさにその戦略です。
左から順に、緑色の香箱の出力、それをチェーン・フュゼで安定化した青色の出力までは見ました。
チェーン・フュゼの出力も完全に均一ではなく、チェーンの摩擦によって少し凹凸がありますが、それに加え2-4番車を伝わる時に噛み合いによってトルクが変動する…と言うのが黄色のグラフです。
それを最後にルモントワール・デガリテで安定化したものが赤色のグラフで、トルク変動が減っていることが分かります。
また、ルモントワール・デガリテで捨てるエネルギー量も緑色をダイレクトに入れたときに比べて少なくなることもわかるでしょう。
これにより、FB 2REは50時間のパワーリザーブ全域でルモントワール・デガリテが動作し、ルモントワールが直結になる前に巻き止めによってムーブメントの動作が停止します。
同じ説明は以前にカーステンからも聞いていて納得感があり、今回の事で最初に書いたように「働きが相補的なので両方搭載は意味がある」という結論を得ました。
テンワ自体の慣性モーメントも大きく、十分な共振エネルギーを蓄え、ルモントワール・デガリテで振り角を一定にすることで歩度も担保すると極めて真っ当なアプローチです。
更に、ルモントワール・デガリテの副次的な効果として1秒ステップで動作するためデットビートセコンドとして正確な1秒を表示することもできます。
精度と古典的な仕上げの極致を目指したフェルディナント・ベルトゥーの名前にふさわしい作品ではないでしょうか。
クロノメトリー・フェルディナント・ベルトゥーに興味を持たれた方は、
下記までお問合せ下さい。
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